1章1話:どこにでもいた少年
花のような香りがした。
「…あっ!起きた?貴方ここで何してたの?」
白髪の髪を持つ者が話しかけてくる。今度は人だ。
「美少女…何この王道展開…」
「寝ぼけてるの?馬鹿なこと言ってないで質問に答えて!」
肩をゆすられ、頭が痛む。
「狼にがぶがぶされて…ました。」
透き通るような純白の髪と白い肌という美しい容姿は、少年にとって直視できるものではなかった。外に出て人とすら話さないため、自分の中の明るいイメージ像を演じるがボロが出てしまう。
「えっ⁈狼って、なんで貴方生きてるの?そもそも貴方は人間なの?」
「え、めちゃくちゃディスられた?」
美少女からの無意識ディスに少し致命傷を受けた。
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だんだんと直前の記憶が蘇る。狼に食い破られたはずの体は動く。
「…たしかに。なんで生きてるんだ?」
あらゆる所に噛み傷はあるが、折れた骨はない。
傷がある以上は現実なのだろうが、折れた骨は自分の体ながらどうなったのか分からない。あの光景さえも夢だったのだろうか。
「とりあえず、手当するから来て!私の家すぐそこだから!」
手を差し出され、そこに手を重ねる。すると勢いよく引き上げられ、ふらつく。
「ごめんなさい!力入れすぎちゃって…手とか大丈夫?痛くなかった?」
「あっ、これは立ちくらみで、俺の体の問題なので大丈夫です!」
全てが立ちくらみのせいでは無いが、心配そうな顔の彼女に罪悪感を与えないようにそう言って、立ちくらみが落ち着くまで木にへばりつく。しばらくして自力で立ち上がり、2人は歩いていく。
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『すぐそこ』では無かった。あの森は山の途中の平らな部分で、家は上の方にあるとのこと。
必然的に登山をしたのだ。彼女にとっては日常であり、『すぐそこ』だったのだろう。
偏見はよくないが、綺麗で可愛らしい見た目からは、森の妖精という印象を受ける。その為、小さい木製の小屋に住んでると連想していた。
「ここが私の家」
家という単語からも、そのようなこじんまりとした住居が連想された。しかし、目の前にあったものは
「でっっっっっっか…!!!」
大きな山の上にあるカルデラを水が満たし、その上に館が浮かんでいる。館の浮かぶ中心までは、石畳というのだろうか。庭園や、旅館の道として使われるような薄い石が浮かんでいる。
「ここの水は飲んじゃダメって言ってたから、飲んだらダメだからね!」
「えっ、いや、飲まないですけど…」
どれだけ子供扱いされているというのか。
水に落ちないように飛ぶようにして石を渡る。なにせ、下が見えないのだ。山の中には鉱脈があるのか、エメラルドグリーンの鉱石が反射している。幻想的だが、対照的に館のある中心部の真下は真っ暗である。
「綺麗でしょ?屋敷の裏は紫に光ってるの!」
そう言いながら、扉を開ける。
彼女の後ろをついていく。
「お邪魔しま」
また、意識が途切れた。
今回から始動します。
一話から短くてすみませんでした。
お詫びに次週分も一緒に投稿します。(3話までしか書き溜めてないのでピンチ)
でも、短いので5話ぐらいまで見てください。感想をください。




