2章 25話:ほつれ始める運命
「それじゃあ、宿に戻るのかい?」
キョウカが尋ねる。するとウツキ含め3人はポカンとする。
「野宿じゃ無いの?」
「野宿じゃ無かったの?」
「野宿なの???」
ルナティアはソルティアに。ソルティアはウツキに聞く。メイド2人は野宿のつもりだった様だが、ウツキは驚きを隠せない。なにせ、何も持っていないウツキは、自分の意思では何も出来ない。ただ流されることしかできないのだ。宿の予約等の公共の仕組み、サバイバルだとかの技術を何も知らないのである。
「え、野宿なんですか?」
「野宿なのか?」
おかしいのはウツキでは無かった様だ。オウミョウとキョウカも驚いている。
「でも、こんな夜更けに取れる宿なんてありませんし。馬車…いえ、狼車で寝泊まりします。」
狼車の中なら、夜風の寒さも凌げるだろう。
しかし、男女が同じ車で寝ると言うのは些か問題がある気がする。なにか有らぬ誤解を生んでも嫌だ。それに、スペースが狭くなるだろう。
そう考えたウツキは、1人で外で寝ることを提案しようとした。
「では、泊まっていきます?」
そう口にしたのはオウミョウだった。
皆が彼女の方を見る。「えっ…えっ?」と、辺りを見まわし、困惑するオウミョウ。
「良いんですか…?」
「はいっ、お部屋は2つしかないんですけど…」
「私と姉様は同じで良いで大丈夫です。お心遣い感謝します。」
ソルティアはぺこりとお辞儀をする。それに合わせて、ルナティアも頭を下げた。ウツキも頭を下げる。
「では、お部屋を案内しますね!」
店の奥へと入っていくオウミョウ。着いていくと、右と左に廊下が続いている。それぞれ奥には扉があった。
「右側は、先ほどルナティアさんをお通ししたバックヤードです。危険な武器も取り扱っていますので、右には行かないようお願いしますね。」
オウミョウは何本も鍵の付いたキーケースを取り出す。左側の扉に鍵を入れる。目の前には小スペースと螺旋階段。階段を登るとまたしても廊下が広がる。そこには3つの部屋があった。
「奥と、真ん中はご自由にお使いください!
手前は私の作業場というか、自室なので物が多く…」
少し恥ずかしそうに目線を外す。
「兎にも角にも…!どちらにも寝具がありますので、好きな方でお泊りください!」
「では…私達はこちらのお部屋を使わせていただきます。本当に、ありがとうございます…!」
何度もお辞儀をしながら、奥の部屋へと2人入っていった。
「じゃあ、私は下で商品の手入れをしてから寝ますので…。あ、あのお二人にも渡しているので、ウツキさんにも鍵のスペアを渡しておきますね。自室にかけるなり、何かあったらそれを使って下まで降りてきてくださいね。
それではおやすみなさい。」
オウミョウとキョウカは、手を振って、階段を降りていく。
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閉まっている扉を、鍵を使って開ける。
扉の先には、談笑しながら晩酌をする少女2人がいた。
「え…ウツキ⁈」
「な、なんでここにっ…?」
相当驚く2人———オウミョウとキョウカ。
咳払いをして、冷静になるオウミョウ。
「商品を手入れする。そう言った手前、晩酌している…すこしお恥ずかしい所をお見せしてしまいましたね。」
「もしかして五月蝿かったか?すまない、もう少し声を小さくする。」
「あっ…いえ、すみません。あの、お部屋使わせて頂くのは、やっぱり心苦しいと言いますか…
見たところ、お二人の寝る場所がありそうに無かったので。…あ、まだベット未使用ですし!そこは気にしないで大丈夫なんで!」
2人はウツキの考えが予想外だったのか、ぽかんとする。
「…それに、外で狼車を引いてくれた狼達が少し可哀想というか。自分だけベットの中で寝るというのがちょっと…
せめて、床寝ぐらいしようかな、と…。」
「…そう、だね。…うん。
オウミョウ、あの子達をここにあげても良い?」
「べ、別に構わないけど。
…! わ、私、大きめの布団とってくるね。」
キョウカはウツキから鍵を受け取り、入り口を開ける。外で狼たちと話しているようだが、夜なので声を小さくしている。その為、それが日本語なのか、狼達の言葉なのかは聞き取れなかった。
「キョウカちゃん、取ってきたよ!」
キョウカが狼達を中に入れ、オウミョウが持ってきたこたつ布団をかける。
すると、狼が控えめに「わん」と鳴いた。
「な、なんて…?」
「えっとね…」
キョウカがウツキを指差す。
「『どうしてもって言うなら、一緒に温かく寝てあげてもいいんだからねっ!』」
両手を胸の前に持ってきて、指を絡ませる。
「『夜は冷えるから、一緒に寝ましょ。』
って、それぞれ言ってるね。この女タラシめ!」
意外と狼達からは好印象だったようだ。理由はわからないが、そんなに言ってくれるのならお言葉に甘えよう。
「じゃあ、失礼しますよっと。
って…あったけぇ〜⁈もふもふだし、良い匂いもするし最高…!あ、という訳でここで寝させてもらいます!お二人はベットをお使いください!」
「えっ…あ、ああ。そうか。じゃあアタシ達はベットを使わせてもらうからな。おやすみ、良い夢みろよ!」
「おやすみなさいませ。」
2人はちゃっかり酒を手に持って、部屋へと向かった。
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「…姉様」
「はい、お姉様。お姉様の睡眠を妨害する者は全て捻り潰します。」
『姉様』。その一言でルナティアは全てを理解した。新品の武器を手に装備し、鍵を持つ。
「姉様、私も行くわ。姉様だけでも十分だとは思うけれど、最近物騒だもの。私がいれば不意打ちも避けられるでしょうし。」
2人は月明かりの下へ出る。
ソルティアは自身の『感覚』を頼りに迷わず進む。ルナティアの手を引き、ゆっくりとその違和感の正体へと近づく。
「…子供?」
目の前には、幼い子供が2人いた。
吸い込まれそうなほどに黒い瞳。月明かりに照らされ、キラキラと光る白い髪。
2人は対照的に、短い髪と長い髪を持っていた。
「はな、人いたで。」
「指示は『暴れろ』。それから、『黒い人間』と『白い吸血鬼の一族』の根絶やし。」
「どっちも居ない、から…根絶やし、やね。」
物騒な単語が聞こえ、ルナティアとソルティアは構える。
「乙。」
気づけばルナティア目の前にある拳。防御は間に合わない。
そう思った矢先、目の前に黒く大きな羽が現れる。
「姉様、怪我は?」
「いえ、私は…でもお姉様の羽が…!」
ソルティアの背中からは片翼の黒い羽が生えている。散った羽が、ふわふわと舞う。赤黒く血が滲む。
「大切な姉様の顔に傷をつけるなら、羽をへし折った方がマシ。」
ソルティアは殴りかかってきた長い髪の子供に向き直る。
「あらら、防がれちゃった。うの、どうする?」
「このまま押し通せば、いけるんやない…?」
「禿同。」
次は2人同時に飛びかかってくる。前回油断したというわけではないが、気を抜かずに相手の動きを見る。
髪の短い子供の腕とルナティアのナックルがぶつかり合う。その隣ではソルティアが羽で、髪の長い子供を吹き飛ばす。互角、もしくは押され気味の戦況で攻防を続ける。
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暗い、暗い、闇の底。
海に落ちるかのように、ゆっくりと沈んでいく。
目を開く。開いているのかも分からないぐらいに暗い闇。
奥には今にも消えそうな、淡い光があった。直感的に、その光に手を伸ばす。
光はそれに応えるように、手を包み、絡み合う。
「…ツキ。こ……達を…………ね。」
そんなの無理だ。君がいなくちゃ何も…
「でき…わ。だって、貴方は…しの」
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大きな音で目を覚ます。両サイドはふわふわの毛に挟まれている。
狼2匹は、喉を震わせている。
「大丈夫だ。落ち着いて…」
頭を撫でようとした瞬間、腕を噛まれる。
その勢いのまま投げ飛ばされ、壁に打ち付けられる。
目を開けると、服の上から、腕に血が滲むのがわかった。ぽたぽたと、血が流れていく。
「いってぇ…そんな怒らんくても…」
冷たい風が、頬を撫でた。真正面を見る。
2匹は未だに唸り続けている。毛を逆立て、鋭い眼光で。
それよりも、先に目に入ったのは異様なソレだ。
8本の足を地面に差しながら進む。歩みはゆっくりだ。一応、足から上は人の形を成していて、赤い髪を生やし、ニタニタと笑っている。
「お前を、殺しに来た。
おはこんばちゃ〜みちをです!
最低限、普段からこれぐらいの文量を書きたいところです。
ここら辺は、個人的に頑張っていきたいポイントです。
(勿論ここ以外も頑張りますけども)
前々から少しずつ張ってる伏線もありますからね。
(大した物では無いけど)
あー、もっと魅力的な文を書きたいッ!!!
作り込み自体は頑張ってるので、
いつか内容はそのままで、読みやすくしたバージョンとかも作ろうかね…
という事で、今回はここまで。また来週も見てください…!




