2章 22話:理想的な
目の前に現れた少女はこちらに手を差し伸べた。
「大丈夫?怪我とかしてない?」
「あ、ありがとう…ございます。大丈夫です…」
目の前の少女は踏みつけにした熊を、森の方へと放った。熊はこちらを伺いながらも、遠くへ走っていった。
「こんな所に何の用?貴方達が良ければ、アタシが案内するよ。」
「本当か⁈ぜひお願いしたい。えーっと…」
名前が分からず言い淀む。それを見て少し笑い、表情が砕けた。
「アタシはキョウカ。狼の亜人だ。貴方達の名前を聞いても良いか?」
「私の名前がソルティア。この子がルナティア。そしてコイツがウツキ。姉様の武器が壊れたから、鍛冶屋の元に行きたいの。案内してもらっても?」
雑にソルティアに紹介された。確かに、他に言うことも無かったのだが。
「ソルティアとルナティアにウツキね。
うん、わかった。貴方達をオウちゃんの所に案内するよ。」
キョウカは、馬車を引いていた狼達を撫でる。他3人を馬車の中に乗せ、1人と2匹は歩き出した。
「狼の亜人…馬車を引く狼達とも話せるのかしら。」
「あの様子だと、そうかもしれませんね。素敵な笑顔で、笑い合っていますから。」
月明かりに照らされたキョウカは、キラキラとした笑顔で2匹と談笑しているように見えた。
「…あのさ」
ウツキは声を小さくして言う。
「マオの口から『人主主義』って言葉を聞いたんだが、タブーとかがあったら教えてほしい。」
2人は目を見開く。窓の外のキョウカを姿を確認し、ため息を吐く。
「…まずは、お嬢様に聞かなかった事、褒めてあげるわ。あまり良い話じゃ無いもの。…特にお嬢様には」
「絶対にお嬢様の前では言わないでください。そして、人間である貴方が『人主主義』などと言うのも控えるべきです。敵対の意思と見做されるかもしれません。」
いつに無く仰々しい態度である。それほど、デリケートな話題なのかもしれない。
「ご、ごめん。2人も、その…サキュバスなんだよな?嫌だったら別に話さなくても…」
「いえ、正しい知識は持っておくべきですから。
…人間はあらゆる面において弱いです。だから恐怖し、群れる。恐怖心と高揚感、闘争心などを高め合い、力とする。その他にも、自分の信念、野望欲望の為ならなんでもする。それが…人間。」
ルナティアの手が震える。ソルティアが手を重ね、指の隙間に指を通し、握る。
「…身体能力では劣る者がほとんど。でも、何千人、何万人もの命を捧げ、私達数人に襲いかかる。
負けて殺されれば良い方。その後何をされるかは…その人間次第。」
ルナティアの顔がどんどん青くなる。ソルティアは、ルナティアの手を引き、自身の膝に乗せる。席に横にさせる為、靴を脱がせる。その間も話し続けていた。
「自分と違うから、怖いから殺す。それが『人主主義』。
勿論、この思想を嫌いな人間も、亜人も、それ以外もいる。人間の貴方が『人主主義』なんて口にしたら、『殺される前に殺す』と思われかねないわ。」
この世界の根本には『弱肉強食』があるのかもしれない。自分と違うものは排除する。未知のものが怖い。その人間にある考え方は、元の世界でも同じだった為、直感的にわかる。そう思った人間がどんな行動をするかも。
「…2人ともごめん。でも、教えてくれたおかげでへまをする事もなくなった。本当にありがとう。」
なんとも言えない空気が漂う。ガタンと、少し揺れる座席。
「…あー、その…あれだ。お土産、何があるかな?」
「気が早いです。」
「自分で稼いだ金ではないというのに。」
ソルティアの発言が心にクリーンヒットする。不甲斐無い。元の世界の物で一儲け狙うしか無い。
馬車が止まり、外から声がする。
「着いたよ。オウちゃんがいるのはこっちだ。」
キョウカは、三人が馬車から降りるのを確認した後、足を進めた。
田を彩る金色の稲穂。それらの田の間に通る道の脇には、座ってご飯を食べる亜人———獣人と言った方が伝わりやすいだろう。
大きな耳を揺らしながら、満足気に田を眺める。
空気も美味しく、のんびりとしている村だ。子供が駆け回り、蜻蛉が飛び。鼻をくすぐるのは金木犀のような香り。
「行きますよ。」
立ち尽くしていると、ルナティアに手を引かれる。
「…良いところですね。見惚れてしまうのもわかります。ですが、私達はキョウカさんに案内してもらっているんです。案内される側が寄り道するのはどうかと思います。」
「ごもっともです…」
無言で手を引かれる。一切ゆるまないその手をとても温かいと感じた。
おはこんばちゃ〜みちをです。
最近、子供を見ていない親とめちゃくちゃ遭遇するんですよね…
そんな人?を遠回しに登場させたくないので、
「子供を見ている親」とか書こうとしたんですが
なんか、それはそれで…
この前、曲がり角から出てきて、
赤信号に飛び出そうとする子供がいて
一時停車しないと、自転車でぶつかりそうだったんです。
その母親が、こちらと赤信号を全く見ないんです。
子供がぶつかりそうになったら、睨まれたりする覚悟もしていたのに。
なんなら「すみません」って言ってもおかしくな((殴
本当に「子供だけ」を見てる感じで、謎の恐怖を少し覚えました。
そんな人も出したくなかったので、言及はしませんでした。
皆んなも
歩行者は右側、自転車は左側!
駅は、場所によって違うからアナウンスを聞く、
階段や張り紙、地面を見る!
斜め横断されて、横からぶつかられないようにする!
を、心がけようね!(圧)




