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第154話 神霊融合

「 え? 何? なにやってるんですか!? 」


 その人物は、今にも儚く消失しそうなほどに半透明だった。

 その身体を、室内照明の白い光が容赦なく貫いている。


「 やあ! 久しぶりだね、ハルノ君 」


 ナゼ半透明なのかは知らないが、デュールさんその人だった。


「 いや何してるんですか!? ってか、こっちの世界にも来れるんですね・・・ 」


「 当たり前だろう。忘れたのかい? 君を見つけたのはわたしだよ? 」


 ――確かにそりゃそうだよな・・・この人は否定してるけど、神様みたいなモンだしなぁ。


「 え? 待って待って! 呼んでもないのに何で? 」


「 はぁ~、君は相変わらずだね。だが、そこがいいのだがね 」

 長身痩躯のデュールさんは、頭を片手で押さえながら小刻みにふるふると振っていた。


「 まぁいい。わたしがみずから会いに来た理由だが、ズバリ――君が全く会おうとはしていないからだよ! 言っただろ? わたしは君を、常に俯瞰(ふかん)で見ることができるわけではないと 」


「 はぁ? 定期報告をしろ――とかって指示を受けた覚えはありませんが・・・それに便りが無いのは元気な証拠って言うじゃないですか。まぁいいわ、せっかくだし、この機会にいろいろ質問させてくださいよ 」


「 ハ、ハルさん・・・ 」

 困惑するミラさんの呼びかけに反応し、振り返る。


 リディアさんは既に片膝を突き――臣下の礼をとっていた。

 ミラさんと高岡さん、そして信者の男性は驚愕の表情を並べていた。


「 ああ、ごめん。実はこの人がデュールさんなんです 」


「 ええーーー!! 」

「 でゅーるさん? 」

 ミラさんは叫び、高岡さんたちは頭の上に(ハテナ)マークが飛び出していた。


「 こ、これは失礼致しました! 」

 ミラさんは慌ててそう叫び、隣のリディアさんに(なら)って片膝を突いた。


「 え? 春乃さんのお知り合いっぽかですけど――こん人って・・・ 」

 どうやらリディアさんやミラさんの発する言語とは違い、デュールさんの発する言語は、高岡さんたちにも理解できているようだった。


「 あ~まぁ知り合いってか、一言で言うと――私を魔法使いにした張本人ですね。二つの世界を管理している神様と言っても過言ではないかなぁ 」


 ――そういえば、こういった礼拝的な場所なら出現できるんだったっけ? 高岡さんたちは私を通じ、結果としてデュールさんを信仰していることになるんだろうか?


「 ってか、何でそんなに透明なんですか? 」


「 まず最初の質問がそれかね? まぁいいだろう 」

「 まだまだ魔力が足りないせいだよ。わたしが今こうやって具現化できているのは、ハルノ君が道を繋いでくれているお陰なのだ。こちらにも、若干ではあるが魔力が流れ込んでいるからね 」

「 君が、マルチバース転移を行っていることをこの者たちは既知と判断した。このまま会話を続行させてもらうよ 」


 ――ちょっと待って! 魔力が?


「 魔力が流れ込んでるって? この日本にですか? 」


「 ああ、実を言うともっと別の言い方があるのだがね。便宜上、ハルノ君の為に【魔力】と呼ぶことにする。魔力がこちらの惑星にも、ハルノ君と共に流れ込んでいると考えてくれてかまわないよ 」


「 え? まさかそれって・・・アッチで暴れてるような魔物とかが、コッチにも出てくる可能性があるんじゃ? 私が行き来すればするほど、その危険性が増すとかってことにはならないんですか? 」


 デュールさんは微笑を湛え、私の顔をじっと見つめてきた。

 

「 問題ない。特にこの島国はね。この島はかつて、君たちの尺度で表すと【レベル4の存在】が守護していたはずだ。現在その力は弱まっているが、しかし魔物が跋扈(ばっこ)するような事態には到底成るはずもない 」


「 そうですか・・・よくわかりませんが、転移しまくっても問題ないわけですね? 」


「 ああ、安心してくれたまえ 」

 私はホッと胸を撫でおろした。

 魔法をぶっ放すような魔物がこっちの世界に出現したら――大惨事を巻き起こすだろう。


「 ああ、そういえば――何百年前か知らないけど、アズールって戦士に剣をプレゼントしましたよね? なんだかよく分からないけど、アズールって人からその剣を託されましてね。んでその剣が張ってる結界に封じ込められてる存在がいて、結界が崩壊しそうなんで、その前にソレを斃してくれって言われてるんですけど、いったいどーゆー事なんですか? 」


 デュールさんは「 ふむふむ 」と相槌を打ちながら、「 あ~ 」と漏らし、何やら思い出した様子だった。


「 過去、条件を満たした者にポータル捜索を命じたことがあってね。ハルノ君の先輩ということになるだろう。だがその者は魔力に取り込まれた。そしてその者を救いたいと懇願してきた勇者にも武器を授けたのだ。その結果――救助することはできなかったが、隔離することには成功したのだろう 」


「 私の先輩? ってことは、元々コッチの世界の人? もしかして私と同じ日本人? ――何百年か前の? 」


「 いや、こちらの惑星の者ではない。魔力の影響を受けないこちらの人類が望ましいのだが、あの当時は適任者が皆無だったので、仕方なく現地の者に命じたのだよ 」


「 いやちょっと待って、ってことは100%デュールさんの所為(せい)じゃん。取り込まれたって・・・魔物になっちゃってるってこと? アズールって人は幽鬼(ゴースト)みたいになってたけど 」


 責任を追及するかのような私の発言に対し、デュールさんはあからさまに困った表情を見せた。


「 君たち人類の尺度で論じられても困るのだがね。確かに捜索者の生は終焉を迎えたわけだが、無論あの者はそれを承諾していた。結果的に一定以上の魔力暴走を防ぎ安定したのだから――本懐を遂げたと言えよう 」


「 いやいや、お役目を果たしたなら何とかしてあげてくださいよ! 助けようとしてたアズールさんに、ただ剣を与えるだけとか・・・なんでそんなありふれた神話の神様みたいなことしかしてないんですか! デュールさん自身が動いてたら、たとえ元の生身に戻すことは無理だったとしても、なんとか事態を収束できてたんじゃないんですか? 」


「 ふふっ、言われずとも結果的に――わたしみずからが事態の収束に向け動いているということになっていると思うがね 」


 ナゼだか理解できないが、デュールさんは満面のドヤ顔だった。半透明でもそれはよく分かった。


「 はぁ? どこが動いてるって言うんですか? さっき聞かれて初めて思い出したって感じだったじゃん・・・ 」


 ――いや待て・・・もしかして私なのか? 私がその駒か?


「 まさか! 私がデュールさんの代わりに、現在動いてるって事? 」


「 ふっふっふ、さすがハルノ君。なかなかに聡明(そうめい)だね 」


「 いやいや! 結局人任せやんか! 」


「 はっはっはっ! 実におもしろい。やはり君を選んで正解だったよ 」

 デュールさんは豪快な笑い声をあげていた。

 しかし透明だ・・・SF映画などでもよく見かける、ホログラムのような状態だった。


「 うぅむ・・・まぁいいわ。今、別の国のゴタゴタに首突っ込んでて、それが一段落したらどの道モンド寺院に出向くつもりだったし。ただ魔法が効かない相手だと言われてるんですけど大丈夫なんですかね? 」


「 そうか、与えた神器のチカラも取り込んだか 」

 急に神妙な面持ちで、デュールさんが意味深なことを口走っていた。


「 一応私はあくまで援護役で、こちらの騎士リディアさんが――デュールさんの剣を使い対峙するって流れの話にはなってるけど・・・ 」


 片膝を突き頭を垂れていたリディアさんが――顔だけを上げた。


「 ふむ。君がハルノ君が頼りにしている騎士かね 」

 デュールさんがリディアさんに対し、鷹揚(おうよう)に語りかけた。


「 は、はい! ハルノ様の護衛を神命と心得えております。リディア・ブラックモアにございます! 」

 ガチガチに緊張しているリディアさんだった。


「 ふむ。君が盾になるのならば、彼我(ひが)の能力差も分からないであろうし不安が募るだろう。ならば・・・少々ルール違反にはなるが、ハルノ君に新しい魔法を一つインストールしておこう 」


「 いやいやインストールって・・・神様がIT用語使ってるのって違和感しかないんですけど 」


「 はっはっはっ! 君のインテリジェンスに合わせているだけなんだがね。言語も思考も―― 」

「 しかしハルノ君の顔を見れて満足したよ。今宵はこのくらいにしておこう。なにか進展があれば遠慮なく呼んでくれたまえ。ではまた会おう 」


 そう言い放つと同時に光の帯に変化し――、細く伸び上がってあっという間に消失したのだった。


「 ちょ! もう・・・いっつも一方的に帰っていくなぁあの人 」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新して頂きありがとうございます。 まさか幽霊の正体がデュールさんだったとは。驚きました。 相変わらず自由な神様ですね。 ハルノさんの新しい魔法楽しみです。 次回もよろしくお願いいた…
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