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政治経済エッセイ

「性犯罪歴なし」を確認する「日本版DBS」の課題について解説します【行き過ぎれば精神的不妊も】

作者: 中将

筆者:

 本日は本エッセイを選んでいただきありがとうございます。


 今回は「日本版DBS」導入について僕の視点で語っていこうと思います。

 

 そもそもDBSという言葉が聞き慣れないと思いますので、

 物凄く簡単に言うのであれば、子どもと接する職場で働く人に性犯罪歴がないかを確認する制度のことを指します。


 やはり、「三つ子の魂百まで」という言葉があるように子供が性被害に遭ってしまえば、

 その後の精神的なダメージは将来にわたって計り知れないので、制度である程度守っていく必要はあると思います。



◇今の問題は縦割り行政で「ザル」であること



質問者:

 やっぱり、お子さんは心身ともに私たち大人が守っていかなくてはいけませんよね。

 

 現状の制度では守れないのでしょうか?



筆者:

 一言で言うなら現在は「ザル」ですね。


 現状日本の法律・制度では、教育現場で児童に対する猥褻わいせつ行為で懲戒免職になったとしても、保育の現場でなら働くことが可能です。

 日本は縦割り行政となっており教育現場は文部科学省の管轄であり、

 保育現場は厚生労働省の管轄のため、共通の規制要件が存在しないのです。


 それに加え、教員が猥褻行為で逮捕されても3年、保育士の場合は2年で復職が可能で同じ職であったとしてもとても短いです。


 しかし、日本では行政機関個人情報保護法により情報の共有をすることが出来ません

 犯罪歴証明書を提出させる法的根拠と、事業者を管理・監督する主体が必要となるので、

 今回新制度が検討されているわけです。



質問者:

 犯罪者が妙に生きやすい環境ということですか……。



筆者:

 更に性犯罪者の中で小児猥褻わいせつ型が再犯率が特に多いことで知られています。

 

 性犯罪の再犯率は13.9%と覚醒剤や窃盗の30%前後と比べると低いのですが、

 その中で過去に小児猥褻わいせつ型の性犯罪で有罪判決を受け、再び小児性猥褻わいせつ型の再犯を繰り返した者は7,8割となっています。

 これらのことから、性犯罪の前科を有する者に対する仕組みの創設が有効であると考えられているのです。



質問者:

 なるほど……8割は凄いですね……。



筆者:

 更に、性犯罪は犯罪の性質上、他人に言い出しにくいために警察に対しても告発しにくいことでも知られています。


 全国16歳以上の男女6,000人を対象(3,500人が回答)では、

 過去5年間に性的な被害に遭ったことがあると回答した者は35人だったのですが、

 

 捜査機関に被害を届け出なかった者が28人

 捜査機関に被害を届け出た者7人


 と圧倒的に被害を届け出た方が少ないことがわかっています。

 このために未然に防止することの必要性も非常に高いのが性犯罪なのです。



◇現行案について



質問者

 しかし、職業選択の自由などの憲法違反には当たらないのでしょうか?



筆者:

 国家資格では「欠格事由」というものが存在します。

 公的な資格の多くは前科がつくことで、資格停止や剥奪、新たな資格取得の制限等不利な影響を受けます。


 この制度は、利用者保護を優先しているために上記資格と同じように職業選択の自由の違反には当たらないということです。 


 性犯罪の心の傷が深いことも関係していると思います。



質問者:

 なるほど、それで今回の案ではどのような範囲の情報が共有・照会され、就職が制限されるのでしょうか?


 

筆者:

 現状の教職の就職制限は2,3年です。

 それに対して刑法では禁錮以上は刑の終了から10年、罰金以下は5年経てば刑が消滅すると定めており、犯罪人名簿からも抹消され、警察も無犯罪証明書発行となるためこの期間が焦点の一つとなっていたんですね。

 

 今回の骨子案では禁錮以上は「20年」、罰金以下は「10年」とそれ以上の期間と定められました。


 性犯罪者の有罪が確定してから再犯での有罪確定までの期間を分析した結果この範囲内に9割以上の再犯者が収まっており、この期間を照会可能とするとしています。


 また、確認できる刑の種類は、刑法などの前科だけでなく、痴漢や盗撮など自治体の条例違反も含めるとしておりかなり範囲は広いとしています。


 

質問者:

 そうなるとなかなかいいのではありませんか?



◇現在の案の「抜け穴」



筆者:

 ただ骨子案では、学校や保育所は確認を義務化するものの、

 学習塾やスポーツクラブ、ベビーシッターの仲介業者、話題になっていた芸能事務所などの事業者の利用は任意とし、認定制を導入するなど緩くなります。


 また、障害を持つ子供の施設、個人事業主が含まれないんですね。

 直接雇用ではなく、マッチング会社を介さず外注として扱えば照会なしで済んでしまうことになります。


 更に、性犯罪の前科の有無だと捕まったことがなければ対象外になります。

 示談で取り下げということになると該当外ということになります。


 また、関係しそうな子供への暴力については対象外、外国人の前科照会も無いのでこれも大きな課題だと思います。



質問者:

 無いよりはマシなのかもしれませんけど、パッと聞いただけでは範囲が広そうに思えるのですが、穴もかなり多いんですね……。


 海外ではどのような制度になっているんですか?



筆者:

 子どもに関わる職種(定義:18歳未満の子どもに1日2時間以上接するサービス)で働くことを希望する人は、DBSから発行される無犯罪証明書が必要である国は多いです。

 イギリス・ドイツ・フランス・ニュージランド・スウェーデン・フィンランドなどでも同じ取り組みがされています。

 

 特にイギリスでは裁判になったりするだけに留まらず、通報歴があるだけでもダメという制度のようです。



◇厳しくしすぎると“当たり屋”が出てくる可能性もあるため塩梅が大事



質問者:

 そこまで包括的にすれば安心ではないですか?



筆者:

 しかし「通報」だけでダメとなると、かなり厳しいと思うんですよね。


 23年7月13日から改正刑法により性行為に“同意“が無ければ「不同意性交等罪」になってしまうようになりました。


 このことから、別れた相手に対して“不同意だった”と申し出て「通報」するだけで通報された側の教育の道が絶たれるという恐ろしい現象が起きてしまうのです。


 このことから有名な教員を“消す”ための“当たり屋”みたいな人間が出てしまう可能性があるのです。


 ちなみに前身である強制性交・強姦である強制性交等罪の不起訴率は70%嫌疑不十分(捜査機関があらゆる捜査をしたものの、犯罪を立証する証拠が不十分)となっていますので不起訴でも範囲がかなり広いと言えます。


 僕の感覚では性犯罪のうち小児猥褻わいせつ型のみ起訴や示談も就職禁止にするぐらいがギリギリのラインなのかなと思いますね。



質問者:

 関係がこじれて相手がある程度お金を持っていたら、どうにかしようという考えの方もいそうですからね……。



筆者:

 「不同意」の「通報」まで範囲を広げすぎてしまえば、教育関係を目指す方はもう本格的に男女交際すらしにくくなってしまうかもしれませんね。


 こういうのを“精神的不妊”とも言ったりします。

 賛否があるかもしれませんが、僕は日本人が増えてほしいと思っているのでここまで広げるのは反対ですね。



◇今後は否応が無く“監視社会”の様相になる



質問者:

 そして、そもそも前科なしの“犯罪予備軍”の犯罪を回避することはできませんよね……。



筆者:

 犯罪予備軍の抑止は、また難しい問題なんですよね。

 なるべく防ぐためには監視カメラの導入義務付けや子供と2人きりの状態にしないなど対策を取る必要があると思います。


 ただ、監視カメラがあっても死角で万引きをする人がいたり、

 複数人いてもグルだったりしたら結局防止できないので、

 やはりある程度は相手を信頼しなくてはいけないと思います。


 悪いことを考える人はとにかく”穴”を見つけて犯罪を犯す傾向にありますからね。


 更に今後は前科照会ができない外国人が様々な仕事に就く可能性が上がってくるために最低限の監視による対策は必要になってくると思いますね。



質問者:

 それこそ監視社会になっていく感じなんですね……。



筆者:

 単純に悪いことをしなければいいだけの話なんで関係ないと言えば関係ないのですが、

 ずっと何かに見られていると思うだけでなんだか嫌な気持にはなりますよね。

 信頼されていない感じがしますからね。


 でも全体的な流れは外国人労働者受け入れなので中々止めることはできないと思います。


 そして監視カメラからの信用スコアみたいな中国みたいな感じになると思いますね。


 

質問者:

 本当に殺伐とした世の中にあらゆる方面でなっていくんですね……。



筆者:

 かといって生きていかなくてはいけないので、

 なるべく前向きに捉えていくしかないですね。


 例えば監視カメラが多くなることで安全度は確かに上がりますし、

 抑止力は確実に上がりますからね。


 まぁ、「信用スコア社会」になったら僕は小説に“思想”をたんまりと混ぜるスタイルに変更していこうと思うので搔い潜りながら頑張っていこうとは思いますけどね。


 状況を楽しみながら生き抜くしかないでしょう。


 ということでここまでご覧いただきありがとうございました。


 今後もこのような政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行ってまいりますのでよろしければご覧ください。

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