第36話【食糧調達のはずが…】
「今日は、何をしよう」
王都へ向かうのは決まっているが、それまでの道のりの予定は決まっていない。
「とりあえず、近くの町に行ってみるか」
王都に行く途中にある町に寄るという予定が決まった。
町があると決まった訳では無いが。
しばらく、歩いていると町を見つけた。
〖ラハタハタ村〗というところらしい。
「"町"と"村"何が違うんだろう?まいっか」
エースは、考えるのをやめた。
とりあえず入ってみた。1日で持っていた食糧は食べきっていたので、ここで食糧調達をする予定だ。
村に入ってみると、空気がピリついていた。
近くを通りかかった現地の人に訊いてみると、今日はレースがあるらしい。
そのレースで1位を取れば、賞金が手に入るらしい。
「よそ者でも参加出来ますか?」
「あぁ、もちろん」
「よし、参加しよう」
エースは、参加することにした。
「集まって来てくれた諸君よ!今回のレースの内容は、"5時間でどれだけの量の魔物を倒したか"で勝敗を決める!1位は、賞金と…私の息子になる権利を与えよう!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
村長の言葉で会場が沸いた。
「そんなの聞いてないぞ?」
エースは、戸惑った。
全員が賞金よりも娘を求めていた。
エースは村長の娘は、別に要らない。
「えー、で、あるからして…」
どこの世界でも、お偉いさんの話は長いようだ。
「おい、見ない顔だな、冒険者か?」
エースの隣にいた、知らないイケメンに声をかけられた。
「まぁ、そんな感じです」
冒険者登録はしてないけど冒険者という事にした。
「お前も、村長の娘狙いか?可愛いもんな、シーナミルお嬢さん」
村長の娘は、シーナミルと言うらしい。そして、可愛いらしい。
しかしエースは、そんなことには興味が無かった。
「噂で聞いたんだが、この大会で1位になれば、魔法の書も手に入るらしいぞ」
「そうなんですか?」
エースは、「1位を取るぞー!」と、心の中で燃えていた。
レースが始まった。一斉にむさくるしい漢達が村を出た。
エースは、スタート地点に取り残された。
「よし、行くか」
エースも村を出た。
近くの森に入ると、倒れている漢達がたくさんいた。
「あれまー。皆やられてるじゃん」
倒れた漢達の息はあった。死んではいなかった。
エースも森の奥に入っていった。
小さな虫みたいな魔物達がたくさんエースに寄って来たが、一瞬で返り討ちにした。
「既に、30匹はいるな」
虫くらいのサイズだが、量としては、まあまあだった。
「でも少し気持ち悪いなぁ」
小さな虫がうじゃうじゃいる為、エースは怖くなって震えた。
森の奥を歩いていると、洞窟を見つけた。
「入ってみるか」
エースは、勇気を振り絞って洞窟に入った。
洞窟の中は、コウモリの糞と湿気のせいで臭かった。
洞窟特有の臭いだ。
松明の変わりは、【ボヤ】を採用した。
ちょうど良い明かりだった。
「そういえば、明里は元気かな?」
"明かり"を見てエースは、ふと思い出した。
「王都に着いたら、訪ねてみよう」
"王都に着いたらやること"リストに追加された。
そんなことを考えていると、魔物の気配がした。
そのまま奥へ進むと、熊みたいなヤツを見つけた。
「グォォォ!」
見つかった。
猛スピードでエースに突っ込んできた。
「【ピッチクイック】!」
エースは、スピードを上げた。
そして、熊のタックルを避けた。
「【ドゥクシ】!」
エースは、攻撃力を上げた。
そして、会心の一撃を喰らわした。
ホイスーの体術魔法が役に立った。
倒れた大きな熊を洞窟から引きずり出した。
「さて、どうやって持ち帰ろう」
エースは、立ち尽くした。
「そうだ!スキル【長打力】」
エースは、【長打力】を使って前に飛ばしながら進んだ。
あっという間に森を出た。帰る途中でも、小さな魔物が大量に襲って来たが、簡単に返り討ちにした。
行きの魔物は、例えるとヘラクレスくらいの大きさだったが、帰りの魔物は、大きめのラフレシアくらいの大きさだった。
少し大きくなったとはいえ、50匹くらいいたので気持ち悪かった。
「ただいまより、測定を開始します。参加者の皆さんは、並んでお待ちください」
村に戻ると大会関係者が呼びかけていた。
村では、計測作業をしていた。
「皆、大きめの魔物ばっかりだな…」
他の参加者は、小さくてもイノシシくらいの大きさばかりだった。
「いよいよ、僕の番か」
エースの番が回ってきた。
「はい、えーと……ミクロノライノスが30匹………30匹?!どこに、こんな数いたんだ?」
「普通に森の中にいましたよ」
「なんだと?」
エースは、不安になった。何かやらかしたのではないかと。
「えー、次が……アントノバッタが50匹………ご…50匹?!どこにいたんだ、こんな数…」
「森の中に…」
「何?!」
「デジャブだ。」とエースは思った。
「えー、最後に……その大きな魔物はなんだ?」
測定員が熊に向かって指さした。
「森の中の洞窟にいました」
「これは、まずいな……」
測定員が顎に手を当てた。
この状況は、異常事態らしい。
「なんと優勝は……通りすがりのスーパーヒーロー エース・スラッグだ!!」
エースは余裕で優勝した。
ミクロノライノスはCランクの魔物で10匹以上が同時にいることは、少ないらしい。
アントノバッタもCランクの魔物で、1匹でもかなり珍しい魔物らしい。
洞窟にいた熊みたいな魔物は、レディミクストベアーという魔物で、Aランクの魔物らしい。とても体が硬く普通の攻撃では、ビクともしないどころか、素手で殴れば骨折する程の硬さらしい。
この村は、レディミクストベアーに怯えて過ごしていたらしい。
そんな魔物をエースは、素手で殴って倒していた。
「君は、なんと素晴らしい力の持ち主なんだ。是非とも私の息子となって欲しい」
そう村長に言われ、連れていかれた場所は、シーナミル・グリスがいるところだった。
「あのー、僕はそうゆう目的できたのではなく…」
村長の耳には届いていなかった。
「まさか、うちの村の問題まで解決してくれるとは、エース君、君は大したものだ」
村長を止めることが出来なかった。
そして、ある女性の元に着いた。
そこには、亜麻色のストレートヘアーで透けるような乳白色の肌。目、口、鼻はパーツでみても美しい。すべてが整っている美少女だ。
「おい!シーナミル!お前のお婿さん、エース・スラッグ君を連れてきたよ!」
「……」
シーナミルは、口を噤んでいた。
「なんだ?シーナミル、嬉しくないのか?」
「誰が、欲しいなんて言った?勝手に決めないでよ!」
親子喧嘩が始まった。
「私は、お前の為を思って…」
「うるさい!すぐそうやって私の為だとか言って」
「私は、シーナミルが過ごしやすい様に…」
「もう、私の事はほっといて!」
バタンと大きな音を出してドアを閉めた。
シーナミルは、部屋に引きこもった。
「ったく」
「あの〜、発言してもよろしいでしょうか?」
エースは、勇気を振り絞った。
「あぁ、なんだ?」
キレ気味に返された。
「僕は、お婿さんになりに来た訳ではなく……」
「何?!」
火に油を注いだようだ。
「僕は、冒険者なのでお嫁さんを貰っても幸せに出来るとは限りません。色々な所を転々としますし、魔物とも戦います。お嬢さんを危険な目に遭わすわけにはいきません」
エースは、頑張って説得した。
「…そうだな、すまなかったエース君。つい、嬉しくて……。シーナミル!お前には、悪い事をした。すまなかった。」
話は丸く収まった。
翌日、エースは賞金と、レディミクストベアーの討伐お礼で食糧を山ほど貰った。食糧はすべて乾燥させてあり、長持ちするらしい。
エースは、ラハタハタ村を後にした。




