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望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
2章 風の町 マニャーサ編
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2章 17話:一息

ウツキは森の中へと入る。黒髪の少女、セレーネの所へ向かうためである。


「アイツがいなければ、ここまで来れなかった訳だしな。」


キラキラと光る葉。その隙間から差し込む光。さらにその光を反射する、小さな川。

慌しかったマニャーサでも出来事を洗い流すかのような優しい水流。


「…少し休んでから行くか。別に、会う約束した訳でもないしな。」


先日、ルナティアと作ったゲル。

水蚕の布で作られたカーテンを開けると、木漏れ日が暖かく照らした。


椅子に座り、外を眺める。


「…ここに置いてもらってるのは、俺が何かした訳でもなく、リリレヴァの優しさに甘えてるだけなんだよな…」


陽の差す外を見て、目を細める。


自分は何もしてなくて、リリレヴァが落ち込んでいる時に、近くにいる事もできなかった。

そんな自分が憎くて、悲しくて


「何か…してあげられる事…」


この先の不安、重い他人にしてあげられる事。それを考えているうちに、暖かい空気に包まれ意識は遠のいていった。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


いつまで寝ていたのだろうか。外の景色は変わっていない。


「…そうだ、セレーネの所に行くんだった。」


カーテンを閉め、ゲルから出る。


「確か、こっちに…」


直感的に森を進んでいく。光が照らす方へ。


辿り着いた大樹に人差し指が触れる。




「遅かったじゃあないか。みんなを助けられたのは誰のおかげだい?」


瞬きをすれば、前回同様部屋のような空間にいた。全身を黒い装束で覆った少女は椅子に座って、所謂『ドヤ顔』でこちらを見つめている。


「ああ、助かったよ。ありがとう。」


素直に感謝されることを想定していなかったセレーネは、目を丸くして驚く。


「…お茶菓子でも出そうじゃないか。紅茶は好きか?」


「…何考えてるかわかんないくせに、ちょろいのな。」


「は、はぁ⁈チョロいとはなんだ!それより僕と『お話』してくれるんだろっ!さっさと話したまえ…」


なんの事だろうか。特別何か話すような事、マニャーサの事しか思いつかない。


「…君、もしかして契約について忘れてるな?

はぁ。まったく、『僕が力を貸す代わり、君は僕と話してくれる』という契約だろ?」


「…あ、ああ。そうだったな…」


あの時は、リリレヴァとマオの事でいっぱいいっぱいであった。なので、契約の内容などほとんど記憶から抜けていた。


「…未知の食べ物の話と、マニャーサの話。どっちがいい?」


「『未知』という言葉に弱い僕だが…今回はマニャーサでの出来事について聞こうか。君は僕を利用し、どんな選択を取ったのか、何を感じたのか。とても、興味がある。」


ウツキはマニャーサでの戦いについて語る。仲間の強さ、敵の背景、そこで感じた事。


「それで、リリカてゃそが元気なくなってさ。

…あの子の笑顔の為なら、その原因を探し出して、元気なまま屋敷に戻れるように。…なんてな。1回の時間遡行でできるとは思わないし、お前が納得しないだろ。忘れてくれ。」


「…別に、『この時間遡行が有意義なものだったと証明できるもの』が提示できるなら別にいいんだが。

…ここで戻るのはお勧めしないね。」


ずっとニコニコと笑いながら話していたセレーネの顔から、笑顔が消える。

威圧感により、空気が重くなる。


「ど、どういう事だ…?」


「あの子が心を病んだのは、

少年、君のせいだよ。」


「また…俺の所為…?」


リリレヴァの日傘役はこなせていた筈だ。帰る前には様子がおかしかった気がする。そもそも、リリレヴァの様子に変化があったのはいつだ?覚えているのは、自分が庇うまでは普通だった筈。なら、自分が寝ている間にないかあったのだろうか。もしくは、最初から


「…気づいていないのかい?彼女がどれだけ優しい人間…いや、ダンピールなのかに。」


「あの子は理由が無くとも、『困っている人がいる』だけで手を差し伸べる。それぐらい優しいのは知ってる。…お前こそ、リリレヴァの何を」


「そんな奴が、目の前で血まみれで倒れる人を———自分の手が届かなかった人を見たら?」


そんな訳ない。自分ごときにそこまで感情的になる筈ない。そんな価値も無ければ、情が湧くようないい人間でも無い。


「…君は、自分のせいにしたく無いだけなのか?」


「は?違っ…」


「まるで子供だな。『自分は彼女を完璧に愛してる』と言い聞かせてるようにしか見えないな。ただ、『そんな自分が彼女を傷つける訳ない』『あんな風にしたのは自分じゃじゃない』って、思い込む為じゃないのかい?」


何も言葉が出ない。


「…心のどこかではそう思ってたんだろう?もう一度言うが、ここで時間遡行をしてもらっても構わないさ。君の話しは十分に聞けたからね。しかし、この時間を———彼女の乗り越えようとする気持ちまでも、蔑ろにするのは…ね?」


目の前にいる、12歳ほどの少女が何を知っていて、何を考えているのかは分からない。しかし、『リリレヴァの気持ちを蔑ろにする事を止めたい』と言いたいのだろう。

ウツキとセレーネの利害は一致している。


「…わかった。どうしてお前がそこまで止めたいのかは分からないし、言いなりなのも癪だが…」


「ああ。それでいいのさ。僕は最初から『君の役に立ちたい』ただ()()()()なんだから。君の嫌がるような選択を仕向けるつもりは無い。君が望むのなら…」


セレーネは椅子から立ち上がり、ウツキの前まで歩く。目の前で止まり、身を瞑ると指を弾く。


中指と人差し指から奏でられた乾いた破裂音と共に、目の前に霧のようなものが現れる。


「体だって捧げてもいいんだが。」


霧が晴れると、そこには若さと大人っぽさが同時に漂うような、大学生ほどの背丈の女性がいた。黒い装束を身に纏い、あらゆる脂肪が艶のある肌に張りを持たせている。


「は?なに、セレーネ?は?」


鼻から何かが伝う感覚がする。口の中に鉄のような味が広がる。


「あははっ。ほんとうに、君は面白いね。反応がまんまd」


「言わせねーよ⁈」


流石に何かまずいと感じた為、セレーネの発言を静止する。


「…目に毒だ。さっさと戻ってくれ。」


「そう言って…」


「お前の思考は中学生かよ」


「…僕の思考を読んだ上でツッコむのやめてくれないか…?それと、その思考に辿り着く君もなかなか…」


「あー!もう、うるせぇ!!!マジでお前と喋ってると中学のダルいノリ思い出すわ!!!」


それも、今となっては


「それも、今となってはいい思い出、だろ?」


「思考を読むなよ!それと、中学時代と()()は全くの別物だから!一緒にするな!!!」


どうにも、セレーネと喋っているとペースを崩される。真面目じゃ無い時のセレーネは、酒を飲んだ三十路という雰囲気に近い。見下して、小さい時のまま接してくる従兄弟や叔母のような。


「…失礼な事考えてない?」


「気のせいじゃ無いですかね…?」

おはこんばちゃ〜みちをです。

いや、水曜日に大体書き終わってたんですけどね…?

気づいたら月曜朝だったってワケ(1:55)


今回下ネタ多かったですね(?)

いや、なるべくセンシティブ回避出来るような文言にしたつもりなんですけど。余計にって感じもしますね。てか、ちょっと想像したらグロくね?

なんでしょう、脂肪吸引の広告が永遠に流れてくるからですかね?あれ、たまにとんでもなく汚いやつ出てきません?


まあ、控えめにしましたよって話です。

ラノベといえば、おセンシティブ回。まあ、少なからずありますよね?需要があるのかな…と思いつつも

今は小さい子でも画面は見ますからね。携帯の中身見られたりしたら気まずいですよね。てか、リビングで見られないようなものを控えてますね。

まあでも、秋の企画で百合モノ描こうとしてますけど(ここまでの配慮台無し)ラブコメってリビングでは見れないよね!じゃ!

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