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雅楽伝奏、の家の人  作者: 喜楽もこ
弐章 臥竜鳳雛の章
32/314

#03 この世で最も醜い感情、この世で最も穢れなき場所の

 



 永禄十二年(1569)一月十七日(旧暦)内裏・清涼殿・殿上の間






 天彦は以々(もちもち)と連れたって神仙門廊から神仙門をくぐり小庭に出る。

 小庭には下侍しもさぶらいがあり東真向かいに小板敷がある。基本的に蔵人はこの小板敷にて伺候しこうすることになる。

 一番乗りだと思っていたが、すでに同僚(先輩)諸氏が参内していた。小板敷には目つきの悪い公家衆が屯していた。


「清涼殿って治安悪いな」

「天ちゃん! な、な、なにを言わはるん。滅多なことをゆうたらアカン」


 滅多もバッタもあるかいな。ガバナンスどないなっとんねん。


 不満の意味で吐き捨てたのだが以々の慌てようは尋常ではない。

 そのあまりの慌てっぷりに天彦はようやく事態の深刻さに気づけた。

 確かに。ここは殿上の間だった。まだ建屋に入る前の中庭だがそれでも迂闊であることには違いない。


 むろん天彦とて悪意はなかった。やたらと挑発的な視線を向けられたものだからつい条件反射で発声してしまっただけ。

 それでもよくない。下手をすると処罰される。いや処罰されるからよろしくないのではなく、不敬だからいけないのだ。無礼だからダメなのだ。


 本質に思い至り反省する。天彦は反省できる子供だった。もっちぃにごめんやでと詫びて、依然としてニヤニヤと挑発的かつ好戦的な含み笑いを向けてくる不愉快な公家衆から身体ごと回れ右して意識を切り替えた。


「天ちゃん。あちらさん」

「ん」

「ほら蔵人頭、竜胆中将さんや。粗相はあかんで」

「ああ、うん」


 程なくすると勅使として菊亭に参られた従四位上・蔵人頭・右近衛中将庭田重通が姿を見せた。

 天彦はこの一日と少しで彼が文武両道で名高き竜胆中将であることを思い出していた。なるほどイケメンだと納得しつつ故実で礼をして迎える。


「菊亭の悪童、ちゃんと遅れんと参れたようやな」

「はい。お世話さんでおじゃります」

「さよか」


 すると竜胆中将は雰囲気を一変させた。そして、


「本日はお揃い遊ばされまして、ご機嫌ようならっしゃいます。どなたさんにもどうぞお勤め変わりませずよろしゅう御頼み申し上げます」


 竜胆中将は儀礼の挨拶をすると天彦に一瞥を落として去っていった。

 おそらく丸投げ系上司だ。人事考課とは。評価値は。

 天彦が人知れず不安感に苛まれている横では、いつのまにか集合していた不良公家衆がこれ以上ないほどに慇懃に故実で竜胆中将を送り出し、さすがの卒のなさを見せつけるのであった。


 それを見た天彦は警戒心を数段階引き上げた。この時代のDQNは侮れない。リテラシーのあるDQNだ。リテラシーがあるのにDQNなのか問題はこの際、いずれにせよジャイアンとスネ夫のハイブリッドであることは紛れもない。


 竜胆中将に場を譲られた先輩蔵人たちは天彦と以々に、“並ばはり”。突き放すような冷たい口調で指示を下した。むろん即応する。この場面で絶対にやってはいけないことは反抗的な態度である。わずかにでも見せてはならない。


「すっかりご存じさんとは思わはりますけど、いっぺんだけ。麻呂は六位蔵人一位・極﨟(ごくろう)さん、中院通勝なかのいん・みちかつであらしゃります。よろしゅう御頼みもうしあげます」


 完全に笑かしにかかっていた。いない。

 だが天彦にはツボだった。“ごくろう”という単語と最上級尊敬語の“さん”は相性がよすぎたのだ。


 以下、

 序列二位・差次さしつぎ、日野輝資(ひの・てるすけ)。

 序列三位・氏蔵人うじくろうど、六条有雄(ろくじょう・ありまさ)

 同序列三位・氏蔵人うじくろうど、大江俊直(おおえ・としなお)


 が、各々特徴的な挨拶をした。


 年齢は少年と青年を行ったり来たりするくらいか。あるいは生意気と落ち着きを混在させている年頃。いずれにせよアオハルだろう。

 だからなのか天彦は出会い頭の生意気な態度はチャラにしてやる。若気の至りによる一度の失敗は許すという信条に沿って。


「おい菊亭のクソガキ、どうやって勾当内侍を誑かした。麻呂に方法教えて進ぜい」

「こいつんトコに別嬪な姉おるらしいで。こんど夜這いかけたろうや」

「どうせ不細工やろ。そやから表に出せへんのや」

「畜生腹と聞いたけど。すんすん、くさっ。どうりで獣臭いはずや」



 ――さない。許すかぼけ、コロス。



 公家として平和的に生きていく。公家として家名に恥じない軌跡を残す。そして後世にほんの少しでも名を遺せればいいな。公家として……、やかましい。知るかぼけ。公家の前に男子じゃい!

 愛する家族をけなされて、侮辱されてそれで怒れへんのやったらしょうもない、男子やめろ。やめたろ。……やめるかいっ。


「わああああああ」


 気づけば相手に殴りかかっていた。阿呆である。


「なんやこいつ、どチビのくせに生意気な」

「よわっ。わろける」

「おもしろい。やったろ」

「そややってまえ。もう二度と刃向かえんように徹底的にやっつけるんや」



 おう――!



 敵は羽林家。公家なので武力はあくまで飾りだが、少なくとも天彦の百倍武に通じている。おまけに戦力差は一対四。そして戦力差はそのまま戦闘力に上乗せされる。

 結果に反映された戦闘力は存分に発揮された。天彦はたちまち取り押さえられ寄って集って痛めつけられた。それこそ一張羅が惨めになるほど散々な状態になってしまう。


 ざわざわざわ。


 だがこの場は環視の目が多い。所衆や官吏たちが騒ぎ立て始めた。


「おい、もうやめとけ。蔵人に見つかったら面倒や」

「そやな」

「そうしよ」

「こいつ噛みつきおった。狂犬みたいなヤツやで。おい菊亭、今は見逃したる。あとでけりつけたるからな」


 おいいつまで寝とるんや。


 天彦は無理やり引き起こされ、放り投げるように出仕の列に並ばされた。

 多くの雑食や所衆、そして官吏たちの心配そうな視線を浴びて、天彦は“あうあうう゛う゛う”と言いながら、それでも気丈に参列した。


「ええか新参さん。お勤めにはぎょうさんの決め事があらしゃいます。いっぺんだけしか言わしゃりませんので、よくよく頭に留め置くように」


 序列一位極﨟、曰く


 殿上の間(天皇の居空間)南西の立蔀辺から蔵人の後につづいて入り、履脱(下駄箱)で履物を脱いで昇殿し、小壁下(殿上の間西北)に居し、日給簡をつけたあと湯漬けを食す。

 その後宿直し、翌日早旦に日給の運びとなる。つまりこの儀式を以って天皇と新任蔵人の直接主従関係が殿上の間にて結ばれたのである。


 その他新任蔵人が殿上の間に着任している間に、天皇や大臣が来れば素早く座を起つこと、小板敷に待機している間に上卿・貫首等が来れば早く地に下りること。命令あれば素早く答申すべきこと。殿上奥座は往反すべきでないこと。石青璅門を通らず殿上東戸を往反すべきこと。物忌に参籠する者は殿上口の立蔀辺で報せ日給を給うこと。忌月には殿上の琴と御蔵に納め殿上において歌遊を慎むこと。――などなど。


 他にも無数に延々と殿上のしきたり訓示を受けるのだった。


 説明の半分も頭に記憶されていないが、要するに忍耐を試されているのだろうと解釈し、天彦はうんうんといい加減にけれど顔だけは深刻そうに頷いておく。


 胸に、いつか覚えとれよ三流貴族どもの怨嗟を刻み込みながら。




 ◇




 弱すぎた。


 この無様な結果は選択ミスでも戦術ミスでもない。弱すぎた。その一言に尽きるだろう。それ以上でも以下でもない。

 天彦の脳内感想戦は二秒で手仕舞い。それちゃうで。の第三者俯瞰視線の横槍は入らない。


「痛っ、つつ……。もっちぃ、ちゃんと塗ってくれてる」

「文句言わはるんやったらしいひんけど」

「あ。でも文句とは違う」

「文句や。はい、これで仕舞い」

「いたあ」

「よう弾正さんらに取り押さえられへんかったもんやね」

「ほんまに、痛つっ」

「今晩は腫れそうやね。宿直やし丁度よろしかったやん」

「もっちぃ、丁度の使い方に異議ありや」

「ふうん。で、ほんまにその呼び方で通さはるん」

「はるん」


 打ち身に効くらしい湿布薬を張ってもらった。気休めだろう。

 だが骨と内臓のダメージを避けられたのは救いだった。思想とまで言い放った主義に反して暴力行為に走ったのだ。この程度のペナで済めば御の字だろう。

 この時代、内臓の負傷は文字通り致命傷となってしまう。


 天彦がジト目交じりに男子やったら加勢するやろ。の八つ当たり感情で以々をさも恨めしく見つめていると、


「天ちゃん、むちゃくちゃカッコ悪かったよ」

「っ――、知ってる。もっちぃは案外辛口批評家やねんね」

「そやよ。でも度胸は認める。麻呂やったらよう向かって行かれへんかった」

「なんで」

「後ろに五位蔵人さん居てはってん」

「五位……?」

「勘悪いな。清華家の大炊御門経頼さんやん」

「……!」

「そう。あいつらわざとらしかったやろ。蔵人来はるゆうて」

「そやった。つまり後ろ盾、ってことか」

「うん。麻呂はそう思う」


 手下のサイドキックスにボコられた。口惜しさが倍増する。

 だがこれで三流公家が跳ね返っている理由がわかった。なのに天彦は鼻白む。

 むろん瞳に宿す小さな灯は消さないが、やはり気弱にはなってしまう。

 実家があれでは。公家も同様、武家と同じく戦っていた。それが血飛沫を上げないだけで水面下では暗闘しているのであった。


 そして天彦ぱっぱ。尾張上総守に鬼すり寄り中。すり寄るのにあまりにも必至過ぎて仕舞には天彦にまで、いったいどうやって四郎勝頼を口説き落としたんやと詰問攻めが鬱陶しい。しかもネタを売る気満々まんで。

 それは実益も同じやが。実益はさすがに種を明かしても売りはしないだろうけど、かなりしつこい。


 たった四文字。ぽろっと零しただけやのん。

 文章に起こすともう少し長うなるかも、やけど。しれてるわ。


 と、天彦。扇をばちりと打ち鳴らし、


「本家がどうしようもない落ち目や。身共はこんなんやし。どうやらしんどいお勤めになりそうやな」

「お可哀そうさん。でも、それでもどこか他人事のように聞こえるんは、やっぱし器さんやからなんやろうか」

「なんや器って」

「勾当内侍がゆうたはった。菊亭のお狐さんは天下を揺るがす器さんやて」


 好子さんさぁ。


「買い被りやでもっちぃ。あとその噂話も身共が絡まれた理由の一つや。ほどほどにしたって欲しいかな。義理の姉御前なんやろ、伝えてほしい」

「ん? 天ちゃん絡まれたん」

「見てたやろ」

「うん。自分で向かって行ってたけど」

「ま」

「ま……?」


 そうともいう。なので天彦は視線を逸らした。


 さて新参の新蔵人参朝に、やれる仕事ははっきりいってあまりない。言葉を飾らないならまったくない。すると暇。お仕事はこれから拝舞舞踏を行うだけ。

 そして契りの湯漬けを馳走になって宿直。明日の朝、夜が明けるまではずっと暇。つまり暇。そういうこと。

 あとは忍耐を試される。天彦の予感は見事なまでに的中していた。


 周囲が気を利かせてか待機中の所衆や六位以下の官吏たちは天彦を遠ざけてくれた。配慮してくれたのかどうかは歴史が解き明かしてくれるとして、どうしたものか。一張羅の束帯がぼろぼろになってしまった。これはさすがに想定外。


 衣服とは単に着るだけにあらず。正装で威儀を正しているのだ。知ってる。でもこれでどない正そかな。うん無理っぽい。


 と、そこに。


 たたたたたたっ――っと、オノマトペが幻聴されほど軽快な足取りで走り寄ってくる幼児の姿が目に飛び込んだ。

 まさか。思ったと同時に天彦は飛び起きて両足を踏ん張り両手を広げた。

 その幼児は何を思ったのか、思わなかったのだろう。まさかの全力ダイブを決行した。天彦の胸もとをまっしぐらにめがけて。うぉ――っと。


「おにいさんっ!」


 え、誰。


 知らん知らん。


 と、口が裂けても言えない窮屈さを、この小さな体は全力で発散していた。

 言えば秒で泣かれるだろう。そういう恐怖感的窮屈さだ。天彦はそれほどの親愛の笑顔を向けられていた。


 あ!


「孝子ちゃん」

「ちゃん、おいとぼいさんやわぁ」


 お気に召されたのでもう一度。


「孝子お姫ちゃん」

「ちゃん、なんでこんなかわゆいん。ちゃんなにさんであらしゃいます」

「何さんやろか。……あ、失礼さんであらしゃいました」

「かまわへんよ。でも基子なん。おにいさんお驚きさんでおめめくりくり。おいとぼいさんやわぁ」

「あ、ハイ」


 目、腐っ、曇ってるんかな。身共の目がかわいいとか。あり得んやろ。

 何でもおいとぼいさん(きゃわ)な時期なのだろうロリキッズは大蔵卿持明院基孝の娘、新内待五位の基子であった。

 齢六歳。だがいって五歳。あるいは四歳。天彦目線でもかなりのロリキッズである。


「新内待さん。どこにあらしゃいます」


 侍従が探している声が響く。基子ちゃん、しーじゃない。身共死ぬから。社会的にも物理的にも。郎党も巻き込んで。


「またいつでもおめもじ叶います。どうぞ今日は」

「そう。でもわらわ、しぉしぉえ」

「……」

「せっかくおめもじかなったん、なんや淋しいさんやわぁ。しくしく」



 ふーん。



 …………、



 まあ別に。



 …………、



 キッズやったらこの程度…………、



 普通やろ。



 …………。



 うん、



 かいらしいな。くらいにしとこ。



 ほんまに助けた甲斐ありました。リアルに傷も癒された気がする。気のせい。

 だが悦んでばかりもいられない。天彦は悲壮な声で基子の行方を捜す侍女に……、悲壮とは。

 悲壮なはずの侍女さんはどこか緊張感のない顔で声だけで懸命に緊迫を演じていた。声だけ必至で探し回っている。下手すぎん。

 この場所にはもう他に探す箇所はない。つまりそういうこと。ありがてー。


 基孝ぱっぱに心からの感謝を送って、演技派侍女に声をかけた。

 耳元でそっと基子の居場所を告げるついでにお礼も忘れず。


「おおきにさんでおじゃります。御大によろしくお伝えくださりませ」

「はい。お世話さんであらしゃいます」


 侍従に別れを告げ、目線を平行に。


「おにいさん、ご機嫌さんであらしゃります」

「ごきげんようおじゃりまする」


 可愛く振られる小さな手を見送った。

 ずっと見送っていると、


「見とったで」


 え、どっから?


 違う。機嫌よう終わらせてくれや。

 イラっとしながら聞き覚えのある声に振り向くとやはり。序列三位・氏蔵人、大江俊直だった。


「大江さん、それがどないしはったん」

「どないもこないもあるか菊亭。これは由々しきことや」

「由々しきとは、はて。身共の義妹におじゃりますけど」

「ぬけぬけと。不敬やろ。お前が新内待と兄妹さんやったら、麻呂は上臈局の御落胤さんか」

「そっちのがめちゃくちゃ無礼やん。そんな恐ろしいこと、ようゆわはるわ」

「お前がな。ふはは、さぁ大変さんの出来やで。どないする気ぃやろな」


 天彦は巻き込まれたらたまらないの一心で伝えたのだが通じない。

 さすがは貴種。実に愉快そうに宣うのであった。










【文中補足・人物】

 1、五位蔵人

 >大炊御門経頼おおいのみかど・つねより弘治元年(1555)数え15歳

 藤原北家師実流、家格・清華家、十七代当主、正五位上蔵人、家紋・菱に片喰、家業・神官伝奏


 2、六位蔵人

 >序列一位・極﨟(ごくろう)

 中院通勝なかのいん・みちかつ弘治二年(1556)数え14歳

 村上源氏久我流、家格・大臣家、家門・六つ花竜胆車、

 史実では伊予局と密通したため正親町天皇の勅勘を被り丹後国(舞鶴)に配流される。陰湿ないじめっ子。DQNともいう


 >序列二位・差次(さしつぎ)

 日野輝資ひの・てるすけ弘治元年(1555)数え15歳

 広橋家出身、中立派という名の日和見主義、またの名を無関心ともいう


 >序列三位・氏蔵人(うじくろうど)

 六条有雄ろくじょう・ありまさ弘治元年(1555)数え15歳

 村上源氏久我庶流、家格・羽林家、家紋・丸に笹竜胆、中院派サイドキックス


 >同序列三位・氏蔵人(うじくろうど)

 大江俊直おおえ・としなお永禄元年(1558)数え12歳

 地下人、家紋・三つ引き両、三代蔵人を務めた恩賞として堂上家に昇格した後の北小路家。猶、現在は最も貧しい一般的な貴家の一家。中院派のサイドキックス


 >新参・新蔵人

 菊亭天彦10、標的一号、

 薄以々12、標的二号


 3、下侍(しもさぶらい)

 清涼殿殿上の間にある侍臣詰所。畳敷きで炭櫃の設備があり侍臣游宴の場所でもあった。


 3.5、侍臣(じしん)

 君主のそばに仕える家臣、廷臣。


 3.6、廷臣

 朝廷に仕える家臣。頻繁に宮廷に列している人物。


 4、小板敷

 小庭から伝上の間にのぼるところにある板敷き。蔵人・職事らが伺候するところ。


 4.5、伺候

 貴人の傍近く参上すること。


 5、立蔀辺(たてじとみのほとり)

 縦横に組んだ格子の裏に板を張り衝立のように作って屋外に置いて目隠しや風除けとしたもの。用事のない場合の待機所にもなっている。(新参は主にここで待機)


 6、日給簡(にっきゅうのふだ)

 殿上に出仕する者の官位姓名を記載して上番する日を示した簡。


 6.5上番

 当番勤務に就くこと。


 7、日給

 日々の出仕者の出勤を確認し、その上日、上夜を集計すること。この集計のために用いられる表代わりになる簡が日給簡である。

 日給簡は殿上の間に設置された木製の簡で上中下の三段構成になっている。上から四位・五位・六位の官人の官位姓名が書き込まれていた。

 午前正刻(巳の刻または辰の刻・8~12時)に殿上の間に掲げられ、午後正刻(未の刻・14時)に絹の袋に入れて唐櫃に収められる。

 唐櫃に納められる前に出仕の手続きをしなければ不参と見做された、猶、出仕した者は放紙を自分の氏名の下に張り付け就労を証明した。(賄賂の質また多寡如何では代返可)















 

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