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ヤオ・ヨロズ爆誕!

 それから数日後、バイトを終えて帰宅すると見知らぬ相手からのフレンド登録申請とメッセージが届いていた。


「初めまして、ナイ神父を長とするスターライブという事務所でマネージャーをしております。アルマと申します。お時間ある時にご連絡いただけたらと思います。こちらはいつでも都合をあけておりますので是非通話にて」


 という一文が。

 名前はともかくとして、なんだろう。

 凄く胡散臭いがブラッドに聞いた情報と寸分違わないあたり本物だろう。

 一応警戒しながら通話をかける。


「はい、スターライブのアルマです」


「ブラッドから紹介してもらった八重しぐれです」


「あぁ、どうも。この度はスカウトの話を受けていただいたこと感謝いたします。ブラッドさんのご友人で社長の事を知っているとなると……貴女もですか?」


「まぁ、はい。今じゃ八尾比丘尼という名前の方が有名ですが、戸籍関係で名前をころころ変えているものでして」


「あぁ、人魚の肉を食べたという……ちなみにどんなお味でした?」


「しいて言うなら……馬刺しに近かったと思います。弾力のある肉で、だけどのど越しがぷるぷると言った感じの」


 当時の事を思い出しながら語る。

 あれは美味い肉だった……いや魚か?

 どっちでもいいけど。


「まだ食べられるのならぜひ口にしてみたいものですねぇ」


「不老不死じゃないならやめておいた方がいいですよ。死ねないってのは救いが無いですから」


「似たような物ですが死ねないのは嫌ですね……残念ですが諦めます。それで本題なんですが、Vtuberになっていただく件についてはどのようにお考えでしょうか」


「引き受けてもいいですが条件がいくつかありますね」


 そう、今回の仕事に当たってはリスキーな部分が存在する。

 だから条件をいくつか用意した。


「お聞きしましょう。お金から人生に至るまで、なんでも条件を言ってください」


「まず前金、ナイ神父は理解していると思いますが言葉にしないと無かったものとして扱ってくる相手ですから。いただけますか?」


「本来Vtuberになっていただくにしてもそういった金銭のやり取りは有りませんが、八重さんは特別ですからね。あ、八尾比丘尼さんとお呼びした方がいいですか?」


「八重でいいですよ」


 そっちの名前を出されても反応が遅れるし。

 ここ最近は八重という家系の一員として活動している。

 まぁ結婚相手は適当な仲間を探してきて、その子供が生まれて、成長した姿が私ともう一人の不死仲間という形で今まで戸籍をごまかしてきたんだけどね。


「わかりました。では八重さんの事務所所属に当たり社長の財布から二本出しましょうか」


「三本で、あの業突く張りならそのくらいの余裕はあるでしょう? もしその手の話が出たら言うように言われてたんじゃないですか?」


「お見通しですか。流石ですね、では五本で上には話しておきます」


 なるほど、このアルマさんとやらは敏腕のようだ。

 社長からは最初に二本、つまりに百万円の前金を用意すると伝えるように言われていたのだろう。

 それを値上げ交渉で三百万まで引き上げた私だが、彼女の裁量ではもっと上まで行けたらしい。

 その限度額ギリギリまで引き上げたというのは今後に期待している。

 裏を返せば相応の仕事をしろという意味だ。


「よろしくお願いします」


「それで立ち絵や初配信の時期ですが、いつがいいですか?」


「んー、ちょっと待ってくださいね。仕事と会議の日程が……来月からならフリーです」


 手帳を見て、今月はぎっちりと予定が詰まっていた。

 バイトの日々と、その合間に不死者や神様同士の会議で結構忙しい。


「では初配信は来月頭に、人間ですが異能力を持っている男の子と同期としてデビューしてもらいます」


「異能力者ですか。また珍しい人材を持ってきたもので……」


「そういう人材で固める方針のようです。まぁ情報漏洩が減るので助かりますね。それで立ち絵については何か要望などありますか?」


「とくには。というよりはそっちの業界に疎いので」


「なるほど、ではこちらでラフをいくつか用意させていただきます。その中から気に入った物を選んでください」


「わかりました。あ、前金の振込先ですが……」


「あぁ、社長なら知っているでしょう。仮に知らなくてもわかるでしょうし」


「まぁ、そうですね」


 胡散臭い祟り神の事だ、調べようと思えばいくらでもできるだろう。

 とりあえずはこんなもんか。


「あぁ、それともう一つ。Vtuberとしての名前はなにがいいですか?」


「特に希望はないですね」


「ではそれもこちらで決めても?」


「お任せします」


 こうして私のVtuberデビューは確定となり、そして忙しい日々が過ぎていった。

 そして半月後、PCに届いたいくつかの画像ファイル。

 それらには美麗な人魚たちが写っていた。

 ……あの糞祟り神め。

 なんの嫌がらせだ?


「ラフ確認しましたが……わざわざ人魚選んできてる辺りあの社長ですよね」


「そうです」


 悪びれることなく原因をつるし上げるアルマさん。


「ちなみに名前ですが、ヤオ・ヨロズというのが第一候補ですね」


「……八百万が第一候補ってどうなんです? 祟り神がそれを許可するとか」


「文化圏的に日本だと八百万の一員だし、海外圏だと邪神扱いだから大丈夫とのことです。方々には事後承諾を取るとかで」


「……まぁ、あれがどうなろうと知ったことではないのでいいんですけどね。私に被害が無ければ」


「ですよね。私も同意しますが、この名前でいいですか?」


「はい。それとラフ見て気に入ったのは三番です。これでよければ進めてください」


「わかりました。では名前はヤオ・ヨロズ。イラストは三番で」


 そうこうして話は進み更に半月後。

 ついに私のデビューの日がやってきた。


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