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望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
1章 異世界新生活
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1章3話:神聖な毛玉

屋敷を歩き、大きい扉を見つける。

玄関があり、靴箱とふわふわのスリッパがある。今まで気づかなかったが、靴が脱がされていた。


靴下で廊下を歩くのは落ち着かない。学校で上履きを忘れたような感覚がする。しかし、それ以前の緊張による浮き足が立っていて気づかなかった。


ふと、地下牢でのことを思い出す。綺麗にはされていたが少し埃っぽかった。牢屋なんて基本使わない上、牢屋にぶち込むような奴のために細部の掃除なんてしないだろう。


「つまり、だ。」


恐る恐る足を曲げ、後ろを振り返るようにして靴下を見る。


「うわぁああああ」


そう。靴下が真っ黒なのだ。その靴下で屋敷を歩き回った。来たところを振り返る。もちろん汚れている。


「…今掃除しても仕方ないし…、帰ってきたらやりますので……」


誰もいないが、言い訳をして外に出た。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇

外に出ると一面…と、いうほどでは無いが周りには水面が広がる。雲や、天の青さを鏡のように反射する。水中のぼんやりと光るエメラルドグリーンの鉱石。


テレビで見たイタリタのカプリ島。いや、沖縄、青森などの日本にも存在するらしいが、とにかく青の洞窟等と呼ばれる、エメラルドグリーンの色に反射する洞窟。それと浅い水が空を反射する場所を掛け合わせたような所だ。夜に見にきたらまた印象が変わりそうだ。


「リリカてゃそと星空の反射するここを眺めて…」


その雰囲気で告白。なんて、案外自分はロマンチストなのかもしれない。そもそもそんな勇気もないくせに、妄想だけは捗る。


そんなことを考え、屋敷のある島のような部分を歩き、水面に浮く石の前に来る。


体感が弱いのに1人で渡れるのかと怖気付く。落ちたらもちろん泳げない。息継ぎができず背泳ぎ以外の泳ぎができない。現代の知識として仰向けで浮く事が大切だとか、背泳ぎをするだとか焦ってできるわけがない。溺れたら助けなんていない、自分なんかを助けるメリットもない。


「ええい、勢いが大事!女は愛嬌、男は度胸!

男女平等を謳う中でいうべきじゃないけどっ!」


男女平等ならなんで同棲結婚がダメなのか、などと内心考えながらリズムよく跳ねながら石の上を走るうちに、屋形の反対の岸に着いていた。


すでに大冒険をした気分で既にダラダラしたいが、目の前に広がる木々を前に帰るなんてできるのか。否、できない。男心くすぐる『冒険』を前にして帰るなど男が廃る。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


森の奥へと進んでいくにつれ、風が吹くたび木々が揺れ、擦れる木の葉の音が大きくなる。


見たところは朝のようで、彩度の低い水色に赤が滲むような空が木の間から見える。朝特有の空気を感じる。いつぶりだろうか、朝に外へ出るのは。出かける時やランニングなど、特別な時にしか基本朝は外に出ない。


中学生の時に、小学生の頃の友達と無駄に朝早く出て寄り道しながら学校まで行った。高校の最初は行っていたが、基本不登校は中3の最後からで、その時はまだ楽しかった。


「こんな考えになるから外に出たのにな。」


聞こえるはずのない独り言を漏らす。

その場に寝転び、空を見ながら朝の空気を吸い込む。朝焼けは雨とは言うが、そこまで空は赤くないため大丈夫だろう。たとえ雨だとしても、それはそれで風情がある。


吸い込んだ空気を吐きながら、目を瞑る。葉の揺れる音に耳を貸す。聞こうと思って聞くことはあまりなかったので新鮮だ。


そんな音を聞いている中、草を踏み、こちらへと近づいてくる音が聞こえる。ふと、昨日のことを思い出す。


「昨日の狼じゃない…よな?」


相手を刺激しないようにゆっくりと上体を起こす。地面に手と片足をつき、いつでも立てるようにした事によってクラウチングスタートの体制となる。


だんだんと音は近づいてくる。


ついに、草の陰から音の正体が現れた。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


そこには毛玉のようなものがいた。


「か、可愛い!」


ウツキはその毛玉に飛びついた。


その生物はふわふわとした感触で、見た目を裏切らない。わしゃわしゃと撫でていると、噛みつかれた。そして、冷静になった。この生物はなんなのか。

あらためて、抱き上げてその顔を見る。そこに頭部は3つあった。


「えっ、あっ…え?」


それは神話に出てくるような見た目ではないが、ケルベロスと呼ぶべき見た目をしていた。


「え、可愛いの3乗…ってコト⁈」


そのケルベロスはもふもふとしていて、ポメラニアンに近い。尻尾はふりふりと左右に動いている。


このもふもふを独り占めするのは勿体無いと思い、気づくと屋敷へ走りだしていた。


屋敷のある山の上まで来ると、屋敷の前にリリレヴァがいた。周りを見渡して、何かを探している様子だった。可愛い。


「リリカてゃそ!見せたいものがあるから目、瞑ってて!」


「ウツキ!ご飯なのに帰ってこないから、探してたの!どこ行ってたの?」


怒りながらも、目は瞑っててくれる天使だ。

屋敷へと続く石の上を跳ねて進む。


「ちょっと、森の奥まで行ってた。そこで、可愛い子を見つけたんだ!運命だよ!飼ってもいい?俺が全部面倒見るし、ここがリリカてゃその屋敷だってわかってるんだけど。あ、目開けて!」


「そんな急に言われても…」


困惑しつつもリリレヴァは目を開ける。


「…犬神様だ…。」

「え?」


あまりの衝撃にその場が凍りつく。


犬神という概念は日本にもあった。しかしそれは犬を使った呪詛の類で、動物の霊を使役する術だと読んだことがあった。見た目は管狐やモグラの一種など、とにかく犬のような外見はしていないはずだ。


「い、犬神様って…?」


「犬神様はこの森に住む神様なの。ここ周辺を守ってくださっていて、怒りを買ったが最後、この国は滅亡する。と、言われている。」


自分の腕の中でくわぁっと、欠伸をする犬神様がかなり上位の存在であることを知り、ウツキは驚きを隠せなかった。


しかし、日本の犬神のように罪のない犬が、人間の考えによって理不尽な目に遭うものでなくて良かったとも心の底から思った。


「犬神様、森に帰した方がいいかな…?」


「う〜ん…嫌がってたら、抱っこされた時にもう屋敷ぐらいは吹き飛んでるんじゃない?」


「なにそれ怖い」


とにかく、犬神様の怒りを買っていないのなら良かったと思ったウツキだった。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


ウツキの腕の中には犬神様が抱かれていた。3頭全て眠っている。


「こうして見ると本当に可愛いわんちゃんだな…」


ポメラニアンのようなふわふわな毛並みをあの森で保っているのは神がかっている—この子がある種の神であることを実感する。


「この子、飼っても…」


「ダメです」


「デスヨネ…」


この子は守護神で、1人の居候がどうこうしていい存在ではない。



そうだ、自分は居候なのだ。もう目を逸らすことはできない。ここは紛れもない



「異世界…」



他の方と比べると、明らかに素人が滲み出てました。

改善できそうな点があったら教えていただきたいです。

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