第137話【かなしみ】
「結局僕は…明里を守れなかったな…守られてばっかだった…ごめんな…」
村に入って彷徨いながらエースは、明里との思い出を思い出し涙を零した。
「おぉ、エースじゃないか!久しぶりやのぉ!」
突然、聞き覚えのある声に話しかけられた。
エースが顔を下げると、ホイスーの姿があった。
「おぉお前!何を泣いとんや!男なら涙なんか見せるな」
ホイスーがエースの顔を見て言った。
「あれ、ホイスーさん?何してるんですか?」
エースの声は蚊のようなものだった。
「それが、遊園地でお前らに会ったあと『エースとアリスとフィリアのせいで壊れた城の修繕費を払え!』って急にどこかの王国の兵士に言われて、払えなかったから、遊園地からここに連れてこられて、今のところ1ヶ月不眠不休で色んなことさせられとる。お前ら何したん?お前らが見つからないからって交流のあった先生がこの有様や!」
ホイスーは、キレ気味にエースに言った。
「そうですか。それはすいませんでした」
エースは、心ここに在らずだった。
「エースのくせに元気がないのぉ。どうしたん?あと、他のみんなはどこにおるん?」
ホイスーがエースに尋ねた。
「それが…」
そう言って、エースは手に持っていた遺骨の入った袋を見せた。
「おぉ、なんやこれ?誰かの下着か?」
ホイスーは、空気が読めなかった。
「僕のせいで……」
エースは、また泣き出した。
「まさか、死んだんか?」
ホイスーは、ようやく理解した。
「…フィリアもか?」
ホイスーがエースに尋ねると、エースは静かに頷いた。
「お前がおるのにそんなことは…うぅ…(泣)。」
ホイスーも泣き出した。
「近くの宿を紹介してやる。今日はもう休うぅ…(泣)。」
エースは、ホイスーに紹介された宿に向かった。
「すいません、しばらくお世話になります…宿泊費は全額この村にいるホイスーという人に請求してください…」
エースは、宿の受付にそう言った。
「わ…分かりました。ごゆっくり心と体をお休めください」
受付の人は、エースの元気の無さを感じ取って心配した。
エースが部屋に入ると、自分の荷物を投げ捨てた。
「クソ…」
エースは、悔しさと悲しみを表に出した。
エースは、ベッドに突っ伏した。
「うわぁぁぁぁ!」
枕に顔を埋めて、泣き叫んだ。
「今日、マサくん家に泊まっていい?」
「嫌ですよ!エトラさん、変な事するじゃないですか」
「まま〜、あたしと同じくらいなのにひげが生えてる人がいる」
「コラ!そんなこと言わないの!あの人は、変なおじさんなだけなんだから」
「ねぇ、タッちゃん。私と魔法で勝負しよ?」
「しょうが無いな、でもミナミには負けないぞ?」
「おい!ジジイ!さっさと働け!これだから使えない奴隷なんだよ!」
「うぅ…(泣)」
「ヤーイ厨二病!お前の右腕どこに忘れたの?」
「やめてあげなよ!シモン君が可哀想でしょ?」
「いいよサヤちゃん庇ってくれなくて…もう慣れてるし…」
エースの脳にウザイくらいに外の声が響いた。
「みんな楽しそうだな…昔の僕みたいだ…僕はこれからどうしよう…」
エースは、何もする気が起きなかった。
「…あれ?ポケットになんか入ってる…」
エースは、ポケットに違和感を感じてポケットの中身を出してみた。
「これは…」
エースの手には、女子の下着が入っていた。
「明里のスカートがめくれた時に履いてるの見た事ある気がする…なんで覚えてるんだろ…キモ」
エースは、少し笑った。
「……でも明里の形見だな」
エースは、アリスが戻って来ないという事実を思い出し泣きそうになった。
エースは、そっとアリスの形見を抱いて眠りについた。