第23話【黄金のフレンチトースト】
「それじゃあ、キャベツでこのタネを包んで……」
エプロン姿のフィリアはエースの耳元で囁いた。
今日のエースはいつもと違った。
フィリアと台所に立っている。
――遡ること数分前――
「え〜、まぁ今日からしばらく、その〜、先生ちょっと大学の方に〜行かないといけないので、まぁ先生が帰ってくるまで、エースは自由に過ごしてくれ」
ホイスーは、エースとの朝のミーティングでそう言った。
どうやら、仕事をサボっていたらしい。
いきなり言われたので何をするかエースは悩んだ。
そして朝飯の時間がきた。
今日の朝飯は、フレンチトーストだ。
エースは、この世界に小麦がある事を初めて知った。
思い出してみれば、これまで食べた全ての料理に小麦が使ってあったことにエースは気づいた。
しっかりと認識できる小麦は、今日が初だった。
フレンチトースト、それは黄金の食べ物。
見ているだけでお腹が空いてくる。パンに染み込んだ卵の味と匂い、1口かじれば、外はサクッと、中はパンとは思えないほど柔らかい。そして、ほのかに感じる甘さ。今回は、砂糖より蜂蜜を中心とした味付けだ。濃厚な甘さ。
前世で『フレンチトーストの奨大』と呼ばれていたほど、色んなフレンチトーストを食べて、作ってきたエースだったが、この完璧なフレンチトーストには、完敗だった。
エースは、"異世界"で"フレンチ"というのは、どうしても引っかかっていたのだが、1口食べてどうでも良くなった。
「そうだ、フィリアさん!料理を教えてください。」
今日のすることが決まった。
――そして今に至る――
今日の晩飯は、ロールキャベツだ。
昼過ぎからロールキャベツの仕込みを始めた。
「それじゃあ、キャベツでこのタネを包んで……」
エプロン姿のフィリアは耳元で囁いた。
エースの顔が赤くなっていた。
エースは、耳が弱かった。
フィリアは、手取り足取り教えてくれた。
幸せな時間だった。
今朝捕らえたクルックという、鶏に似た魔物の骨から出汁を取った。鶏ガラ出汁の完成だ。
その鶏ガラ出汁に、肉を包んだキャベツを沈める。
外を見れば、日が傾いていた。
エースは、ロールキャベツに出汁を染み込ませている間に少し、戦いに出た。
「周辺探知!」
スキルで魔物の位置を探った。
「お、一匹だけかな?」
唯一引っかかった、魔物のもとへ向かった。
そこには、信じられない光景があった。




