第73話【プレイボール!!】
「プレイボール!!」
審判の合図で会場が盛り上がる。
挨拶の後、先行のエース達のチームは、ベンチに戻り監督の周りに集合した。
「今日は、3回しかないけど、その中で一生懸命やっていこう。この試合、勝ったら全員分、ワシが焼肉奢ってやる」
ヤイチーが選手を勇気づけた。
全員がやる気に満ちていた。
『さぁ、始まりました。エース達がいるショーコウ対、隣町のノーコウの対戦が始まりました。実況・解説は、神が務めさせていただきます。』
「急に現れるなよ!」
エースが、聞き覚えのある声に反応した。
『現れてませーん。声だけですぅ〜。』
「うぜぇな」
エースは、イラついた。
『なお、この実況は、エースと画面の前のお友達にしか届きません。』
「なんでだよ!」
エースがツッコんだ。
『先行、ショーコウの攻撃は、1番のアリス!』
アリスは、初球でバットを振った。
「スイング!」
審判がストライク判定をする。
『おーっと、アリス。球を全く見ずに振った!今のスイング、解説の神様はどう思いますか?』
『そーですね、スイングスピードはかなりいい感じなので、しっかりボールを見て打ってもらいたいですね。』
いつもより、声を低くして神様が解説役をしている。
「滑稽だな」
エースが笑いながら神に言った。
すると、カキンという音が響いた。
『打ったー…いや、バットにたまたま当たったー!アリス、センター前ヒット!』
先頭打者が塁に出たことによりチームが大いに盛り上がった。
2番のリョーの確実なバントとアリスの瞬足で1アウト、ランナー3塁になった。
『なんてことだ!ランナーが1塁から一気に3塁へ!』
「あれは、人じゃあ無い」
相手チームの誰かが言った。
アリスのスピードに全員が目を見開いた。
『チャンスで回ってきたのは、エースだ!』
『緊張の場面、ピッチャー第1球を投げました!』
「スキル【長打力】!」
エースは、スキルを使ってバットを振った。
『おーっと、エース!大きな空振り!』
『ちょっと力が入りすぎてますね』
声を低くした神様が言った。
「楽に、楽に」
エースは、自分に言い聞かせた。
ピッチャーが振りかぶった。
「スキル【長打力】!」
エースは、またスキルを使った。
『エース、またもや大きな空振り!』
「神、うるさい!」
エースがキレた。
そして間もなく、ピッチャーが投げた。
「スキル【長打力】!」
グラウンドに快音が響いた。
『入った!入りました!ホームランです!ショーコウ先制!2対0!いきなりゲームが動きました。』
その後、4番のトリは高めのボール球を振って空振り三振。
5番のリューダは、いい当たりを打ったがセンターフライに終わった。
「ナイスバッティング!」
エースが守備に着く時チームのみんなに言われた。
「ありがとうございます」
エースは、嬉しそうだった。
『さぁ、1回の裏。マウンドには、エースが立ちます。そして、バッターボックスにはノーコウで最もヒット数の多いタケタダ・シミツが入ります。』
「ピッチャー楽に!」
後ろからエースに声がかかる。
『ピッチャー、エース第1球を振りかぶって投げた!』
「おりゃあ!」
エースの力んだ声が出た。
『打ったぁぁぁ!1番タケタダ、ライトの頭を越す二塁打だ……おっと、ライトのアリス、ボールを追わない!なぜだ?!その間にバッターはホームイン!先頭打者ホームランだ!』
「何してんの?」
エースは、ボソッと言った。
「ごめん!エース!」
後ろから謝罪が聞こえた。
『2番には、プロ注目選手のベンティ・トールが入ります。』
「この世界にプロ注とかあるのかよ」
エースは、ボソッとツッコんだ。
『打ったぁぁぁ!簡単に柵を越える!さすがプロ注目選手!』
「アレ?」
エースは、状況が飲み込めなかった。
「どんまい、どんまい!打たれるのはしょうがない」
守備に着いている選手が必死にエースに声をかけた。
『ピッチャー、エース。今日は調子が悪いのか?』
『まぁエース君は、野球経験は、小学1年から腕を無くすまでの4年間しかないのでね…』
低い声の神が言った。
「うるせぇ!」
エースは、神に八つ当たりした。
その後、神の煽りがあり球のキレが上がり、3番、4番、5番を三球三振で抑えた。
『2対2で迎えた2回の表、バッターは、6番ショー』
ショーは、最高速度150km/hのストレートを前に歯が立たなかった。
『続く7番、ブタノ。おっと、打ったー!レフト前!』
「「ナイスバッティング!」」
ベンチは、大盛り上がりだった。
『おーっと、どうした?!レフトがファーストに投げた!』
「アウト!」
1塁審が片手を上げアウトを宣告した。
『なんてことだ!足が遅すぎた!まさかのレフトゴロ!』
チームは、一気に盛り下がった。
8番のエラーは、初球を打ち上げ内野フライに終わった。
『2回の裏、ノーコウの攻撃も立ち直ったエースのストレートに対応出来ず、6番レン・コンノは内野ゴロ、7番ダイ・コンノは二遊間に打ったもののリューダの華麗な守備によりアウト。2アウトランナー無しで迎えたのは、こちらもプロ注目選手。8番ショート・グランデ』
「コイツを抑えれば、何とかなる…」
エースは、小さな声でフラグを立てた。
『ピッチャー、投げた!おーっと、バッターは確信したようだ!ゆっくりと歩き出す。そして、綺麗なバット投げ!入りました、逆転のホームランです!』
ショートのホームランで"流れ"がノーコウ側に傾いた。
「クソ!」
怒りを込めたボールで、9番のハビット・ピークから三振を奪った。
ショーコウ対ノーコウの試合も最終回に入った。




