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望月と少年の非日常譚  作者: 義春みちを
1章 異世界新生活
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1章 10話:君にまた

最後に。

———レームルの街。それは、レグニジア王国に属する街で、リリレヴァの領地である。道はレンガで舗装されており、トーンの統一されたパステルカラーの建物が並ぶ。


「めちゃくちゃ綺麗な街並み…」


「ウツキ、やっぱり帰らない?」


「…俺と街に行くの、嫌だった?」


「ウツキが言うならどこでもついていってあげるけど、街は…」


リリレヴァは視線を下げ、何も言わない。少し後ろで止まっていたリリレヴァは、ウツキの隣まで歩く。彼女の優しさに漬け込んで、付き合ってもらうのは心苦しいが、楽しんでほしいのだ。きっと、街で遊べば楽しんでくれるはず。


彼女が何故渋るのかをも聞かずに、自分にそう言い聞かせ、彼女に自分の推測を押し付けた。


「ほ、ほら!お店がいっぱいあるよ。何か食べない?」


まるで、お祭りの屋台のような見た目の店が並んでいる。といっても、建物の前に屋台のようなものが付いている形だ。おそらく、住居の一階がお店のような形になっているのだろう。


ウツキは、りんご飴のようなものを発見する。と言っても、知らない果実で作られているので、りんご飴ではないのだが。そもそも、飴は存在しているのだろうか。


「旦那、これ一ついくら?」


「6カンだよ、2つで12のところ、嬢ちゃん達には10カンでいいよ!」


「買ったッ!!!」


「まいど!!!」


リリレヴァの元に駆け寄り、フルーツ飴を渡す。


「買ってきたよ、嫌いじゃなければあげる!」


「…! ありがとう。」


リリレヴァはフルーツ飴に齧り付く。口の横は桜桃色に染まっている。


「リリカてゃそ、こっち来て」


持ってきていたハンカチで、リリレヴァの頬を拭う。リリレヴァは頬を赤くして、恥ずかしさを誤魔化すようにこちらに微笑んだ。


ウツキもそれを見て表情が緩む。


自分用にも買ってきたフルーツ飴を齧る。とても甘い飴が舌に触れる。甘すぎるぐらいの飴を、酸味の強いフルーツが中和していく。香りが口の中で一気に広がる。中心部に行くにつれ、表面についていた飴は無くなるが、その代わりにフルーツの中心部がとても甘くなっている。そこに今までの酸味は無く、優しい甘味だけが残されている。


「え、うっっま⁉︎」


「この街の食べ物は全部美味いよ!ほら、嬢ちゃん達楽しんできな!」


「「あ、ありがとうございます!」」


リリレヴァの手を引き、街の奥へと進んでいく。仕立て屋や、串焼き、雑貨屋などが立ち並んでいる。どこへ行っても美味しそうな匂いがまとわりつき、誘惑をする。


「何か欲しいものとか、行きたいところとかある?ルナティアにお小遣いもらったから、何か買ってこ?」


「できれば、しつ…いや、どこでもいいよ。」


「…。 それじゃあ、歩きながら気になったところ行こう!」


目的もなく、ただ店の立ち並ぶ道を歩く。風が吹き、下ろした髪が視界に入る。その隙間から、何か考え事をしているような、不安があるような、そんな表情のリリレヴァが見えた。どこか、休めるようなところを歩きながら探す。


「…お手洗い、行ってきてもいい?」


「ああ、うん!もちろん。ここで待ってる!」


知らない土地で逸れないように公衆トイレの外の壁に寄り、帰りを待つ。




すると、2人の大柄な男が近づいて来る。


「そこの嬢ちゃん、俺らと遊ばない?」


「今から、良いとこ行くんだけど…どうよ?」


「…なんなんですか、貴方達。1人相手に寄ってたかって。困ります、他を当たってください。」


体格差がありすぎる。まともに逃げられはしない。正面からのリアルファイトも、もやしのウツキには同じ体格だとしても勝機は無い。ならば、隙をついて逃げるしか


腕を掴まれ、壁に押さえつけられる。


「痛っ! なにすんだよテメェッ!俺は男だ、男と抱き合う趣味はねぇよっ!!そこら辺のやつでもキモいのに、こんな奴らに触れられるなんて悪寒がする気持ち悪りぃ!!さっさとどっか行けよ!」


「…は? そのナリで男は無理があるだろ」


「俺は全然、男でも見た目良ければ良いがな。こんな服来て、便所前に立ってるなんて、『連れ去ってください』って言ってるようなもんじゃねぇか」


「…黒髪と、黒目の奴は、『太陽の民』って奴なんじゃないのか?」


「うわっ…こいつっ、『太陽の民』か⁈」


後ろで傍観している男は少し動じる。


「…なら、懲らしめないとな?ちと、気持ち悪りぃが、『太陽の民』なら何しても許されるよなぁ?」


腕を掴む男は動じない。


鳩尾を目掛けて蹴り上げても、効きはしない。腕を拘束する手は緩まず、むしろきつくなる。


男2人は何も言わずに、にやけてこちらを見ている。逃げられたとしても、こいつらに不利益なんて何もないのだろう。反応までもを楽しんでいる。


その目つきが、上がる口角が、気持ち悪い。怖い、気持ち悪い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。



死んでしまえばいいのに。



恐怖と覚悟と諦めで、瞼を閉じる。



男の拘束が緩む。大きな音がした瞬間。腰と膝の裏に手をまわされ、抱えられる。


「ウツキ、ごめんね。」


目を開く。そこには目が眩むぐらいに綺麗な少女がいた。白い髪に、白い肌。その白い肌に乗る鮮血。


「ア…いや、下ろして…離れて、ください」


優しく地面へと降ろされる。ハンカチを取り出し、彼女の肌についた、赤い、赤い血を拭き取る。


「ごめん、急に離れてなんて。気持ち悪い奴らに触られたところが、リリレヴァについてほしくなかったと言うか…俺の気持ちの問題ではあるんだけど…。」


「…いいの、別に。気にして、無いから。それに、ウツキがわたしのことが嫌で突き放したわけじゃ、ないんでしょ?」


少し悲しそうな顔で、下を向く。沈黙の後、言いづらそうにリリレヴァが、口を開く。


「ウツキとは…もういられないかもしれないの。」


ウツキは呆然とする。さっきの恐怖と比べ物にならない動悸。しかし、当然なのかもしれない。今までだって、さっきだって、迷惑をかけて。そのくせ、何も返さない、返せない。


「怖がらせるかもしれないから、言わなかったんだけど。私、ダンピールなの。」


思わず息を止める。彼女は震えて、目を瞑っている。


「なんで、」


リリレヴァは体を震わせる。


「ダンピールだと、一緒に入れないんだ?」


リリレヴァは目を見開き、こちらを向く。


「どうしてって…だ、ダンピールっていうのは吸血鬼と人間のハーフで…」


黙って頷く。


「血も、生きる為に吸わなくちゃならなくて…人間の血だって…!」


「いくらでも捧げるよ。」


「…なんで」


「君が綺麗で、仕草も可愛くて、何より優しくて、大好きだから。」


リリレヴァの目が潤む。


「…意味、わかんない」


リリレヴァは隣に座り込み、頭の後ろに手をまわし、そのまま膝へと倒れ込ませる。


「ごめん、ね。ウツキの方が辛かったのに。急に追い打ちかけるようなこと言って。住んでいいよって言ったのは私なのに。」


頭を撫でられる。柔らかく包み込まれるような感覚に戸惑いを隠せない。


「…顔まっか、熱でもあるの?大丈夫?とりあえず今日は帰ろ?」


再びウツキは抱えられた。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


ゲルの前まで着くと、リリレヴァはウツキに倒れ込む。


「り、リリカてゃそ、大丈夫⁈」


「ごめん。1つ、お願い…いいかな?自分勝手でごめんね。」


「俺に出来ることならなんでもするから!」


「血、吸わせて…」


リリレヴァはウツキの第一、第二ボタンを外す。


「是非吸って!全部ずってもらっても構わない!ピャッ⁈」


首筋に口をつける。しばらくすると、皮膚に歯が入る感覚がする。痛みはない。


「ありがとう、助かった!」


リリレヴァは、バスケットからハンカチを取り出し、ウツキの首筋を拭き、ボタンをはめ直す。口元の左端には血がベッタリとついていた。


「血の滴るリリカてゃそも可愛いけど、汚れちゃうから拭いてね。」


リリレヴァからハンカチを受け取り、使っていない面で拭く。


リリレヴァはニコニコと満面の笑みだった。


□ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇ □ ◇


その夜、ウツキは考え事をしていた。


もっと上手くできたのではないだろうか。所詮、自分にはあれ以上出来ることはないのかもしれない。


リリレヴァをもっと気遣うべきだった。『太陽の民』の特徴を持っているのだから、リリレヴァに迷惑をかけたかもしれない。リリレヴァの、言いかけた言葉の意図。


「しつ…ない…」


ダンピール、室内。白い肌が焼けてしまったらどうする。もしかしたら疲れていたのかもしれない。それだけならまだしも、日光によるダメージがあるのなら。


「俺は…リリレヴァを苦しめて…

違うんだ…俺はただ、楽しんでほしくてっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


ただ、誰に許しを乞うているわけでもなく。

ただ、誰に弁明するわけでもなく。

ただ、謝罪を気持ちを理解して欲しいわけでもなく。


ただ、罪悪感から楽になりたかった。




だからロープで首を括った。

皆様こんにちは!義春みちをです!

ネタバレしたくないので、前書きに『最後に。』とだけ書きましたが…まあ、括っただけですし…ね?うん。


と、言うことで、リリカてゃそはダンピールでした!

吸血鬼大好きマンなんですけど、お外出られないのはキツイので『ダンピールにしちゃえ!』って感じです!


次から2章の予定です!毎回構想が、おおまかな話+その場のノリなんで全然筆遅いし、短いですが、

読みやすく、矛盾のない物語を目指します!

変すぎるところは伏線だったりするかもね。

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