あなたならどうしますか?
念のために記載しておきます。
この作品の登場人物達ですが、誰かモデルとなる人物がいたなどは一切ありません。
完全に名前等を含めて作者が勝手に設定したに過ぎません。
━━もし、「生きる」か「死ぬ」かを選べたら。
あなたならどうしますか?
━人は産まれる時、神様から使命を与えられる━
そんな話を聞いたことがある人もいるかもしれない。
だが、正確にその使命を知り、実行している人などいない。
*****
鈴村真琴 33歳 女性
年齢=彼氏いない歴
趣味 マンガ、アニメ、ゲーム、ラノベ等々
完全に独身を拗らせた人物である。
そして、今日。
彼女は派遣期間満了で仕事を失った。
次の仕事もまだ見つかってない、絶望真っ只中。
そんな彼女が一人暮らしのアパートに帰り、一息ついていた時だった。
突如、目の前に画像が現れた。
タブレットの類いではない。
アニメやゲームで見るような、液晶画面が浮いている状況なのである。
「え‥‥?」
ただ、最初は真っ黒な画面が現れただけだったが、不意に文字も表示された。
『
神は人類の削減をお決めになりました。
』
そして勝手に画面の文字が移り。
『おめでとうございます。
あなたは世界中の一億人の中から選ばれました。
これから、あなたにはとある選択をして頂きます。
ただし、一度選ぶとやり直しはできませんので、慎重
にお選びください。
次へ> 』
「えっと‥‥「次へ>」を押したらいいのかな‥‥?」
と呟きつつ、「次へ>」のところに触れると、再び表示が変わった。
『あなたに選んで頂くのは「生」か「死」です。
まず、「生」を選ばれた場合はあなたが神に与えら
れし使命をお教え致します。
「死」を選ばれた方から「寿命」を分けてもらえます。
ただ、「生」を選ばれた方は使命を全うするまで
死ぬことは許されません。
次へ> 』
「え‥‥?」
と震え始めた手をなんとか動かし、「次へ>」に触れる
『「死」を選ばれた方は現実に死ぬことになります。
その場合は、脳死扱いになります。近くの病院に自動
的に転送され、医師によって適切に脳死判定してもら
います。
臓器移植の意思表示をして頂いてる方は、それが反映
されるでしょう。
次へ> 』
「‥‥‥親切だな‥‥」
妙に冷静さが戻り、呟きつつ「次へ>」を押す。
『そして、「死」を選んでくださった方の魂は地球で
の転生はできません。
別の場所に転生して頂きます。
中には転生せずに魂が消滅する方もいるでしょう。
次へ>』
『「死」を選んでくださった方には救済処置として、
転生先を選んで頂きます。
人それぞれの好みや趣味趣向に合わせて選択肢を設け
ます。
ですが、最初に記した通り一度選んだら後戻りはでき
ません。もちろん、選び直しもできません。
次へ>』
『さて、説明はここまでです。
ちなみに、「死」を選んで選択肢を見たあとにやっぱり 「生」を選びたい。ということはできません。
逆も然りです。
現段階でしっかりと己の道を定めてください。
次へ>』
『
さあ、決断の時です。
次へ>』
『
あなたはどちらを選びますか?
「生」 「死」
』
「「生」か「死」をもうこの場で選べってこと‥‥?」
そう呟くと、今まで音声などなく、文字のみだった画面から機械的な音声が流れてきた。
ーこの場でお選びくださいー
「わっ!‥‥今の声って‥‥」
ーあなた様の目の前にございます、画面からの音声でございます。ー
「な、なるほど。‥‥私が生きて使命を全うするか、この場で生きることを諦めて転生するかを‥‥」
ーはい。ー
「‥‥‥」
ー‥‥‥「死」を選んで頂いた場合、ご家族やご友人などへの連絡ぐらいならば時間を差し上げられます。ー
「え‥‥?」
ーこれは神からのせめてもの慈悲にございます。ー
「あ‥‥人類削減に協力してくれてありがとう。‥‥とか?」
ーその通りにございます。ー
「そっか‥‥」
実は最初こそ戸惑ってはいたものの、真琴は画面の文字を読み進める内に決めていた。
「‥‥私は「死」を選ぶよ。」
そう言って、「死」と記載された場所に触れた。
『
あなた様がお選びになったのは「死」です。
神への協力に感謝を申し上げます。
』
『
では、「死」を選んで頂いたあなた様に選択肢を表示
させて頂きます。
』
次の画面で表示された選択肢は‥‥
・ライトノベルの登場人物
・マンガの登場人物
・戦闘系アニメの登場人物
・RPGの登場人物
・小説の中の登場人物
・乙女ゲームの登場人物
「‥‥なにこれ‥‥ざっくりしすぎじゃない‥‥?この中から選べと‥‥?こんなざっくりした中から?」
ーどれを選んで頂いても、悪役や死期が早くなる様な者になることはありません。例え今世の様に同じく使命などを知らずとも、今度こそ人生を全うできる転生先となっております。ー
「‥‥ふ~ん。‥‥‥ってこれ、登場人物としか書いてないけど、男に転生する可能性もあるの?」
ー‥‥‥恐らく。ー
「え~‥‥博打が過ぎるでしょ‥‥‥‥‥ん?」
真琴は選択肢の一番最後にしれっと書かれていた表示に反応した。
「あ!これがあるならこれでいいじゃん!」
とあっさりそれを選択した。
すると、次の画面では。
『
この転生先でよろしいですか?
「はい」 「いいえ」
』
ーここで「はい」を押して頂いた瞬間、あなた様のお命が終わりを迎えます。ご家族やご友人などへご連絡されるならばこれが最後です。ー
「分かった。」
そう言って真琴が携帯の画面を見ると、ネットを開いたままだった。
そのネット上では真琴の様に死を選んだ人達が家族や友人達に連絡を一斉に取り出したことで、回線がパンク状態に陥っていると取り上げられていた。
「あらら‥‥これじゃあ、電話は無理かな‥‥どうするかな‥‥」
そう言って少し考えたあと。
「‥‥この便利な環境下で‥‥とも思うけど、確実性をとるなら仕方ないか‥‥」
とプリンターの紙を数枚取り、書き始めた。
普段から手書きの手紙を書くことなどなかった真琴は、当然の様にレターセットなど持っていなかった。
なので、プリンターにセットしていた印刷用の紙にフリーハンドで書くことにしたのだ。
これは遺書になるので、ちゃんとしたやつに書きたかった気もするが‥‥
そうして、両親や友人達宛に遺書とは言い辛い遺書を書き、再び携帯を操作したあと、目の前の黒い画面を見た。
そして、「はい」を押そうとしてふと、気づいた。
「あのさ、「はい」を押したら脳死状態で近くの病院に送ってくれるって言ったよね?」
ーはい。ー
「身分証明になるものか、臓器提供の意思表示になるものを持ってた方が良かったりする?」
ー医師の手間が省けますね。ー
「だよね。‥‥免許証でいっか。確か‥‥」
と免許証を裏返し、意思表示の記載をしていることを確認すると。
「うん。やっぱり。‥‥よし。」
真琴は免許証だけを服のポケットに入れて、改めて目の前の黒い画面を見る。
そして、今度こそ「はい」を押したのだった━━
真琴が選んだ転生先。それは‥‥
「小説投稿サイトに投稿済みの自分の作品。その登場人物」
真琴はいくつか投稿していて、完結している作品もある。
RPGなどざっくりしすぎてどんな世界に行くか分からない選択肢より、自分が考えた世界観の方がまだ安心できる。例え男性キャラになろうと出会う人達の性格なども分かるので問題ない。‥‥と思うことにしよう。
そう思って選んだのだ。
最後に携帯を操作したのも、「もう投稿できなくなった」とお知らせを載せただけである。
ただ。
真琴は一つ、忘れていることがある。
転生するとは言ったが、「真琴としての記憶を持ったまま」とは言ってない。
ー‥‥‥まあ、もしかしたら記憶を持ったまま‥‥という可能性もなくはないでしょうから‥‥ー
真琴が病院に転送されてもそこにあった黒い画面。
ー‥‥真琴様の来世に幸福がもたらされることを‥‥ー
そうして、黒い画面も静かに消えた。
*****
そして真琴以外にも━━
心臓病を患い、ベッドの住人となっている10歳の少年。
「生きていても母さん達に心配かけるだけだし‥‥」
そう呟き、同じく「死」を選んだ。
そして、選んだ転生先は「RPGの登場人物」。
元々ゲーム好きで、RPGは特に好きだった。そして、同時に外に出て動き周りたい願望もあった。
両方が叶う最高の転生先。
そして、少年もまた旅立った。
*****
真琴や少年の様に「死」を選ぶ者ばかりでもなく━━
親日家のアメリカ人男性。
彼は特に戦国時代の日本に興味を持っており、模造刀なども持っている程の人物だった。
「まだまだ知識を深めたいからな。まだ死ぬ訳にはいかない。」
そうして「生」を選んだ。
そして、彼の使命。それは。
『大統領補佐官として、生涯を終える。』
これには続きがあり、死に方まで記載されていた。
『襲撃事件に巻き込まれ、大統領を庇ってその命を終える。━━享年35歳。』
「な!?あ、あと5年しか生きられないと!?」
ーはい。そして、この運命はあなた様がいくら努力しようと変わることはありません。ー
「そんな‥‥」
男性は一時、言葉も出せずに固まっていた。
そして、男性が固まっている間に黒い画面は消えた。
*****
この方々はあくまでも一例です。
死を選んだ真琴や少年には果たして、どんな使命があったのでしょうか?
今ではもう分かりません。
さて、最後まで読んで下さったあなた様に伺います。
━━もし、「生きる」か「死ぬ」かを選べたら。
あなたならどうしますか?