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現状把握

 俺は小島修一。現代日本からこの世界に転移したての新鮮な迷子だ。異世界転生物の漫画はよく読んでいたが、本当にトラックにひかれたら異世界に飛ばされるもんなんだな。しかし神様からの説明とかはなく、気が付くとどこかの森にいた。


 こういう時はまず落ち着いてステータス確認だな。


 心の中で『状態表示ステータス』と唱えると目の前にステータス画面が表示された。先人の知恵は偉大だ。




小島修一 レベル1

HP 10

MP  5


ちから 8

素早さ 8

器用さ 6

魔力  0


スキル

無限収納アイテムボックス




 おいおい、ずいぶん弱そうだな。この世界の数値の基準は知らないが、とても強そうには思えない。しかも魔力がゼロって! スキルのアイテムボックスって異世界転移者の標準装備だよな? 他に何にもないのかよ!


 しばらく待っていたが、女神さまが出てきて力を授けてくれたり、ゴブリンに追われた女騎士がやってくる気配もない。


 嘆いていても仕方ない。とりあえず唯一のスキル、アイテムボックスについて知ろう。


 とりあえず足元に落ちている石に手を当てる。


「収納!」


 すると石が消えた。


 ……消えたは良いが、どうやって取り出すんだ?


 あれこれ試行錯誤しているとステータス画面のアイテムボックスの所を押すと現在収納しているものが表示された。石のアイコンを押すと目の前に石が出現し、地面に落ちる。なるほど、こういう使い方か。


 色々試してみた結果、直接触れなくてもある程度の距離までなら手をかざすことで収納できることがわかった。足や顔でも試してみたがそれはダメだった。手をかざさないと収納は出来ないらしい。また、いくら使ってもMPは消費しなかった。


 いちいちステータス画面を開くのが面倒なので、心の中で描くだけで取り出せないか試したところうまくいった。もしかしてコピーや増殖も出来るのではないかと期待したが、残念ながら収納した分しか取り出すことはできなかった。


「よし、だいぶアイテムボックスについてはわかったぞ」


 口に出して呟いたが、当然誰も聞いていない。


 ……寂しい。暗くなる前に人里を探そう。


 森の中を黙々と歩き続く。すると木の根元にマツタケに似たキノコが生えていた。もしかすると食べられるかも……でも毒があったら危ないよなぁ。とりあえず収納だけするか。


 手をかざし、そのキノコを収納する。念のためアイテムボックスを確認してみた。


「お?」


 アイテムボックスには練習で使った石や枝のほかにオイシダケというキノコが表示されていた。なるほど、収納すれば名前もわかるのか。とはいえ名前がわかっても、食べて安全かどうかはわからない。とりあえず目についたキノコや果物は収納していった。


 しばらく歩いていると幸運にも道らしき場所に出た。舗装等はされていないが、馬車のわだちの跡がある。間違いなく人間……もしくは道具を使う知能がある何かしらの生命体はいるようだ。とりあえずその道を進むことにする。


 その時──


「グルルル……ッ!」


 唸り声とともに近くの茂みが揺れる。これはもしかして……


 予想通り、俺への嫌味のようにゆっくりと灰色の狼が姿を現す。まずい、何か武器になるものは……!


 頼りないが無いよりはマシだ。俺は枝をアイテムボックスから取り出して手に構えた。狼はそんな俺をあざ笑うかのように、円を描きながら俺の周りをゆっくりと歩き出す。まるでどうやって殺そうか吟味するかのように。


 冷や汗が止まらない。奥歯はガチガチと震え、体は恐怖でこわばっている。くそっ、こんなところで殺されてたまるか!


「うわぁぁっ!」


 叫びながらこちらから狼に襲い掛かった。上段に構えた枝を思い切り振り下ろす。しかし狼は余裕でそれをかわすと、逆に隙だらけの俺に飛び掛かってきた。


「ひぃ!」


 俺は倒れこんで攻撃をなんとかかわした。しかし俺が起き上がるまで狼が待ってくれるわけがない。続けざまに狼は、俺の体にのしかかるように飛び掛かってきた。こうなりゃヤケだ!


「収納!」


 ……覚悟した痛みはやってこなかった。はっとして辺りを見回すが狼の姿はない。


「もしかして……」


 アイテムボックスを確認する。そこには狼が一匹収納されていた。


「た、助かった……」


 恐怖から解放され、俺はしばらく倒れたまま、呼吸ができる幸せをかみしめた。


お読みいただきありがとうございました。

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