1. みなさまは『黒騎士』という名称に、どんな印象をおもちですか?
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やぁやぁ、みなさま初めまして。いきなりですが、みなさまは『黒騎士』という名称に、どんな印象をおもちですか?
邪悪? はたまた強者? それともダークヒーローのような反英雄……?
いいえ違うのです。本来の黒騎士とは、『主君と主従関係を結んでいない、結べない騎士』のこと。これを読まんとする、みなさまの国の言葉をお借りすれば、『浪人騎士』でしょうか。
――まぁ、あの男の場合は、浪人よりも『無職騎士』と訳したほうがちょうどよいかもしれません。
……おぉっと! 自己紹介が遅れました。
私めは、数えて六〇〇年前に廃されたリメイア王国の、幼き王女メルさまのお世話役をしております、スチュワートと申します。
ときどきこうやって『語り』に顔を出すつもりです。どうか場違いだと頁を閉じずに、お見知りおきを。
さて、先ほど説明いたしました黒騎士……もとい無職騎士の男。彼はついこのあいだまで某帝国の一流騎士だったとか。……とある理由で追い出されましたがね。
そして無職になった彼ですが、
……じつは私たちのような、幽霊が大の苦手なのです。
ではでは、この物語を始めてまいりましょう。
私と、私が慕うメルさまと、逃げようにも逃げられなくなった、ひとりの騎士の物語を――
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