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望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
2章 風の町 マニャーサ編
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2章 5話:助かる命と

少し血の表現があります。苦手な方はご注意ください。

地面に降りた衝撃でリリレヴァが目を覚ます。


「…ウツキ……?」


「リリカてゃそ、起きたんだね。ちょっと待ってて、足が痺れて…マオが来るまで」


遠くでマオが先ほどの巨漢と戦っている。マオは体力を失っているようで、巨漢に押されている。


猛攻を受けていたマオは相手の攻撃によって、仰向けに倒れる。そこへ容赦なく斧を振り下ろす。マオは自身の長い爪で受け止める。


「ウツキッ!!リリィを連れて逃げろッ!!僕の戦いを無駄にしたいならそれでもいい!でも、リリィだけは逃してくれ!!!」


目線は寄越さずにありったけの声で叫ぶ。ウツキとはリリレヴァの位置を視線で気づかせない為に。


ウツキは走り始める。マオの作った時間を無駄にしないように。

幸い、屋敷は近くもないが、相当遠いわけではない。そこまで走れば逃げ切れるかもしれない。もしかすれば、助けを呼んでもらえるかもしれない。


視界が暗くなる。空を見ると月が翳り始めていた。


後ろでは、何か硬いものが割れるような音がした。


「ウツキッ…戻ってッ!マオが、マオが!!」


「…俺を憎んでくれていい。そうしてくれ。」


ウツキは振り返らずに走る。しかし、リリレヴァは抵抗し、2人は大きく転倒した。


リリレヴァはマオに向かって走り出す。まるでマオしか見えていないかのように。


ウツキは急いで体を起こそうとする。リリレヴァを巨漢に近づけないように、止めにいく。その時にやっと気がついた。マオの爪は折れ、斧がマオの頭蓋骨を二つに分けている。


リリレヴァの足は次第に減速していく。駆け寄ったリリレヴァを巨漢は見下ろしている。油断をしているのか、最後に2人を合わせてあげているのかは分からない。


「リリレヴァ…ッ」


「マオ…? ねぇ、起きてよ…早く、お家に帰ろ?

…おにーさん誰…?あのねあのね、マオがねぼすけなの。」


立ち尽くすことしかできない。


「りりぃね、マオのお嫁さんになるの!おっきくなったらって、マオと言ってくれたの!」


リリレヴァはマオの顔をぺしぺしと叩く。勿論、マオは目覚めない。


「おにーさん、マオが起きるまで、りりぃと遊んで!」


リリレヴァは無邪気な顔で、手を差し出しながらこちらへ走ろうとする。


しかし、背後から斧が振り下ろされた。

腰のあたりまで裂けた彼女の肉体は前へと倒れる。


巨漢はウツキに向かって歩き出す。


喉に何か込み上げてくる。ウツキは胃の内容物を外へ吐き出す。涙とは別に視界が白くぼやけ、揺れている。


「り…り、れば………まぉ…」


少し遠くに横たわる白と黒の物を見つめる。頭がごちゃごちゃしているようで、何も考えていないようで、霧がかかったようで。


色々なことを思い出す。

母の作ってくれたお弁当。父のくれたボールペン。

理由もわからずに、涙が出る。色々な物を与えてくれた2人に何もできていない。今の自分を見たらどうしてくれるだろうか。泣いてくれるかもしれないという考えは傲慢だろうか。自分のことなんて見捨ててはくれないだろうか。1人は寂しいが、責任は自分のものであり、失った時の絶望も無い。


いつも、そばに誰かがいてくれた気がする。愚痴を聞いて、話した小学校、中学校の友人 。


この世界に来てもそうだ。リリレヴァが見つけてくれて、他のみんなも、自分と話してくれて。



『何かに困った時、どうしようもなくなった時に手を差し伸べてあげられる。』



黒い少女の言葉。ふと思い出す。


いっそのこと巻き込んでしまおうか。自分のことを好きだなんて、もう言えなくなるだろう。

なぜ彼女があれほどまでに『手を差し伸べてあげられる』と断言するのか。


なぜか死なない体。このままここで終わることもできない。もう、想い人は帰ってこない。もう、失うものなんてない。


「セレーネに、会いに行こう…」


ウツキは走り出す。巨漢もウツキを追いかけてくる。しかし、あまりスピードはない。


ウツキは一心不乱にスピードを上げて走った。もう、巨漢の足音はしなかった。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


特に追いつかれることもなく、森の安全な場所までたどり着くことができた。


記憶を頼りに大樹へと辿り着く。


手を伸ばし、人差し指で触れた。

深夜テンションぶち上げ丸、どうもみちをです。

前回も言った気がしますが、現在少し時間を取れない状況です。もう少し先まで書きたかったのですが、今回はここまでです。次回か、その次から本気出す…(たぶんね)


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