崩れた平穏
幼馴染と聞いてどのような印象を思い浮かべますか? 仲が良かったり、遊んだり、そこまで行かなくても何かしら関わることはあるだろう。
……………僕はそうは思わなかった。だって…裏切られたから。
高校1年生の春休みが終わりを告げ、今日からは高校2年生として、先輩として生活することになる。
とは言っても、特に日常が変わることは無いだろう。
友達だっていないし、部活は入っていないしで変わりようがないのだ。
「このまま、ずっとこの生活が続いてくれると楽だな。」
そんなことをふと呟きながら佐原悠真佐原悠真は昇降口に向かい、新しいクラスを確認する。
そして僕は頭を抱える。
「なんでよりによって一番一緒になりたくなかった川原晴香と同じクラス、そして出席番号的に隣になるんだよ。」
晴香は僕と家が隣で、昔はよく一緒に遊んでいたいわば「幼馴染」だ。
いつの頃からか距離が開き始め、避けられているように感じる時もしばしばあった。
そして何より、僕だけにものすごい冷淡な態度をとる。
凍え死んでしまいそうなくらいに。
晴香は学年、いや学校の中でも片手に数えられる程の指折りの美人で、そして優しくて成績優秀。もはや完璧と言っても過言ではないような人で勿論人気も相当高いらしい。
そういうこともあって、よくラブレターが来たり、告白されたりするが全て断っているらしい。とのこと。
「自分が昔見てきた晴香は我儘で、子供っぽくて、面倒くさがりで、あんなんじゃなかったんだけどな。」
僕はそう思っていたが声に出すことは決してなかった。
もし、呟いて他の誰かに聞かれたりでもしたら次の日には命はないだろうから。
とりあえず始業時間が近づいてきたので新しい教室に入る。
幸いにも1番後ろの席だったのであまり人の目を気にせずに座ることが出来た。
しばらくして教室内が一気にざわつき始めた。
晴香が教室に来たらしい。
去年はクラスが違ったため全くと言っていいほど学校で会うことはなかったが、今こうしてこの空間を見ると晴香の人気の高さが窺い知れた。
一通り行事が済み、新しい担任の自己紹介や日課表紹介などをした後クラス内での役割決めが行われることになった。
風紀委員や保健委員、広報委員などの役割は各方面で得意な人がいるらしくすぐに人が決まっていった。
残るは学級委員だけになったがこれが中々決まらない。
それもそのはず、学級委員は他の委員会とは比べ物にならないほど仕事が多く忙しいからだ。
そのため、強豪の部活動では学級委員になることを禁止しているところもあるという。知らんけど。
そして不運なことにうちのクラスの男子の文化部と帰宅部は5人しかいないという、もはや五分の一で学級委員になる運命であった。
女子はと言うと…勿論晴香であった。
しかも自ら立候補していたのだ。
「これは…学級委員になったら今までの平和な日常が終わる気しかしないのだが?でも、晴香は自分のこと避けてるっぽいし流石に大丈夫だろう。」
悠真のこの想いは完全に打ち砕かれることになった。
晴香本人から直々に指名されたのだ。
「は、へ?えーととりあえず丁重にお断りします。」
悠真は混乱していた。とりあえず断っておいたが誰も悠真の言葉を聞くことなく勝手に学級委員にされた。
もう色んな意味で終わった気がするけど大丈夫かこれ?
…ここから悠真の新しい日常が始まる。
今回からシリーズ始めさせていただきました。
そこまで長くなる予定では無いのですがだいたい年度末までに完結できるように、週1か2投稿目指して頑張ります!