2章 11話:濁したところで首は締まる
前回と同じ宿にチェックインする。
同じように夜になり、皆が食事を済ませ、部屋へと戻る最中。最後まで大広間に残り、食器の片付けの手伝いをするルナティア。それを見てウツキも手伝う。
と、言うのは建前である。本当はルナティアに話がある。ルナティアを待つついでに手伝う。それと、早く終わらせて欲しいというのも本音である。
終始お互い無言で片付けをした。勿論、宿の女将さんとは、挨拶程度に話してはいたが。
美味しい食事を作ってくれた事、片付けを手伝ってくれた事を互いに感謝し、お辞儀をする。それだけしてルナティアは帰ろうとする。
「ルナていッ、待ってくれ!」
背を向け去っていくルナティアの手首を、咄嗟に掴んでしまう。すぐに手を引っ込める。
「ウツキ殿、待っていたのなら最初から言えばよかったのに。そしたら私も片付けを急ぎました。」
振り向き、手を組みながらルナティアは言う。
「そ、そうだよな。ごめん。」
夜だからか、はたまた深夜では無いからか。気分が落ち着いている。深夜テンションでは無い、素が出てくる。
なんて言えば良いのか。常に深夜テンションの時でも、少しは言い淀む事を言わなければならない。
「あっ…えと、その…」
何でもいいから、外に連れ出す口実を
「つ、月が綺麗ですね…?外で眺めませんか???」
「???」
2人は上を見つめる。そこには木目の天井があるだけだ。
ルナティアはため息を吐き、手を引いて玄関まで行く。
「その言葉…意味を知っていて言ってるんですか?」
「え、いや…咄嗟に出ただけで…」
「でしょうね。」
2人は外へ出る。空には満点の星空が広がっている。星の形は同じ。
ここは『別の星』では無く、異世界の地球。または同じ位置にある惑星なのかも知れない。月が見えている時点で、太陽の周りを自転しながら公転する星であり、さらにここを公転する月がある。それぐらい簡単にわかる事だった。
北極星のような星が見える。一際目立つ星がある。金星などの惑星だろうか。それとも恒星だろうか。
キラキラと散りばめられた星々が空を彩る。そんな空の下。緑髪の少女の触覚が揺れる
「それで、要件とは?手伝いまでして待って、外に連れ出すなんて…夜逃げ?」
「手伝いぐらいするし、夜逃げじゃねーよ。…もし、今から戦ってくれって言ったら…どうするか聞いてもいいか?」
顎に手を当て、考える。
「それは、ウツキ殿とですか?それとも他の誰かか。前者なら、弱い者虐めになりますし、それに…とにかく嫌です。後者は…理由があるなら。積極的にとは言いませんが、必要とあらばという感じですかね…」
その言葉を聞いて、ウツキは目を逸らす。
何も知らない、真っ直ぐな目で見られてはどうすればいいのかわからないから。これでもウツキはただの高校生で、相手は美人。
それを除いても、純粋に質問に答えた彼女を利用しようとしているわけである。心のどこかで、ルナティアがサディストか、バーサーカー、戦闘狂ならよかったのに、と思っている。
しかし、目の前にいるのは、少し荒っぽくて、真面目で、可愛いただの女の子。
「そっか。ごめんな、それだけなんだ。急に呼び出して悪かった。夜は冷えるし、部屋戻ってもらって構わないよ。」
「…そうですか。では、お言葉に甘えてお部屋に戻ります。」
それを聞いて、手を振りながらルナティアが再び宿へ入っていくのを見届ける。
ルナティアは、リリレヴァを守ってくれれば良い。ここからは、前回と同じ道を辿るだけ。多少死んで、多少食われるだけ。
考えただけで恐怖で胃酸が逆流しそうになる。でも、これできっと。
「戦力は連れてきた。3度と戦いたくねぇ。ここで終わらせる。」
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路地に入り、辺りを見回す。
「よかった。忠告も聞かずにのこのこと散歩しにきたおっさんはいなかったんだな…。」
なんてふざけた事を言っていると、角から昼間の店主が出てくる。
「ッ!またお前か…!わざわざ探しに来たってんのか⁈勘弁してくれ…俺がお前に何したってんだよ」
「待ってくれ、違うんだよ!本当に」
店主の手を引き、こちらへ手繰り寄せる。
目の前には、地面に刺さった中国包丁。
「あら…外しちゃいましたね。」
「おっちゃんの身長が高くて助かったぜ。見上げて話さないといけなかったからな…!」
建物の屋根の上に潜んでいたアリエス。それに気づいたのは、ガタイの良い店主と話すには、見上げないといけないからだった。
「おっちゃんッ!怪我がないなら走って逃げろ!…お、俺の封印されし邪神を解き放たれる時、ここ一帯は吹き飛ぶ!!アンタがいるとつかねえ、足手纏いだ!」
「…死ぬなよ」
店主の言葉がウツキの耳に入ることはなかった。
おはこんばちゃ〜みちをです。
今回は1つ、裏話でも…
元々、ルナティアはオドオドしたキャラでした。なんか、ウツキの例のシーンで強気な部分を書いたらそれが抜けなくなりました。
脳内で、おっとりオドオド系の声を当ててもろて…
正直、オドオド系の子は「すみません」って言わせるしか無いねん!!でも今更言わなそうですし…
書き直す機会があれば性格をガラッと変えるかも…
最初は「すみませんっ!」って言いながらバットで殴ってくるキャラでしたが、ウツキに対してはお姉様の身の危険があるかもしれなかったので「謝る必要は無い」と結論付けてます。そのせいで…そのせいでっ!!!まあ、今後は「すみません殴り」が炸裂するかもです。




