2章 26話:どうしようもなく
8本の足を動かしながらこちらへと近づいてくる。赤髪の男。手には、まるで蟹のような鋏がある。
狼達はウツキを守ろうと立ちはだかる。
「待てっ…」
狼達はウツキの方を振り返る。ウツキは2匹を撫で、興奮を冷ましていく。
「…誰なんだよ。目的は何だ」
「俺はキャンサーってんだ。目的はさっきも言っただろ?お前を殺しに来た。まあ、暴れろとも言われてるし、俺個人としてもそっちが本命なんだけど。」
「…『言われた』?俺の命を狙っているやつがいるのか…?」
この世界に来て間もないというのに。全く築いていない人間関係の中で、因縁つけられているという事だろうか。
「…俺も暴れたいんだけどさぁ、暴れてるうちにお前に逃げられると困るワケ。こっちに来て、俺に殺されてくんねぇかなぁ?」
「誰がそんなんで行くかよ。」
「だよなぁ…」
気付けばここで初めて、キャンサーは左手を露わにした。
そこには右手よりも大きい鋏があった。しかし、驚く点はそこではない。鋏には少女の首が挟まれていた。鋏の刃の部分の棘が、少女の首に食い込む。
「おにぃ…ちゃ…?」
その少女は兎の耳を垂らしている。先程、村を歩いていた時に出会った少女だった。
「君はさっきの…!」
ズボンのポケットの外から、中に入った石——その少女から貰った石を握りしめた。
握りしめることしかできなかった。
「おにぃちゃっ…痛いよ…助け、て…苦しぃ……」
掠れた声で必死に訴えかける少女。
「大丈夫だからな!兄ちゃんが助けてやるから!」
不安にさせないよう、声をかける。それしか出来ない。
何かないか。辺りを見渡す。
「キャンサー、金は欲しくないか…?こ、この鍛冶屋、儲かってるらしくてな。いくら暴れたっていい。俺が金を盗んで渡す。だからお前は…俺を一息で殺せ。結局死ぬなら楽に死にたいからさ、どうだ?」
「…おもしれぇ。人質も取られて、諦めて。せめて楽に死のうとはな!本当に面白い奴だ。良いぜ、乗った。金を持ってこい!逃げたらコイツの首が文字通り飛ぶぜ?」
「…わかってるさ。」
バックヤードまで近づく。金が保管されている所は、キャンサーの死角だった。麻布の袋に、ありったけの金を詰める。
変に疑われないよう、すぐにキャンサーの前に姿を見せた。目の前袋を差し出し、中身を確認させる。
「ああ、金だな。確認した。約束通り、楽に殺してやる。来い。」
キャンサーの左手に掴まれた少女は、足をただダランとさせ、一見生きているようには見えない。
そんな少女を気にかけつつも、キャンサーの跡をついていく。
だんだんと森の奥へと入っていく。あたりも暗くなり、見えるのは明るい月の光だけだった。
申し訳ございません、みちをです。
私情により、2週間お休みいたしました。
失踪はしません。しませんが…突如お休みすることもあります。基本的には投稿しますので…何卒…
…あと、『できれば』月曜6時投稿ですから!ね⁈




