表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/252

第65話 救済の始まり

 ~組長さん宅を訪問した翌日~


 滞在可能時間が、すでに50時間ほど過ぎていると思われる。


 現在白凰組1階の応接間で、私たち2人はコーヒーを飲んでいた。

 姫野さんが座るソファーの後ろには、若い組員が全員後ろ手を組み4人並んで直立している。


 ちなみに組員の人たちも私の魔法を目の当たりにしており、全員「 魔法使い 」という存在を受け入れつつある状態だ。1人1人が完全に信じているかどうかは私には判らないが・・・


「 何だかバタバタしてて聞くの忘れてましたけど・・・姫野さんの命を狙った奴の目星は付いてるんですか? 」


「 ああ――そりゃあ対立しとる組の鉄砲玉か、外注のモンじゃろうなぁー 」


「 外注? 」


「 ああ、殺しを生業にしとる奴らじゃ 」


「 なるほど。殺し屋ってヤツですか・・ 」


 姫野さんは妙に落ち着き払っている。


 自分の命が四六時中狙われているかもしれないのに普通に外出してるし!

 周りもそれを止めようとは基本的にしていない。


 組員や組長さんも含め、皆一体どういう神経をしているんだろうか・・・


          ▽


 日中の街中では派手な襲い方は絶対にしてこない――と、姫野さんは豪語していたが・・・

 謎過ぎる。


 別に派手なドンパチじゃなくても、殺し屋が動いているなら――事故に見せかけるとか、毒殺とか、遠距離から狙撃される可能性だってあるはずだ。


「 確かに真夜中とかよりは昼間の方が比較的安全なんでしょうけど・・・でも何か対策は考えているんですか? 」


 私の質問に対し姫野さんはコーヒーカップを静かに置き、ふむ――と、顎に手を添え考え始めた。


「 う~ん、いや――な~んにも考えとらんわー 」


「 はぁ? それで大丈夫なんですか? 幾ら何でもヤバくないですか? 」


 ――何だかこの感じの似たようなやり取り・・・以前、誰かとした気がするわ。あの時は逆の立場だったような。気のせいか?


「 だってよー、ジタバタしたって始まらんじゃろう? コソコソ後を付けて来て背後からいきなり撃たれたら防ぎようがなかろ? 人間死ぬときは死ぬんじゃ! ワシのようなハンパ者でも極道の矜持ってモンはあるけんなぁー。ワシは常に堂々としておきたいんじゃ! 」


「 いや、確かにそれはカッコイイ精神だとは思いますけどねぇ・・・ 」


「 もし死んだら――春乃さん。生き返らせてくれえや! 」


「 そりゃ蘇生魔法くらいかけますけどね。昨日も言ったように頭部に著しいダメージとかがあったら蘇生が無理かもしれないので、縁起でもないかもですけど、もし、もしもですよ? もし死を覚悟した時は頭部だけは絶対死守してください! 運よく姫野さんの死体を回収できたら、間違いなく私が生き返らせますので 」


「 おお! 了解じゃ! 」


「 とりあえず気休めかもだけど――これをかけておきますね 」


 私は姫野さんに対し、右手をかざし魔法名を唱えた――


女神の盾(アイギスシールド)! 」


 姫野さんの上半身から、カイトシールドのような盾の形をした光の紋章が突然浮かび上がり、即座に掻き消えた。


「 おお! なんじゃこりゃあ! 」


「 残念ながらダメージを完全にゼロにすることはできないみたいですが――ある程度のダメージなら、ほぼカットしてくれる不可視の魔法盾です 」


「 ほほう! 眼では見えん防弾チョッキみたいなモンかのぉ? 」


「 ああ、そう考えて頂いて差し支えないかと思います。でも過信は禁物ですよ? 」


「 おお、わかっとる! でも、これはどんくらいの間もつんじゃろうか? 」


「 う~ん・・・厳密には分らないですけどね。検証したわけじゃあないんで。どうしても曖昧な感じにはなっちゃいますけど。多分ですが、他人にかけた場合でも四日~五日くらいの間は効果が切れないはずです 」


「 おお! 結構長いんじゃねぇ~ 」


 姫野さんは、広島弁特有の語尾で素直に感心していた。


「 念のため、皆さんにもかけておきますね 」


 そう言って後ろに並ぶ4人にも順に魔法障壁を付与した。


          ▽


「 それはそうと春乃さん。ワシに頼みたいことって何なんや? 」


「 あ~例の電車脱線事故のですね、被害者の人を治してあげたいなって思ってまして。私がこっちに戻って来れたのには何か別の意味とか、もしくは私をあっちの世界に呼んだ人が企ててる――まだ私が知らされていない目的とかあるのかもしれないけど、とにかく今私ができることは、あの事故で怪我を負って苦しんでる人たちを救うことかなぁ~って考えてまして 」


「 そりゃあまた殊勝な心掛けじゃのぉ。で――ワシらに被害者の所在を調べて欲しいってとこか? 」


「 そうですね。死亡した人は流石にもう骨になってるだろうから蘇生は無理だろうけど。後遺症に一生悩むぐらいの傷を負ってる人は、何人もいるはずですから―― 」


「 ふむ。しかし全員治しとったらとんでもない時間と労力がかかるんじゃあないんか? それに下手すると春乃さんの超能力が世間にバレる可能性も高まるじゃろ? 今や国民全員がカメラマンじゃけぇなぁ 」


「 ああ、数か月で完治するような傷を負ってる人は、申し訳ないけど除外します。現代医学でも完治はしない――たとえば腕や脚を失ってる人とか、もしくは後遺症でこの先長い間苦しむであろう人だけ治そうかと・・・それならそんなに人数はいないだろうし、現実的かなって思いまして 」


「 ふむ――、なるほどのぉ。了解じゃ! うちの組員総出で協力させてもらうわ。お前ら、今聞いた通りじゃ! すぐに調べを始めろや! 」


「 はい! 」


 後方に控える若手組員たちは、姫野さんの号令を聞き即座に部屋を出て行った。


「 それと多分ですけど、もう既にこっちと向こうを行き来できるようになってると思うんですよね。なので、いつまでも姫野さんに金銭的な負担を掛けるのは忍びないので・・・これを【円】に換金できないか調べてもらえませんか? 」


 私は革バックから小袋を取り出し――テーブルの上に静かに置いた。


 すぐさま、姫野さんが鷲掴みのまま自身の眼前に引き寄せる。


「 これは、向こうの通貨か? 」


「 そうです。金貨なのでこちらでも換金できるんじゃないかと思いまして・・・金の価値は世界共通なんでしょ? 」


 姫野さんが小袋の口を広げ、一枚の金貨をつまんで中から取り出した。


「 おお! まさしく金貨じゃなぁ! 任せとけ! こういうのはワシの得意分野じゃけぇ! 」


「 ありがとうございます! 」


「 おお! そういや忘れるところじゃったわ! うっかりしとった・・・ 」


 突然姫野さんが、応接間に設置されている机に廻り込み引出しを開けた。


 そして、手にスマートフォンを持ち戻ってきた。


「 これを使うてくれえ! 真っ(さら)の状態じゃけぇ。設定とかなんやかんやは、自分でしてくれぇや! 」


「 おおお! ありがとうございます! 文明の利器からは随分と縁遠い生活をしていたから、何だか感動しますね―― 」


「 はっはっはっ! これがワシらの電話番号のリストじゃわ。後で登録しといてくれぇや 」


「 はい! 」


 どうやら組長をはじめとする――主要な構成員の連絡先が記載されているのであろう一枚の紙を手渡された。


          ▽


          ▽


 ~午後19時10分~


 まだ陽は落ちていない。

 だがそろそろ薄暮の時間だ。


「 春乃さん。リクエストがあれば遠慮なく言うてくれぇ! 希望に()った店に連れて行くで! 」


「 ん~パスタも食べたいけどなぁ・・・でもやっぱお肉かな! 」


「 はっはっはっ! そう言うと思うたわ! 」


          ▽


 本通りと呼ばれる商店街で、新しいスニーカーを買ってもらった。

 そしてまたしても焼肉をかっ食らうべく――先日ご馳走になった同じお店に向かっていた。


 この時はまだ――私たちを尾行している存在に全く気付いてはいなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ