第16話【食事も修行の1つ】
「さ、遠慮なく食べてね」
よそ者なのにも関わらず、とても豪華なもてなしをされている。エースはフィリアに気に入れられたようだ。
エースの目の前には、見た事のない肉料理やスープ、デザートまでもがある。とても美味しそうだ。
「これ、食べていいんですか?」
エースは、声を弾ませた。
「いいの、いいの。遠慮なんかせずに食べるのよ、食事も大事な修行の1つよ」
エースには、とても優しい。
「おい、先生のご飯は……」
「目の前にあるでしょ?」
ホイスーの目の前にあるのは、大根のような野菜が1本、生のまま置いてある。もしかしたら、生で食べる野菜なのかもしれない
「こ…これ…生…なんだけど…」
「文句を言わずに食っとけ!」
「す…すいません…」
生で食べる野菜ではないようだ。
フィリアによるとこれは、ホワイトキャロッシュという野菜のようだ。大根と人参のハーフ野菜らしい。味は、ほとんど大根らしい。
「うぅ…(泣)。キャロッシュおいしい。うぅ…(泣)。」
なんだか、可哀想に見えてきた。
ホイスーのことは置いといて、エースも食事を始めた。
「これ、美味しいです!」
「そう?嬉し〜!エース君好き〜」
フィリアの態度が恐ろしく感じた。
謎の肉料理は、イノシシの角煮だった。
イノシシ肉特有の生臭さは全くなく、醤油・砂糖・生姜・味醂を完璧な割合で混ぜた、甘辛い味付けをされて歯がなくても食べれそうなくらい柔らかい。
ほっぺが落ちそうになった。
「このスープも飲んで飲んで」
フィリアは急かすようにスープを飲ませた。
以外なことに、味噌汁に近い味だった。
心に染みる味噌の風味。心温まる。
「美味しっ!」
思わずこぼれた言葉にフィリアは大喜びだった。
唯一の心残りは、白飯がないことだった。
今までとは違う世界なので、それはしょうがない。
メイン料理は数分で全てたいらげた。
残るは、デザートのみ。
「いただきます」
デザートを前にしてもう一度言った。
どんなデザートか簡単に説明するとフルーツヨーグルトだ。
この世界には、牛はいない。その代わりに、牛みたいな生物がいるらしい。
「とても美味しかったです」
全て食べ終わり、エースの表情はとても良くなった。
「嬉しいわ〜!貴方ホントに美味しそうに食べてくれるんだもの」
フィリアの顔も豊かになっていた。
「あの人ったら、"美味しい"の一言も無く、淡々と食べるから…作り手としては、美味しくないのかな〜と不安でしかないのよ。でも貴方は、違う!作り手冥利に尽きるわ!」
2人は、ニコニコと幸せそうだった。
「うぅ…(泣)。キャロッシュおいし…うぅ(泣)。辛い…。」
ホイスーは、まだホワイトキャロッシュを泣きながら食べていた。