2章 18話:委ねる、貴方に。
2章18話 委ねる、貴方に。
「さて、これからどうするんだい?」
目の前に座る少女———セレーネは言う。
「『どう』と、いうと…?」
「君には『僕を殺す』ように言ったはずだ。それに向けて何かする事や、やらなければいけない事、今は何かあるのかい?小さな目標の積み重ねが、大きな目標への近道だろう?」
『目標』目の前のことに手一杯で、具体的に考えてはいなかった。確かに、最初にセレーネと会った際に『僕を殺してくれ』と言われた。しかし、それを間に受けてはいなかったし、殺して欲しい理由もウツキにはあまり理解できなかった。
本当の理由は別にありそうな言い回し。自分の納得のいく理由を聞くまで殺そうとは思わないし、そもそも誰かを殺したくは無い。
「で?何か目の前の目標はあるのかい?」
「…ルナティアと『鍛冶屋』に会いに行く約束、ルナティアの新しい武器の調達。強いて言えば、それが目標だ。」
「ああ、その通りだ。君は彼女と鍛冶屋に会いに行く。鍛冶屋は武器のスペシャリストだ。戦いに関して、何か学べることもあるかもしれない。」
自分から積極的に戦いたくは無いが、思い人を守るための力は欲しい。武器の1つぐらい、持っていても良いかもしれない。
「鍛冶屋は多方面に顔も効くし、仲良くなってくると良い。いざという時、君の助けになってくれるはずさ。」
「…頼ること前提で仲良くなるのは、利用してるみたいで気乗りしないんですが」
「僕の事は利用してくれるのに?」
「…。」
利用うんぬんはさておき、敵対しない程度には仲良くしておきたいものだ。全く合わない人柄でない限りは、出来るだけ仲良くしてみよう。
「君はダンピールの少女を好きになってしまったんだ。『結ばれるには、少し苦労する』、その事を肝に銘じておく事をお勧めするよ。
…何もかも捨ててでも、そこだけは見失うな。君の行動理念は彼女だということを。」
「…なんのことだかわからないけど、肝に銘じておくよ。何もかも捨てるような選択は、したく無いけどな。」
少しの沈黙の後、「じゃあ、俺はもう行くわ」と、言い、ドアノブに手をかけた。
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光に包まれたかと思うと、そこは元いた森。『セレーネに一応お礼を言う』という目的は達したので、屋敷へ戻って休むことにした。
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「帰りましたよ〜っと。さて、マオにリリカてゃその様子でも聞きに行くかな。」
そんな独り言を玄関で言っていると、目の前にマオが現れた。
「おかえり、ウツキ。」
「うわぁっ⁈びっくりした…急に現れるなよ、
ってか、独り言聞かれてた⁈恥ずかしっ!」
「それは…ごめん。それと、帰って来てすぐ悪いんだけど、リリィと話してやってくれないか?」
「是非ともお話させていただきます!!!」
マオ以外とも話せるようになったことが嬉しい。メンタルが回復していっている証拠だ。
マオは、ウツキをリリレヴァのいる部屋へと連れて行く。
「リリィ、入るよ。」
小さく、可憐な声で、微かに「うん。」と、返事が聞こえる。
マオは扉を開け、ウツキとリリレヴァを対面させる。
「リリカてゃそ、体調とか大丈夫?」
「あ…うん。大丈夫、回復してきた。
あの…ね、ウツキ。お願いがあるの。」
リリレヴァは、少し俯き、目を逸らす。
しかし、何か決心したように目を瞑り深呼吸をした。
「ウツキ、これ受け取って欲しいの。もう、ウツキの傷つくところ見たく無いから…!」
リリレヴァが差し出してきたのは短剣だった。白い刀身、と言うよりも白い金属を加工して作られた剣という印象を受ける。柄の部分まで白く統一され、握りは布が巻かれている。鍔には赤く光る、綺麗な玉が埋め込まれている。
「か…かっけぇ…!これ、俺の為に⁈ありがとうリリカてゃそ!愛してる!天使!仏!家宝にする!」
「えっ…あ、そこまで喜んでくれるなんて…
…私だと思って、使ってくれると嬉しいな。」
それだけ、気持ちがこもっていると言うことだろうか。丁重に、きずをつけ傷をつけないように扱いたいところだ。
「俺、この剣に相応しくなれるよう頑張るよ!本当にありがとう!」
リリレヴァはどこか緊張が和らいだような表情で、笑いかけてくれた。
昨日とは違い、見惚れた時の自然な笑顔で。
どうもこんにちは、みちをです。
なんか体の調子が悪いです。忙しい事、体調から少し短めです。申し訳ない。
あと4周間ほど予定が詰まっているので、短いお話が続くかもしれません。




