頭の片隅に。
2年間付き合った彼女に振られた。
高校生から付き合って大学に進学し、そのままおさらばという典型的な形になってしまった。
それから数週間が経ったであろう。
私はまだ眠れない日がある。
ここから先はずっと大切だったあなたには言えないことを言う。
あなたが告白してきた時私は違う好きな人がいた。
あなたと出会う前から惹かれている人がいた。
そんな最低な私のどこにも吐き出せない頭の片隅にあるものをただ書き連ねていく。
音楽や絵、色々な好きなことを持つあなたが何もない空っぽな私にはとても輝かしく見えた。
あなたが近くにいるだけであなたに興味を持たざるをえなかった。
あなたと親しくなり、春休みはサイゼリヤで毎日一緒にいた。
課題をするため、話題の映画を見るため、よくもわからない謎の計画を立てるため、様々な口実をお互い使いデザートとドリンクバーだけ頼み日が沈むまで帰ろうとしなかった。
そこで自分の好きな物の話をしているあなたは目だけでなく全てがきらきらしながら話し、聞いているだけで私は口角があがりそうになりよく我慢したものだ。
あの時のあなたをずっと見ていたいといつしか思うようになっていった。
2人でイヤホンを分かち合いながら私の苦手なホラー映画を見た時あなたの表情全てが私のクッションとなり、赤面となっていた私は怖がってるのを見られたのが恥ずかしいからという不思議な理由で誤魔化したりもした。
そこから学校が始まったがよく会うようになり、LIVEに一緒に行くことになった。
文化祭の準備を抜け出しあなたがいる教室へ向かい、2人でほとんどの外靴が入った下駄箱を開け電車に乗りながら罪悪感を埋めるように話しながら向かった。
LIVE間近なったあなたは常にきらきらしていてLIVEが始まったあなたを見て私が感極まりそうだった。
LIVEの終盤、銀テープが目の前に舞った。
周りの人がみんな手を伸ばそうとしたが反射で私は掴み取った。
それを見てあなたは私が見てきた中で1番嬉しそうな顔をしていた。
あの時の笑顔は今でも忘れられないほどだ。
今考えればあの銀テープは私の背中を押すものだったのかもしれない。
あなたは私がとった銀テープを大切そうに握りしめ
LIVEを終え、折れないように慎重にファイルに入れた。
会場を出ると日は暮れビルの光で照らされていた。
2人で東京の光の中に飛び込み夜景を見た。
光の中を走り回り高台に登ったとき、強く光る赤いタワーが見えた。
そのタワーに2人は見とれて静寂していた。
そんな中あなた持ってきていたカメラを取り出し夜景を残そうとしていた。
真剣な眼差しでカメラを向けているあなたを私は自然とスマホで捉えていた。
カメラを鞄に置き、2人で写真を撮ったりもした。
人もいない夜景が見える高台は2人だけの世界を囲ってくれていた。
しかし、私は告白しなかった。
なぜかは今でも分からない。
今あの時に戻ってもするかはわからない。
したい気持ちもあるがあの時と変わらないかもしれない。
それは今の私にも分からない。
帰りの電車は他愛もないことを話しお互い帰路についた。
その日の夜中だった。
私が前々から仲良くしていた人からLINEが来た。
お風呂に入ったりなどですぐ返せないよと言うが、その後で大丈夫だから聞いて欲しいという。
なにやら、大事な話らしい。
今日のLIVEに浸る暇もなく急いでお風呂を終え、返信した。
それは、私が女の子とLIVEに行っていたことにモヤモヤするという話だった。
要すれば嫉妬というものだろう。
それをモヤモヤすると言えるのはとても素敵な人だと今では思っている。
今までもずっといい人だと思っていたので浮き足が立たないとは言えない話だった。
私はあなたが好き。そうはっきりは言わなく、大事なことは私に言わせようとしてる感じはずっとしていたが聞けば聞くほど純粋に嬉しかった。
そして、私は告白に返事をし交際を始めた。
その時はあなたのことはほとんど頭にはなかったのだと思う。
そして、別れた。
今考えればあなたとは全く逆と言っていいほど性格は違った。
あの時の私のように中身はからっぽで芯という芯がなにもない。
いつでも他人の目を気にし、他人の評価を自分の評価としている典型的な女子だった。
でも、愛していた。
あなたを何も思わないぐらいに真っ直ぐに愛していた。
でも別れた今何故だか考えてしまうのはあなたのことだった。
付き合っていた2年間より一緒に抜け出して見に行ったLIVEの方が私の記憶には強く残っている。
あの時に戻れるならあの高台の時に行きたいと私は何日も深夜真っ暗な壁と対話してる。
だからと言って今からまたあなたにアプローチはしないし、できない。
3人とも同じコミュニティだったし、1度そのコミュニティで誤解だったが女を弄んだと話題に上がってしまった私では迷惑をかけてしまう気がする。
女子の情報網が自分に襲いかかった時ほど怖いものはないだろう。
今のあなたはあの時と変わらず色んなことに真っ直ぐである。
しかも、あの時より多種多様な事毎に。
そんなあなたを遠くだが尊敬してる。
いつかまたあんなことあったねと話せるようになりたいがそんな話をしてしまうとまた、眠れない日ができてしまうので会ってもこの話をするのはやめようと思っている。
どうしようもないことだとは思っているが、この頭の片隅に常にいる腫れ物は深夜になると大きくなり私の体に影響をもたらす。
まずはこれをなんとかしなきゃと思いながら、深夜この腫れ物を忘れるために目をつぶるがまぶたの裏にはあの時のあなたの笑顔が写ってしまっている。