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雅楽伝奏、の家の人  作者: 喜楽もこ
参章 雲外蒼天の章
52/314

#05 雪降る聖夜、赤裸々なほど疚しく

 



 永禄十二年(1569)二月十四日






 天彦が去った菊亭屋敷はまるで御通夜のように重い沈黙の帳が降りていた。

 家人・武官・用人、家来の誰一人として言葉なく沈痛な面持ちでいる中、一人の家来が意を決したように立ち上がった。

 安定の。あるいは意外性の。けれど漢と書いて男と読ませるには一万年ほど早いへたれキッズ、植田雪之丞である。


「某は参る。止めるな」

「どちらに」

「某の勝手」

「いいえ植田殿、行かせるわけには参りません」

「佐吉、僭越やぞ。某はお主の上役である」

「いいえ。某と植田殿は同格。殿より確と仰せつかっております。譲れません」

「え、いつから?」

「先の昨日の一昨日の明後日前にござる」

「え、一、一、二で……あれ、それっていつ? 何個足すのん。某訊いてへんわ。でも通して」

「通せませぬ」

「なんで。ええい退け。佐吉のくせに生意気やぞ」

「退きませんぬ。植田殿の分際で往生際が悪いでござる」

「分際とはなんや。退けっ」

「退きませぬ。分際とは分際にござる。植田殿は大恩ある殿のお言葉をいったい何と心得られるのか」

「う。……それは大事なことやけど」

「ならば」

「そ、それでも参らなアカンのや! 退けっ薄情者の慮外者め」

「聞き捨てなりませぬぞ」

「ほななんぼかてゆうたる」


 菊亭家家来同士、お互いが互いの正義をぶつけあう。片や何かできないかと居ても立ってもいられず、片や結果が出るまで待ての下知を厳守せよという。

 果たしていずれの正義が正しいのか。あるいは思いが強いのか。答えは意外な角度から出された。


「雪之丞」

「植田殿と申せ。与吉。ひっ、せ、せめてさんつけて」

「雪之丞、なんぞ策でもござるのか」

「くっ、さんつけてって。まあええです。あるに決まってる」

「ほう。ならば聞かせよ。内容次第では合力してやることも吝かではない」


 まさかの藤堂与吉高虎が雪之丞に興味を示した。菊亭家に臣従して以来、おそらく真面まともに会話したのはこのときが初めてであっただろう。

 身長差にしてざっと二尺は優にあろう。大人と子供の開きどころではない。だが雪之丞は聳えるような角度から見下ろされる視線にも屈さず、堂々と受け立ち向かっていた。盛った。むちゃくちゃ怯みながら顎をガクブル震わせてそれでも気丈に立ち向かった。


 だがけして雪之丞が漢を見せたわけではない。それを世間では慣れと言う。初見ならお雪ちゃんは100の確率で退散している。そして120の確率でちびっている。


 興味深く成り行きを見守っていたラウラを筆頭に、同僚武官の二人も興味津々の面持ちで二人の会話を注視した。


 閑話休題、

 雪之丞は神妙な顔つきで与吉高虎の瞳を見つめた。そして慎重に言葉を選びながら、


「ある。……助けを求めるんや」

「いずこに」

「え、それは強いお人さんにや。阿保やな与吉って」

「いずこの」

「……誰、誰やろ。考えてへんかった。……そや、魔王や! 魔王さんやったら朝廷よりも強いやろうし、きっと若とのさんを助けてくれはる。行ってこよ。行ってきます」

「待ちなさい」


 これにはさすがのラウラも口と同時に手も出した。


「離せっ。武士の襟首掴むなんて無礼やろ」

「御チビさんが粋がらないの。いいですか。魔王さんは恐ろしい御方やから魔王さんと呼ばれているのですよ。助けてください、よっしゃとはなりません」

「これやから女子おなごは。武士もののふであれば武士もののふの心意気に感じて――」

「黙れ。何が武士もののふかっ!」

「ひっ」

「ほらお雪ちゃん。女子おなごに気圧されていて何が心意気ですか」

「くっ、でも。でもラウラ、若とのさんが……、若とのさんが……、びえーん」


 雪之丞は感極まって泣き出してしまった。

 感情は痛いほどわかる。気持ちにはすり減るほど寄り添える。誰もが適うなら行動に移したい。可能性があるなら誰にだって救いを求めたい。けれど……。

 あの見苦しさでは定評のある御主君が半ば白旗を上げた言葉を残した状態で臨んでいるのだ。自分たちに何ができるとは思えない。この場の大半がラウラの第一感に同感だった。

 それでも何とかして帰ってくる。同時に逆にそんな期待感も失っていない家人たちだからこそ、前にも後ろにも横にも斜めにもまったく動けずにいた。まさしくメンタル的な雁字搦め状態だった。


 しかし粗方が同調する気配に真っ向から異論を放つ者が一人。


「魔王を巻き込む。おもしろい。これぞ菊亭の手法だと拙者は思うが」

「あははは! 確かに。菊亭の殿ならばならぬ道理はないと仰る」

「あるのか。織田の大殿の合力など……、だが面白さでは群を抜いた」


 忠三郎氏郷が異論を提唱すると、与吉高虎、助佐且元が半ば同調しながらも自らの考えを口にした。


 この反応を受けてすっかり意気消沈していた雪之丞が復活を果たす。しぶとさでは他の誰にも負けない定評があった。むろん自信も。主君天彦からもそこしか褒められていない気がする。お雪ちゃんはいっつも可愛いなぁという褒めたテイの侮辱以外では。


「忠三郎殿!」

「なんだ」

「口。口はちゃんとして。某が上役やから。序列は御家の秩序やから」

「ちっ、なんでござる」

「うん。某を案内してほしいん。なんとか説得してみせるから」

「ほう。それは本心で」

「本心以外に何があるん」

「いろいろとござろうが、お主にはなさそうだな。宜しいが死にまするぞ」

「え」

「10の絶対で死にまする。むろん10が天井にござる」

「え」


 十割死ぬ。お願いするだけで。雪之丞はパニックになった。お願いします、ゆうだけで。なんで。阿保なんやろか、織田さんは。魔王やしやっぱり阿保なんやわ。

 雪之丞は自分なりの何段か活用をしている内に、次第に気分が上がってきた。なぜか不思議だがイケる気までしてくるではないか。いけそういったろ。雪之丞こそ確実性の高い阿呆であった。


「ええよ死んでも。若とのさんおらん菊亭に居ってもしゃーないし。三途の川は一所に渡ろなって約束したし。あれ違ごたかな。どっちかが先渡ったら待っといてやったかも。ええわ、うん。忠三郎殿。よろしゅう御頼み申し上げます」


「「「「「えぇ……!」」」」」」


 これには逆に家来衆が驚嘆する。何はなくとも一番無いだろう筋のポンコツ家来がいの一番に命を放ると言ったからだ。

 それが現実を厳に捉えているかどうかはこの際問題ではない。その覚悟までの潔さが、家来衆、特に武官の対抗心に火をつけてしまう。それだけでもう雪之丞の大殊勲であった。


「まあ最初から、某は参る心算だったが。織田など恐るるに足らず」

「甘いな。拙者など、すでに腹を召す覚悟で臨んでおった。つまりこの世に畏れるものなどない」

「ふっ某などすでに腹を召しておる」


「嘘を抜かせ」

「無駄口をたたきおって、叩き斬るぞ生まれだけの雑魚侍」

「なにを。もう一度抜かしてみよ」


「なんだ」

「ぺっ、何度でも言ったらぁ、白黒つけるか」

「上等だ、二人纏めて掛かってこい」


 雪之丞はまんまと三郎信長へのルートを手に入れるのであった。100死ぬが。




 ◇




 向かった先は寺町御池。言わずと知れた三郎信長の定宿、法華宗本門流の大本山。一般的には本能寺の名で知られている寺院である。

 元家来がいたからか中へは雪之丞の予想を大幅に上回る速度で入れた。震える。

 寺院が放つ静謐さももちろんだが別種の張り詰めた緊迫感が感じられた。震える。

 境内は薄暗くかがり火も頼りない。しかもいつにも増して今夜はひと際冷える気がする。やっぱり震えた。


 何かにつけて震えている雪之丞が武家三名と共に通された寺院内書院で待たされていると、とんでもなく速い歩様の足音が聞こえた。と思ったらもう目の前に降臨していた。お目当ての魔王様降臨である。


「あ、え、う……」


 態度を改める間もなかった。そして目があってしまうともう最後。鷹の前のキジ状態。雪之丞はぴくりとも動けなくなってしまっていた。あ、え……、なんで。


 魔王は雪之丞をほんの一瞬一瞥しただけで興味を失ったのか元の家来に視線を移す。だがその眼光の鋭さは比ではない。睨まれた元家臣たちは生きた心地がしないのか、一周回って死を決意したいいときの侍の顔に成り代わっていた。


「ふん。面構えだけは相変わらずよ。貴重な書の時を邪魔立てしおって。下らぬ用件で呼びつけたのなら覚悟せいよ、くそ砂利ども」

「お目通り叶い恐悦至極。ぐはっ――」

「賢しい真似を。木偶の坊っ!」

「は、はっ! ここにござる。ぐはっ――」

「どいつもこいつも小癪な。おい助佐貴様はなんと応じるのか」

「どうぞ。ぐは――」

「ちっ、下らん」


 全員が全員。刀の鞘の餌食にされた。生半可などつきではない。ビジュアル的には額を切って大流血している忠三郎氏郷が最も酷くは映っているが、三人ともに全治二週間は下らないだろう強烈な外傷を負っている。


 さて順番的には。

 雪之丞の目の前におそらく人生で二度目だろう絶望の瞬間が訪れていた。


「貴様、狐の小姓じゃな」

「……小姓ではありません。某は歴としたお侍です」

「それは侍として扱えとの言葉ととるが」

「ひっ、まだ修行不足なのでお手柔らかにお願いします」

「ふん」


 雪之丞はなのに自分が不思議だった。鼓動が高まれば高まるほど、頭が妙に冴えていく。

 ええかお雪ちゃん。勝負は一度キリや。相手の目ぇ見て平身低頭、希うんや。ええか絶対に目を逸らしたらアカン。あとは心尽くしの言葉を綴れ。必ず思いゆうのんは伝わる仕組みになってるんやで。そやないと世界はとっくに滅んでいるから。結果は知らん。いざとなったら使うんや。これが菊亭108の奥義の更に奥にある秘奥義やで。


 結局今日に至るまでその秘奥義とやらは伝授されず仕舞。だが心を尽くせの助言だけは雪之丞の脳裏にしっかりと刻み込まれている。

 他にもたくさん。これまで口を酸っぱく反芻されてきた天彦語録が文字群となってカットインして信頼度を劇的に飛躍させる。


「小僧。心して答えよ。如何した」

「はい。若とのさんはあない弱音を吐く人にありません。なのに死後の話ばっかししはるんや。魔王さん、若とのさんの居らん世界。楽しいことってありますやろか」

「……かなり減るな」

「そうでしょっ! そやったら某と一緒に捕らえられた本物の若とのさん救い出すの手伝うてください」

「ホンモノ?」

「はい。あんなヘタレ偽物に決まってますやん」

「くはっ、あははは。――で、あるか」


 三郎信長はこの日初めて耳を貸した。腰をどんと床に下ろすと、続けよといわんばかりに顎をしゃくって催促した。


「お忙しいようでしたらお人さんでも鉄砲でも、貸して頂けたら十分です」

「小僧、貴様は公家か武家か」

「舐めるなっ! 某は歴とした武士やっ……、あ。嘘です」

「まあ舐めたが、嘘なのか」

「ほんまです。菊亭一の家来、植田雪之丞です。元服はわけあって先送りですけど御心は確と武士もののふです」

「ほう。ならば植田。合力依頼に何を差し出す」

「どうしよう。それが困りました。一緒に考えてください」

「ふはっわはははは――! なるほど貴様、五山のお狐の一の家来ぞ。いくらだ」

「へ」

「いくら欲しいと申した」

「100。……きゅ、は、80で!」


 スケール感が実にお雪ちゃんだった。


「貴様、がぜん怪しくなったな。それでも狐の一の家来か」

「え」

「五山の狐ならこう申すわ。いくらある。あるなら最低でも千は寄越せとな。抜け抜けとほざくであろう。そんなこともできぬのかと。魔王の癖にだらしがないとな」

「え、えぇ……、若とのさん、欲張りすぎやわ。むちゃくちゃお命知らずさんやし」

「くくっ、誠にな。あれは遊んでおる。この修羅の戦国を笑い飛ばして遊んでおる。失うには実に惜しい人材である。植田、それでいずこじゃ」

「北さんです」

「北、とな」

「はい。立派なお塀に囲まれたお偉い人がようさん居たはるしんどい場所です」

「……貴様、まさしく狐の家来であっのか」


 三郎信長はこの瞬間雪之丞がいったいどこに兵を差し向けようとしているのかを覚った。

 虫の居所、時期、興味、関心。他にも複数、様々な条件がぴたりと合致していた。

 朝廷には一度わからせてやらねばならぬとも考えていた。渡りに船だ。主君救出依頼というこれほど明確な大義があれば。最悪はこの小僧と数名に詰腹を切らせればよい。それで足らねば今出川の黄門も添えて。


 方針は定まった。三郎信長は立ち上がる。と同時に市若いちわかと名を呼ぶ。すると陰から音もなく小姓が現れ三郎信長に愛用のビロード生地陣羽織を手際よく着せた。

 迫力と渋みが三割増しになった三郎信長は、いつのまに集ったのか書室に詰め掛けているむさ苦しい荒武者どもに視線を向けた。峻烈な視線を。


「イヌっ」

「はっここに」

「出陣じゃ。親衛隊を招集せい。直ちに足軽1,000を率いて参れ。遅参はゆるさん」

「はっ即刻」

「一益」

「ここに」

「鉄砲隊1,000を引き連れ足軽隊に続いて洛中を進軍せよ」

「はっ。目標は」

「敵は内裏にあり」

「……畏まってござる」

「行けい」

「はっ」

「成政ぁ!」

「ここにおわす。観音寺城以来の大戦にござるな」

「腕が鳴るか」

「むろん! 公家など軽く捻ってご覧にいれまする」

「存分に揮うがいい。槍隊500を率いよ」

「はっ望むところ。1,000を率いまする」

「けっ」


 とんでもない大事になった。だが引っ繰り返るどころか雪之丞の瞳は爛々と輝きを放っていた。


「なんじゃ小僧。なんぞあるのか」

「指揮させてください。某に。だってこれは某の戦やもん」

「くふっ、ふはっあははは――、貴様、朝敵も畏れぬと申すか」

「なんですのん。それ。若とのさんの敵はみーんな敵や」

「で、あるか。ならば存分に揮うがよい。植田雪之丞、大儀であった」

「はい。お気持ち謹んで拝領いたします」


 植田雪之丞。控えめにいって途轍もない大旋風を巻き起こしていた。




 ◇◆◇




 息を飲むほどの重くるしさの中、責め苦に耐え切れずいよいよ実益陥落も間近に迫ったそのとき、


 どーん。どんどんどんどん。ぱっかーん。


 乾いた破裂音と腹にも響く炸裂音が鳴り始めたと思ったと同時に、果てがないと思わせるほど間断なく鳴り続けた。


「な、なん、なんでおじゃやる」

「ひいっ」

「ひゃぁ、恐ろしい音におじゃります」

「天変地異や。仏さんが激怒したはる」

「いったい。巡察、巡察は居らぬのか」


 唐突に地響きがするような炸裂音に公家衆は大パニック。

 諸太夫の間で起こったそのパニックはたちどころに伝播していき、やがて清涼殿すべてを大パニックの渦へと巻きこんでいった。


 誰もがおろおろ右往左往する中、おそらく最も身分卑しいであろう児童だけはニヤリと口角を上げてこの錯乱状態を愉しんでいる。まさしく五山の化け狐。この状況を俯瞰で見た者があればそう確信するであろう妖艶な笑みであり、ひっくるめて異常で異様な光景だった。


 だがそんな中でも狐を恐ろしくも疎ましくも思わない人物が一人。この査問会の主役の一人、近衛中将藤原朝臣西園寺実益卿であった。

 狐の気配の変化を真っ先に察知した実益はそっと右目を眇めると、その小癪生意気な狐の横顔をじっと見つめる。物心ついたときにはそこにあった。頼もしくも太々しいまでに頼りがいのあるその横顔を。


「子龍。これが策か」

「信じてもらえますやろか。身共、なーんにも思い当たりませんのん」

「ふっ、ほざけ」

「ほなほざきましょ。御一緒にどうぞ」


 たーまやー――! かーぎやー――!


 天彦は誰しもが右往左往する諸太夫の間にあって、一人呑気な風流雅の掛け声を上げる。


「それはなんぞ」

「風流雅に決まってますやん」

「決まってるかいっ!」

「え、ダサ」

「なにを。ええいヤケクソや。たーまやー」


 そして意味もわからず実益も半ば自棄気味に調子を合わせて声を張った。

 だが風流雅で丸く収まれば戦国の世はこうまで血を欲しない。

 天彦は御遊びを控えて実益に視線を戻す。


 おお、かっちょええ。


 天彦は半ば弄りながらも半分以上は本気の感情で感心する。

 なぜなら実益、本当に輝いて見えていたからだ。これが男子成長の兆しであろうか。これだけは誓って言える。実益はこの瞬間、ひと皮むけたと。


 いずれにしても実に不思議な聖夜であった。14日セントバレンタインデーだけに。……とか。阿保やろ、絶対無理に決まってる。どこのお花畑やねん。


「あの実益さん」

「なんや」

「丸く収めたいんですけど、これって収まりますやろか」

「無理やろ。どこが丸かってん。麿には角しか見えへんぞ。弁解もただの一言もできてへんし。控えめに言って無茶苦茶やな。やはり子龍と織田は本質では同じなのやもしれへんな」

「いや饒舌! あんたそんなキャラ違たやろ」

「ほなシバいたろ。ツラ寄越せ」

「おうふ」

「ここは殿上、さすがに穢れはご法度や」

「はい」

「あのお顔を見たか」

「いいえ、見逃しました。なんぞ可怪しな……」

「あった。その主上さん。見た事ないほどぶちギレやった。考えてもみい。誰が内裏に鉄砲ぶっ放すんじゃい。下手せんでも朝敵や」

「おーまいがっしゅ」

「よくて解官。悪くすればほとぼり冷めた頃に追放やろ。ま、妥当やな」

「まんじ」


 余計に酷くなったのでは。いくつか腹案あったのに。お雪ぃぃぃ――! 絶対しばく。お尻の皮が剥けるまでしばく。

 可能性は少なくとも複数あるのに、天彦の中で犯人はたった一人に当確していた。


「はぁ」

「はぁ」


 前途はやはり多難のよう。だが今日は凌げた。疲れ切った身体の背と背を合わせ、主従はぐったりするのだった。










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― 新着の感想 ―
[一言] 内裏討ち入りとは何ともまあ。大義名分が敵が星の数ほど生まれますけどどないするんじゃ…… スカッとしましたけどね
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