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第61話 オプティックブラスト

 ――そーいえば、ポータルを発見したら、私の中に予めセットしておいた魔法が反応するとか何とか言ってたような?

 

 後はその選択に従えば良いとか何とか

 

 そんなことを言ってたような・・・


 ――あれか? あの声か? あの脳内に突然流れた・・・あれが予めセットしておいたという魔法の効果だったのか?

 

 つまりあれか?

 デスラーを倒したことにより、ポータルを形成するに足る魔力が確保できたってわけか?


 ――直後元の日本に飛ばされた挙句、姫野さんが撃たれるというトンデモ展開のお陰で、細かいことは完全に失念していたわ・・・


 ――しかし、一体何のために?


 ポータルってのが、別の世界同士を繋ぐ魔法だと仮定する。


 最終的に魔法として「 ソレ 」を私自身に落とし込むことが――、デュールさんにとって、一体全体どういう意味とメリットがあるのだろうか?


 最終的に、私に何をさせたいのか?

 

 やはり目的が全くわからない。


 デュールさんが宇宙のために動いているのか、一つ一つの世界のために動いているのか、はたまたそれぞれの世界に生きる人類のために動いているのか・・・


 まさか、私個人のためってのは――絶対に無いだろうし。


 ――いや、考えても堂々巡りだわ。


 今はあの銀髪若作りおじさんのことよりも、眼前の問題を解決しよう。

 結局のところ、一つ一つ進むしかないのだ。


          ▽


 通路の両端に等間隔に並んでいる支柱の陰それぞれから――、影型(シャドウ)たちがズルズルと這い出てくる。


 今この場にいるのは――私とリディアさん、パルムさん、そして騎士団の5名のみだ。


 暁の軍隊の8体は城内を隈なく探索し――今なお敵を掃討するために、戦闘を繰り返しているはずだ。

 こちらへの同行は許可していない。


 すでに日は落ちている。


 本来ならば、闇の眷属の独壇場ともいえる魔の時間帯なのだろう。


「 ユーイングさん! 影型(シャドウ)に対して有効な攻撃手段とかあるの? 物理攻撃って効くのかな? 」


「 そうですね――、剣撃などの物理攻撃は効果がないと思います。ただし「 ギョッ 」っとさせることはできるかと。やはりここは、属性魔法が有効かと思われます。言わずもがな一番効き目があるのは、聖属性かと・・・ハルノ様の真属性は「 聖 」だとリディア様からお聞きしました。奴らにとって、ハルノ様は天敵中の天敵ということになりますね 」


「 リディアさんが? あー、デュールさんが私の聖属性をかなりレアだと言ってた――その話をしたからか・・・ 」


 ユーイングさんが突然膝を折った――


「 へ? 何? 突然・・・敵の眼前ですよ 」


「 あ、すみませんつい反射的に・・・やはりハルノ様は――デュール様の眷属であらせられるのだと思ったら、つい身体が勝手に 」


「 まぁ、目の前の敵に集中していないのは私も同じですが―― 」


「 え? 」


 ――そう! やっぱり変化した魔法、ポータル魔法が気になって仕方がない!


 完全な好奇心だけど、早く唱えてみたい!


 多分、別の世界への扉が開くんだろうけど。


 もう一度、元の日本へ行ける保証はどこにもない。

 

 でも! 期待せずにはいられない!


「 ――ノ様? ハルノ様? 」


 リディアさんが、正眼の構えを崩さぬまま私に囁いていた。


「 ああ、ごめんごめん! ちょっとまたトリップしてたわ 」


「 あ、いえ――、邪魔をしてすみません 」


「 え~諸事情がありまして――、早く決着つけたいので、いつも以上に本気でやります! 」


「 はっ、はい! 」


聖なる光球(ホーリーライト)! 」


 遠隔攻撃を警戒し、あえて光源は出していなかった。

 だがこの先の城内の構造を観察すると、もう遠隔攻撃を受ける可能性は皆無だろう。

 

 ギィ!


 ギィ! ギィ!


 眩い光が通路を目一杯照らし――、顔を出していた影型(シャドウ)たちは、支柱の陰へと完全に隠れた。


「 雑魚だな! 私にとってはただの照明に過ぎないこの光を恐れるとは! 」


 低位のアンデッドならば、この光を浴びるだけで消滅するらしい。


「 雑魚にかまってる暇はない! 」


 魔法名を叫ぶのが気恥ずかしいが・・・

 アンデッドに効きそうな――おあつらえ向きの魔法がある!


 一度試してみたかった魔法が!


聖なる光線(ホーリービーム)!! 」


 叫ぶとほぼ同時に――、私の胸辺りから極太ビームが射出される!

 無数の白光帯が、螺旋状に絡み合って形成された極太の光が!


 眩いパワーある光帯が、通路の壁を手前から奥へと舐めるように破壊していった・・・


「 うほお! すげえええ! なんちゅー威力なのよこれ! XーMENに出てくる、目からビーム出す人みたいじゃんよ! 」


 しかし――やっぱり恥ずかしい・・・


 デュールさんが私のために、とにかく解りやすい魔法名を付けてくれたわけだが、流石に恥ずかしい・・・

 もはや、幼稚園児がお遊戯の時間に叫んでるレベルやんか・・・


「 いや、気にしたら負けだわ。もうこうなりゃヤケだ! 」


聖なる光線(ホーリービーム)!! 」×3


 ヤケになった私は両手を広げ――前方に突き出し、ポーズを決めてビーム魔法を乱発した。


 ギィイイイィイイイ!

 

 ギィイイイ!


 漆黒の影どもは断末魔の叫びを上げながら――通路の壁ごと為す(すべ)無く蹂躙され、次々と消滅していく・・・


「 ハルノ様・・・城の壁が―― 」


 リディアさんをはじめ、この場にいる全員が絶句していた。


 その様子に気付き、私は一瞬で我に返った・・・


「 ヤバい――やり過ぎたかも・・・ 」


 両サイドの通路壁が、八割ほども崩れていた。

 信じられないくらい美しい夜空が、瓦礫の間から目に飛び込んできた。と同時に――、夜風が頬を撫でる。


 影型(シャドウ)と呼ばれる幽霊タイプの魔物数体は、跡形も無く消滅していた。


影型(シャドウ)を一瞬で滅するとは! ハルノ様に(やいば)を向けたこと――今頃になって寒気がしますよ・・・ 」


 またパルムさんがオベッカを使っていると思い、ツッコもうとしたのだが――、どうやら本気でドン引きしている様子だった。

 その証拠に、光源に照らされたその横顔は、思わず吹き出しそうになるほど顔面蒼白だった。


「 えー? でも雑魚っぽい見た目だったし、実際雑魚でしょ? まぁ、幽霊自体はやっぱ怖いけどねぇ 」


「 す、少なくとも――雑魚ではありませんよ! 」

 ユーイングさんが焦った様子で否定していた。


 とりあえずミルバートンを抹殺し、その後お腹いっぱい食べて、ふかふかベッドで眠りたい。


 そして明日の朝にはもう一度、「 ポータル魔法 」を試すんだ!


 また時空を移動できたとしても、元住んでいた日本に飛べる保証はどこにもない・・・

 いや、それも含めて試してみたいわけだが――

 もし飛ぶ先が固定されているならば――、やるべき事、やりたい事が次々に溢れるだろう。

 今はまだぼんやりとだけど、色々な計画が脳内に浮かぶ・・・


 別に、元住んでいた日本に未練があるわけじゃない。


 むしろ辛いことが多すぎた。


 だけど、この能力(チカラ)がそのまま向こうでも使えることは実証済なのだ!

 ならばやる事は一つ! まずは何をおいても救いたい人たちがいる!


 元の日本に飛べたなら、まずは姫野さんに助力を乞う必要があるだろう。


 正直、どう考えても一般人じゃない・・・

 多分――「 極道 」と呼ばれる人種なのだろう。

 そんな反社会的な組織の助けを借りることに、憂いや躊躇はないのか? と問われると――


 答えは、「 全くない 」だ!


 私は直感がとても鋭いと自分で思い込んでいる。


 数秘術においても、マスターナンバーの「 11 」だ。「 11 」の人は直感力だけで生きているらしい。


 私の直感力が、姫野さんは信頼できる! と私自身に伝えている。


「 ――ノ様? ハルノ様? 」


 またしても心配そうに――リディアさんが私の耳元で囁いた。


「 あっ! ごめんなさい。またトリップしてたわ・・・では進みますか! ミルバートンを殺すために! もはやどう考えても生かしてはおけないわ 」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ~~現代日本、中国地方~~

 ~~広島県広島市中区、白凰組本部~~


「 か、若頭(かしら)ぁ!! 血塗れじゃないですかぁ! 若頭(かしら)の血ですか?! 」


 白凰組の若頭である姫野は、組の二階の部屋に入るなり、組構成員の若者たちにドッと囲まれていた。

 若者たちは一様に驚愕し、心底――姫野の身を心配している様子だ。


「 朝っぱらから騒ぐんじゃねーわ! ワシは寝とらんのんじゃ! 夜通し運転して戻って来たんじゃからのぉ 」


「 も、勿論存じてます! 昨日は――島根のオジキんとこに行かれてたんスよね? でもその大量の血は? 喧嘩っスか? 怪我はありませんか? やっぱり、俺が運転手で同行した方が良かったんじゃ・・・ 」


「 あー? なんなら! ワシに意見するんかぁ? 」


「 いえ決してそのようなことは! ただ御一人で向かわれたのは、何か事情が御有りだと思うてたんですけど・・・その血と何か関係があるんスか? 」


「 まぁそう焦るな。組長(オヤジ)んとこで全部話す。組長(オヤジ)が易々と信じるとは思えんけどな! とりあえずマツ、お前もついてこい! 車回しとけ、あー待て! その前にコーヒー淹れろや 」


「 はい! ただいま! 」


 姫野にマツと呼ばれた若者は、そそくさと奥の部屋へと消えて行った。


 姫野は真っ黒な革張りのソファにドカリと腰を下ろし、全て大理石であろう豪奢なテーブルに足を投げ出した。

 そして、顔の前でVサインのように指を立てる。


 それを見た若者の1人が、即座にタバコを一本取り出し、姫野の指にあてがいライターで火を点けた。


「 ふぅ~・・・しかし魔法かぁ~、治癒魔法って言うてたかのぉ? ほんまにおもろいのぉ! 生きとりゃおもろいことが起きるもんじゃのぉ! はっはっは! まるでハリウッド映画じゃのぉ! はっはっ! 」


 突然陽気に大笑いを始め、意味不明な独り言を吐く姫野を間近で見て――組員の若者たちは全員顔を見合わせ、困惑の表情を浮かべていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ある日、気付いたら「 ブックマーク 」という所の数字が、80以上になっていました。

これは80人もの方が「 続きを読んでやってもいいかな 」と思ってくださった、と解釈しております。

ありがとうございます。ただただ感謝しております。



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