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望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
2章 風の町 マニャーサ編
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2章 18話:委ねる、貴方に。

2章18話 委ねる、貴方に。


「さて、これからどうするんだい?」


目の前に座る少女———セレーネは言う。


「『どう』と、いうと…?」


「君には『僕を殺す』ように言ったはずだ。それに向けて何かする事や、やらなければいけない事、今は何かあるのかい?小さな目標の積み重ねが、大きな目標への近道だろう?」


『目標』目の前のことに手一杯で、具体的に考えてはいなかった。確かに、最初にセレーネと会った際に『僕を殺してくれ』と言われた。しかし、それを間に受けてはいなかったし、殺して欲しい理由もウツキにはあまり理解できなかった。

本当の理由は別にありそうな言い回し。自分の納得のいく理由を聞くまで殺そうとは思わないし、そもそも誰かを殺したくは無い。


「で?何か目の前の目標はあるのかい?」


「…ルナティアと『鍛冶屋』に会いに行く約束、ルナティアの新しい武器の調達。強いて言えば、それが目標だ。」


「ああ、その通りだ。君は彼女と鍛冶屋に会いに行く。鍛冶屋は武器のスペシャリストだ。戦いに関して、何か学べることもあるかもしれない。」


自分から積極的に戦いたくは無いが、思い人を守るための力は欲しい。武器の1つぐらい、持っていても良いかもしれない。


「鍛冶屋は多方面に顔も効くし、仲良くなってくると良い。いざという時、君の助けになってくれるはずさ。」


「…頼ること前提で仲良くなるのは、利用してるみたいで気乗りしないんですが」


「僕の事は利用してくれるのに?」


「…。」


利用うんぬんはさておき、敵対しない程度には仲良くしておきたいものだ。全く合わない人柄でない限りは、出来るだけ仲良くしてみよう。


「君はダンピールの少女を好きになってしまったんだ。『結ばれるには、少し苦労する』、その事を肝に銘じておく事をお勧めするよ。

…何もかも捨ててでも、そこだけは見失うな。君の行動理念は彼女だということを。」


「…なんのことだかわからないけど、肝に銘じておくよ。何もかも捨てるような選択は、したく無いけどな。」


少しの沈黙の後、「じゃあ、俺はもう行くわ」と、言い、ドアノブに手をかけた。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


光に包まれたかと思うと、そこは元いた森。『セレーネに一応お礼を言う』という目的は達したので、屋敷へ戻って休むことにした。



□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


「帰りましたよ〜っと。さて、マオにリリカてゃその様子でも聞きに行くかな。」


そんな独り言を玄関で言っていると、目の前にマオが現れた。


「おかえり、ウツキ。」


「うわぁっ⁈びっくりした…急に現れるなよ、

ってか、独り言聞かれてた⁈恥ずかしっ!」


「それは…ごめん。それと、帰って来てすぐ悪いんだけど、リリィと話してやってくれないか?」


「是非ともお話させていただきます!!!」


マオ以外とも話せるようになったことが嬉しい。メンタルが回復していっている証拠だ。


マオは、ウツキをリリレヴァのいる部屋へと連れて行く。


「リリィ、入るよ。」


小さく、可憐な声で、微かに「うん。」と、返事が聞こえる。

マオは扉を開け、ウツキとリリレヴァを対面させる。


「リリカてゃそ、体調とか大丈夫?」


「あ…うん。大丈夫、回復してきた。

あの…ね、ウツキ。お願いがあるの。」


リリレヴァは、少し俯き、目を逸らす。

しかし、何か決心したように目を瞑り深呼吸をした。


「ウツキ、これ受け取って欲しいの。もう、ウツキの傷つくところ見たく無いから…!」


リリレヴァが差し出してきたのは短剣だった。白い刀身、と言うよりも白い金属を加工して作られた剣という印象を受ける。柄の部分まで白く統一され、握りは布が巻かれている。鍔には赤く光る、綺麗な玉が埋め込まれている。


「か…かっけぇ…!これ、俺の為に⁈ありがとうリリカてゃそ!愛してる!天使!仏!家宝にする!」


「えっ…あ、そこまで喜んでくれるなんて…

…私だと思って、使ってくれると嬉しいな。」


それだけ、気持ちがこもっていると言うことだろうか。丁重に、きずをつけ傷をつけないように扱いたいところだ。


「俺、この剣に相応しくなれるよう頑張るよ!本当にありがとう!」


リリレヴァはどこか緊張が和らいだような表情で、笑いかけてくれた。

昨日とは違い、見惚れた時の自然な笑顔で。

どうもこんにちは、みちをです。

なんか体の調子が悪いです。忙しい事、体調から少し短めです。申し訳ない。

あと4周間ほど予定が詰まっているので、短いお話が続くかもしれません。

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