#04 僥倖をもたらす六花大落
元亀元年(1570)十一月十一日
大原則、生き残りたいなら英雄になってはいけないとして。
むろんだが憧れてもいけない。これが命の価値が一杯の白米より安い戦国室町を生き残ってきた天彦の教訓であり処世術である。
この教訓に照らすなら是知は……。
英雄に憧れているし今や時の人。菊亭徳川陣営にとってのもはや大英雄になってしまっているのだろう。知らんけど。
だが確実に言えることはひとつ。朝廷は菊亭の専横を許さないということ。朝廷というと誤解を招くので厳密に言う。枠組みに魔王様の意思意向が確と入り込んでいる、あるいは枠組みそのものが魔王の思惑尽くめである中央政権なら、鉄板よりも鉄板で菊亭の専横を許さないだろう。
徳川家康を殺しにかかっている時点で、この征西に含まれる副題は明らかなのだから。
余の意に沿わぬ者はすべて滅びよ。
そしてその最たる存在が菊亭のご当主。天彦くんなのであった。
故に魔王は天彦に通じるこの世のすべてを消し去る心算なのである。
と、天彦は憶測する。不確実だがかなりの確度で正しい見解だと思われる憶測を。
天彦が能力(笑)の片りんを見せすぎたばっかりに。覇王にはマストで必要な人材と思い込ませてしまったばっかりに。
つまり魔王は理が非でも天彦を手に入れたいのだ。菊亭家を取り除いた天彦単体を。むしろ天彦の翼である一門は邪魔くさいとすら思っていることだろう。確実に。
それはそう。何しろ彼らイツメンたちは、己(信長の)の意にまったく沿わないことが今回の解散劇で露見してしまったのだから。
信長公は自らの意に沿わない者は、たとえ大英雄であろうとけっして肯定しないのである。そう見せることはあったとしても。
魔王信長。日に日にその傾向が強くなりつつある。
よって妥当な判断として、是知の長野家を筆頭に旗印で名を馳せた三木城攻略の殊勲者たちは、その属する家紋まるごと族滅させられることだろう。意に沿わなかった見せしめに。
◇
卯の刻日出、明け六つの鐘が鳴ってしばらく。
「なあ是知、お前さんのはどっちなん」
そんな謎掛けめいた言葉をつぶやいて天彦はお目目ぱっちりで目覚めた。
果たして幾日ぶりだろうか。こんな爽快感の高い目覚めは。
そんなスッキリ彦は起き抜けに思う。
人生は喜劇か悲劇のどちらかである。とか。
脳内の是知にそっと問いかけてみたのだが。天彦の脳内おバカ知は、どう考えても悲劇。喜劇が過ぎて一周回って大悲劇のイメージしか抱けないのである。
むろん自分のは悲劇である。あって欲しいと願いつつ、寝ても覚めても絶対的禁忌を犯した是知と佐吉の処遇のことばかりつい考えこんでしまう。個人的所感ならば八割方腹は決まっているのだけれど。
もちろんだが旧上司や旧雇用主の立場の感情も加味しなければならないので二割の迷いの中にある。どうせ血の通う肉親レベルの判断しか下せないくせに。という異論は絶対に受け付けないとして。
故に天彦は是知の未来を案じるあまり、
「六刻しか眠れなかったん」
正確には11時間と飛んで40分なのだが、心配のあまりおよそ12時間しか眠れないという使い古されたお約束の冗句を飛ばしてさて。
天彦は果たして幾日ぶりだろう爽快感の高い目覚めによって出るのはうん〇ではなくキレのある軽口で草。と自嘲しつつも。一日の始まりをオモシロ演出で始められることに喜びを感じずにはいられない。
やはり感謝か。バカな家来の身勝手な突貫になど感謝したくはないけれど。
それはそれとして一旦は感謝しておく天彦は、すでに占領接収されているだろう三木城に向かう支度を始めた。
「貴重なたんぱく源摂取を持ち越しにされたんや。いずれにせよ罰は下さんといかんな」
牡丹鍋パ延期の恨み言をつぶやくことも忘れない。
だがこの世のすべてに感謝の言はほんとうである。食の恨みも。
特に食に関してはかなり感謝を覚えている。
目下、時代は小氷河期である。作物の育ちは当たり前によろしくない。当然だが飢饉は頻繁に起こっていて、餓死者が未来の現代令和時代の交通事故死者を軽く凌駕する勢いで出てしまっているのが現状である。
こればっかりは如何な未来人発想を持つ天彦とて如何とも抗えない。自然の猛威は圧倒的であった。
よって公家であり際立った貴種である天彦は自身が比較的どころか相当優遇されている自覚があるだけに、食に対する感謝の度合いは他の同類とは比べ物にならない。
そんな細やかな感謝のリアクションの一つ一つが家人の、主に側近イツメンたちのインプレッションを爆上げさせていることはちょっとしたご褒美だろうか。知らんけど。
「整いましてございます。本日はお寒うございますので少々我慢くださいませ」
「おおきにさん。確かにさぶい。ときに夜申、ボケ担当とユーティリティ担当の二人はどないしてるんや」
「ぼ? ゆ? ……あ、へ、えと」
「ちなお前さんはビジュ担当や。申しておくがこれは身共の発想やない。お前さんらのボスの言葉や」
「び、び何でございましょう。もう一度下さいませぬか」
「厭やろ笑」
「そんなぁ」
ウソ松である。
ルカは夜申を“我が射干党の誇る知能担当です。御傍にお預け致しますので何卒大切に育ててください”と言った。
意味のない嘘でルカの手下一号(夜申)を困惑させた天彦は、愛用の扇子をぱちっと弾いて満悦の笑みを浮かべた。そして皆が待つであろう経堂に向かおうと私室を出ると、
「まんじ」
天彦は目性がよろしくないと評判のお目目をぱちくり二度見ならぬ三度見をして驚嘆を現わす。
それもそのはず。さすがに小氷河期と言われる中世でも季節外れの雪が降っていたのである。ともすると視界を覆うほどの。勢い的には完全に降り積もるレベルの降雪である。
廊下で待機していたのだろう与六に“おはようさん”と挨拶の言葉をかけてからぽつり。
「なるほど寒いはずや」
「時期外れの六花ですな」
「え」
「ん? 某なにか失言がございましかたな」
「あ、いや。普通にびっくりしただけなん」
「びっくり。はて、殿を驚かせるような言。某はいったい何を……」
心当たりがない与六は真顔で頻りに頭を悩ませる。当り前だが与六が雪を風流に言い換えたことに驚嘆したのではない。
この顕微鏡の無い時代にすでに雪の結晶が六弁の花の形をしていることが知られている事実に普通に驚嘆していたのである。
天彦はこういったところもやはり自分は戦国人を心の片隅で侮っているのだと自戒の念を込めてトリビアを披露することに決めた。
上司として尊敬されたい一心で大人げ、いや子供げない負けん気が脊髄反射で発動しただけとも言うけれど。
但し言葉遊びで挑みかかる愚を犯さないだけまだお利巧さんであった。
なにしろ与六にはそれで再起にかなりの時間を要するほどバッキバキのコテンパンに伸された苦すぎる過去があるのだから。
「都でも大落してることやろう。本来なら本日は初雪見参の儀やな」
「はっ」
「知ってるか与六。日ノ本の降雪量は世界一なんやで」
「世界に、ございまするか」
「そうや」
現在も未来も。天彦はやや顎を逸らして得意がった。
だが、
「はて。彼我の比較はいったいどのように行ったのでござろうか。まさか各地で雪を浚い集めるなどという無駄骨は折らぬであろうし。……わかり申さぬ。殿、後学のために何卒ご教授くだされ」
「あ、うん」
それはね。観測機器という名の質量を一瞬で計測できる超音波なんやで。
粋り彦はこんな簡単な理由が説明できないもどかしさに震える。フィジカルもメンタルも。これも地味だがそこそこ効かされる戦国あるあるであった。とか。
「姫路よりお使者が矢の催促で参っておりまする」
「あれほど拒絶しておったのに今度は会えか。都合のええことやなぁ。待たせといたらええさんや」
「はっ。ですが殿、先伸ばしにも限度がございまするぞ」
「わかってる。今日明日にでも後宮からも参らはるやろ。賑やかな方々が」
「では」
「ん。腹は決まったん」
「如何様になさいまするか」
暗に是知たちの処遇を問うてきた与六に対し、天彦は迷いのないレスを返していた。どうやら方針は固まったようである。
どこか吹っ切れたような表情を浮かべると、そこで視線を左やや後方に向ける。
「ルカ」
「はいだりん」
「総動員でかかってほしいん」
「久々の悪巧みにございますね。腕が鳴るだりん」
「真面目にせえ」
「異なことを。ルカはずっと大真面目にございます。それで何と喧伝致しましょう」
「星が降った」
「え」
「星が降った。正親町天皇さんの崩御に天が涙なさったんや。いや違うな。権大納言の祈祷によって先の主上がお怒りになられた。これやな」
「星が降る……、でございますか」
「そうや。名付けてメテオストライクの巻。見映えよく字を当てるなら流星雨でも彗星大瀑布とでもしておくがええさんや」
「ですが」
「四の五のは要らん。せえと申したらそのように致せ」
「はい。ですが一言。朝廷に刃向かう賊の討伐を先の帝に御祈願なさったのですね。神仏にではなく」
「そうや。何とありがたいことか。先の主上は天に御座しても寵臣のお強請りを聞き届けてくれはるんや」
「……お殿様、それではせっかく持ち直したお殿様の悪風がまた」
「お休みになられるためお隠れになられた主上まで扱き使うか。くくく、まったく身共らしい節操のなさやな。でもこれで主上さんとの貸し借りはチャラや」
「お殿様、笑いごとではございません」
「笑いごとやろ。死しても貸しを剥がしに参る悪徳土倉も真っ青なやり口。そら世間もさぞかし眉を顰めることやろうなぁ」
「ご存じならご再考を。これを許せば是知は必ず増長します。ここは腹を召すべきだりん」
「ルカは是知嫌いすぎねん」
「……否定はしませぬ。寄る者すべてを抱え込まれるお殿様の器量にもほれ込んでおります。ですが」
「皆まで申すな。身共は決めた。霜月に六花大落の異変がおこるんや。星が降っても不思議はない」
いやそれは……可怪しい。
さすがのルカも言葉を失う。信じられないことが問題ではない。仮に信じられてしまった方が問題なのだ。
ルカからすればおそらくはそちらの方の危惧が強いのだろう。そうなればただでさえ異端児だの小魔王だの悪鬼羅刹だのと揶揄され不気味がられている天彦の存在が益々人外染みてしまう。
そんなルカの心情など知ってはいても一顧だにしない天彦は呑気に、
「朝廷対策は実益に丸投げするとして。御実城さんにお手紙書こうっと」
自分勝手な都合を算段していた。
ルカの表情がちょっと見過ごせないレベルで怜悧さを増してゆくのも気づかずに。
ややあって、ルカは務めてシリアスなトーンで天彦の名を呼んだ。
「お殿様」
「ん、なんやルカ。念のため謙信公にも文を届けた方がよいかもしれんと考えたが不要か」
「違います。お殿様」
わかっていたが向き合いたくなかった。
だが許してはくれないようで。これだから女は。
天彦はあえて偽悪的に主語をどでかくすることで直面する危機から回避できたらいいなぁの感情で不承不承ルカを視界の端に納める。
そしてお得意のどこか人を食ったようなそれでいて生まれ以っての権高い風格を纏って気障に言う。
「炎上も燃料や。身共にはお前さんらが居ったらええ。お前さんら一人一人がお宝さんなんやで」
「いんちき」
「いや語彙崩壊!」
「そうやって悪ぶっても無駄です。ルカはぜーんぶ知っております」
「う。……ルカ、我が唯一無二の寵臣さん。今回は目を瞑ってほしいん」
「お殿様はいっつも。……それはズルいだりん」
「ふふふ、知ってるやろ。身共はずーっとズルいんやで」
「もう! 知らないから」
「あれ、みーんな知ってるんと違うんか」
「もうバカ! お殿様なんて知らないんだからっ」
「ふふふ、それは重畳。与六」
「はっ、ここにございます」
「この際や。播州仕置き、一気に片をつける心算や」
「では攻略の目星をつけられたのですね」
「そうや。答えは思いの外近場にあった」
「それは重畳。この扶に何なりと仰せくだされ」
「まだそう申してくれるんやな」
「何を仰います。水臭い」
「うん」
天彦はファンモンのジャケ写もくすむほどの眩さでにぱっ。
だが瞬間的に表情筋に喝を入れて、
「荒事は頼んだ。ほな参ろうさん」
「はっ」
これにて始末はつけた。
天彦は阿呆どもの雇用主としてすべての悪評は背負うと決めた。
そして攻略の手がかりをつかんだのだ。こんな好機を逃してなるものか。これを逃すようでは狐の名は返上する。
狐の汚名などあるいは一日も早く返上したいのだがそれはこの際、この一件は案外姫路勢にとっても渡りに船ではないかと天彦は推測している。
和睦をするには諸条件整うからだ。それはこれから蒔く噂が上手く広まってくれれば猶更条件は整うはずである。何しろ先の主上のご意向なのだから。
あるいはあれほど表に出ることを渋っていた大軍師殿直々に足を運んで和睦を申し出てくるまであると踏んでいる。
何しろこの膠着状態は双方ともに益があまりになさすぎるから。彼らにとって単なる延命に過ぎないのだから。
残すは無理を突っ張る理由さえ摘み取ってやれば、あるいは全面降伏だって視野に……。
「くふ。道筋は見えた。確と光明となって一条の太い道筋が」
そして天彦はそこから先の言葉は言葉にすることやめて脳内にとどめる。
何しろ儲かるというワードを発声した瞬間、貧乏神に憑りつかれてしまうので。
これで家康さんに大きな貸し一つや。結果儲かったったん。
「でかしたでバカ知、くふふふ」
果たして儲かるのかどうか。
捕らぬ狸ならぬ狐の皮算用彦は意気揚々とバカ知と佐吉と、そして誰か知らん大バカ者を引き取りに三木城へと向かった。
◇◆◇
天守丸ごと爆裂消滅した三木城址。
「いやはやしかし魂消た。やはり物凄いの。これが上方の戦か」
「阿呆め。そんなはずがあるまい」
「氏ね!」
「む。ならば菊亭様の。さすがは音に聞こえし菊亭様じゃ」
「阿呆め」
「氏ね!」
心底から魂消る悪四郎と、それに呆れる佐吉そして是知の姿があった。
「おい待て。先ほどから口を開けば。阿呆はまだしも死ねは酷かろう」
「酷いのは貴様であろうが! 絶対にけっして撃つなと申したであろうがっ」
「……まあそれは。がはははは、ちょっとした手違いじゃ。それにしてもこれが爆裂砲。殿によい土産話ができたな。もはや帰ることは叶わぬが。わっはっはっは」
阿呆め。氏ね。
是知は不謹慎ワードを連発し佐吉にいたってはもはや会話をする気すら失せさせてしまっていた。
彼らの出会いは物集女賊討伐にまで遡る。
そう。是知佐吉コンビはまんまとミッションをしくじっていた。
まんまと賊にとっ捕まり、身ぐるみ剥がれた上に武士の命である髷まで奪われ風前の灯であったところを、別件で賊討伐依頼を受けていた名もなき冒険者パーティーに救出されたのである笑。
『お主らが音に聞こえし菊亭様の、一、二を競うお家来殿とな。それはさすがに信じられぬ』
『何を貴様。着いて参れ。目に物見せてくれる』と是知。
『どこに参るのか』
『黙って参れ』
『特等席にござる』と、佐吉も同意し現在に至る。
『ふむ。なんぞ楽しそうではあるな。よし参ろう。案内せい』
『氏ね』
『しばく』
こんな感じで今に至る。
そしてそこには捕らわれの野良ギークもいて。
『おお扶様。御無沙汰しております』
『誰じゃお前』
『ひどっ。まあいいです。使用感を試したい新兵器があるんですよー』
『射干のイカレか。ふむ、だがさすがに試すはできぬと思うぞ』
『えー』
『じゃが付いて参れ。ひょっとすると機会が参るやもしれぬ』
『やた』
この邂逅こそが最悪の化学変化を起こす引き金となったことはもはや語るまでもないだろう。
是知一行は最新式の12.7ミリ口径重機関銃50艇と、地揺れの原因である携行式にまで小型化された最新鋭ロケットランチャー12門を携え戦場へと赴いたのである。
そして紆余曲折を経て征西に参戦したのだがこの始末である。
一斉掃射の破壊力は御存じの通り。けっして世に放ってはいけない威力とだけ言っておく。チートが過ぎた。
閑話休題、
日常とあまり区別はつかないが見る者が見ればどことなく深刻な表情で深刻ぶっている佐吉に向かい、是知が言葉をかけた。
「む。石田、何をしておる」
「何もへちまも我ら腹を召す以外になかろう」
「いや待て。殿ならば必ずや――」
「待たぬ。必ずやお救い下さるからこそ我らはここで逝かなければならぬ」
「のう石田。美学に逝くなど、それではまるで侍ではないか」
「侍じゃ! 貴様、聞き捨てならぬぞ」
「ふっ、やっと声を荒げたな」
「お主……」
ここに至るまでには様々な苦難を共にしたのだろう。かつては水と油であった二人にもある種の友情が芽生えていた。
こちらも非常に読み取りづらいが是知はまったくらしくなく、これまで一点を見つめ思い詰めていた佐吉の感情を大きく揺さぶることによって思いとどまらせようとしたのである。
「佐吉」
「なんでござろう長野殿」
「佐吉」
「長野殿」
「おい、某は佐吉と申したが」
「だから長野殿と応じておろう」
「あ」
「あ」
くふ。
くく。
佐吉が小さく笑った。是知もこれには苦笑いを浮かべてしまう。
「儂に預けよ。この責は政所扶である某が請け負う」
「何を申す。お主、とっくにお役は解かれておろう。いやそも暇を出されておろうが」
「理屈はよい。あと間違えるな。某はけして解雇はされておらぬ。殿曰くレンタル移籍じゃ」
「好きにいたせ。でだがその理屈を曲げたから今があると某は思うが」
「黙れ」
「問いかけてきたのはお主であろう」
「やはり貴様が嫌いじゃ」
「奇遇にござる。某も同意見なれば」
「なんじゃと」
「なんでござろう」
「あ」
「あ」
主従のやり取りを近場で見すぎてきた二人は、堪らず“くくく”とこぼしてしまう。
相好を崩しては喧嘩の神毘沙門天もそっぽを向くとしたもので。
「佐吉、儂に預けよ。悪いようには致さぬ」
「どの口で。……ですがよろしかろう。先の政所扶殿に某の身体お預け申し候」
「ん。それでよい」
話がまとまり友情も一レベル上げたところに、
「おい是知、佐吉。儂も仕官するぞ。推薦いたせ」
「誰が是知じゃい!」
「誰が佐吉か。慣れ慣れしい」
「ん? 儂のことは忌憚なく悪四郎様と呼ぶがよいぞ」
「呼ぶものか」
「氏ね」
どうやらこの二人を介して菊亭は、悪四郎のお眼鏡に適ったようであった。とか。
と、そこに。
「おい菊亭家の大うつけ者。権大納言様が参られたぞ。お出迎え致せ、覚悟はよいな」
「誰が大うつけ者か!」
「貴様がじゃ。ほれ参るぞ」
接収担当を請け負った徳川家の重臣が慣れた風に言葉をかけていることに大バカ者は気付かない。バカだけに。
あの他と慣れない大武辺集団が慣れた風に接するその意味を、大バカ知が理解するのはこのあとしばらく経ってからのことであるとかないとか。
【文中補足】
1、初雪見参
平安時代からつづく初雪の降った日に宮中へと参内する儀式。元亀現在すべての儀式が見送られているので廷臣の招集はされない。
ルカ親衛隊
>夜申(よざる) 知能担当(ビジュ担)
>昼戌(ひるいぬ)完全ボケ担当
>朝熊(あさくま)ユーティリティ担当
最後までお読みくださいましてありがとうございます。
誤字報告、高評価でのご声援たいへん励みになっております。いつもありがと。ばいばいまったねー




