妹、参戦!
幸いなことに学級委員になっても文化祭の準備が始まる5月半ばまでは仕事は特にないらしい。
とりあえずこの1ヶ月半の猶予期間で晴香との関係をせめて平均くらいまで戻すことを目標にした。
「目標を作ったのは良いものの、手段が全く思いつかないな。そもそも話す機会なんてないし。」
悠真は溜息を吐いた。
今日は学校初日ということで授業は無く、午前中で帰宅することになった。
午前中で学校が終わると言っても、家まではバスと電車を乗り継いで行かなければならないため結局家に着いたのは14時近くのことであった。
「ただいま、美春。」
「おかえり~お兄、ご飯の準備はしといたよ」
僕には2つ下で中学3年生になった妹の美春がいる。
うちは父親が仕事の関係上転勤が多く、それに母親もついて行っているため実質的には2人で住んでいるのだ。
今日は中学校、高校共に始業式で昼ご飯は家で食べることになっていた。そして家に帰ってくるのが早い美春が昼ご飯を作ることになっていたのだ。
2人は昼ご飯を食べながら、新しいクラスのことについて話し合った。
「私は3年2組だったよ。美羽ちゃんと同じクラスになれたから今年は楽しそうだよ!」
「美羽って晴香の妹のこと?」
「そうだよ。美羽ちゃん、お兄が晴香ちゃんと仲良くしてくれないって言ってたよ?本当なの?」
いや、これどうすればいいんだ?
本当のこと言っても信じないだろうし、嘘のこと言ったらそれこそ面倒事に巻き込まれそうだな…
「まあまあって所かな。やっぱり高校だとグループがある程度まとまっちゃうしね。あんまり話す機会はないかな。同じクラスにはなったけど。」
「お兄はいつも1人でしょ?晴香ちゃんは学校でも凄い人気らしいから人が群がってると思うけど。」
流石妹だ。完全に見抜いている。
「それは…そうなんだけど…やっぱり学校だとね?」
「そう言うと思って私と美羽ちゃんの2人で作戦を考えたのよ、題して幼馴染もっと仲良くなろう大作戦!」
ストレートすぎない?でも…これで晴香は自分に対しても
普通の態度を取ってくれるのなら…。
試す価値は0では無さそうだな。
「とりあえず日程は4月末のゴールデンウィーク初日から。やることはまだ内緒だよ?」
もう美春と多分美羽はやる気満々なのだろう。
でもどうしてここまでするのかは分からなかったが、乙女心というものなのだろう。
~~一方その頃川原家では〜〜
「…ということをやる予定だからよろしくねお姉ちゃん」
晴香も妹の美羽から説明を受けていた。
「え、でも私がなんで悠真から距離置いてるか知ってるのよね?」
「勿論知ってるよ?お姉ちゃん1つしか理由ないって言ってたけど本当は2つあることも。1つは、悠真くんの過去との関連。もう1つは、お姉ちゃんが悠真くんのことが……」
「ストーップ!美羽。これ以上は言わないで。というかなんでそれ知ってるのよ?」
「過去のことは美春ちゃんから聞いたし、もう1つについては普段のお姉ちゃんの行動を見てれば分かるよ。この前悠真くんのことストーカーしてたでしょ?」
「え、なんでそんなことを知ってるの?でもあれはストーカーじゃなくて偶然帰り道が一緒だっただけで…。」
「まあ、そういうことにしておいてあげるね。とりあえずどうするの?もし断ったら来週美春ちゃんたちの家に行った時に悠真くんに全部話しちゃうかも?」
これもう脅しなんじゃないの?でも万が一本当に言われたら私は多くのものを失いそうだから参加する他ないわね。
「まあいい、参加してあげるわ。でも悠真の方はどうなの?」
「あっちなら最悪無理矢理美春ちゃんに連れて行って貰うから大丈夫だよ。」
ということで、2人とも理由と目的は違うものの妹達の作戦に参加することになった。