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面倒事で申し訳ないデスケド。

 ルキナは、ドレスを着て、パーティに行く準備を整えると、出発までの時間を持て余し、なんとなく家の中を歩きまわった。いくら普段は学校の寮にいるとは言っても、何年も日常を生活してきた家の中を歩いても景色は変わり映えしなかった。

 ルキナは、かつてシアンの部屋だった二階の角部屋のドアの前に移動した。廊下の窓辺に腰かけ、開くことのないドアを見つめる。

 まだドアに鍵がかかっていて、中には入れない。シアンが出て行ったすぐ、ハリスが閉めた。それ以来、掃除のために使用人が定期的に入るだけで、ルキナは一度も入っていない。しかし、入ったところで、何も残ってはいないだろう。ルキナがかけられた忘却の魔法は、シアンの持ち物を見てもその効果が阻害されてしまう。秘議会がこの屋敷にシアンに繋がるものを一つも残していくとは思えない。ルキナは、見知らぬ大人が屋敷を出入りしていたのを知っている。この部屋に何かあるなんて、ルキナは期待していない。

 それに、たとえ鍵が開いていたとしても入る気はない。ルキナはこの部屋が何に使われていたのかも知らないことになっている。もし、この部屋に入りでもしたら、魔法の効力が切れてしまったのではないかと疑われかねない。今後の計画を円滑に進めるためには、シアンのことを覚えているのではないかと勘付かれる行動は控えなくてはならない。

 ルキナは、目を閉じて、この屋敷でシアンと過ごした日々を思い返す。シアンがこの屋敷にいるのが普通で、日常だった。それが今は排除されるべき記憶とされている。今はシアンのことをルキナの口から語ることも許されず、もし今日のパーティで会えたとしても、知らぬふりをしなくてはならない。そのことを考えると、ここから動きたくなくなってくる。

 ルキナは、このようにシアンがここを出て行くとは全く予想もしていなかった。シアンとのここでの生活は円満に終わるのだと思っていた。悔やんでも悔やみきれない思いだ。でも、悔やんでもしょうがない。

(とにかく、今ある思い出を大事にしないと)

 ルキナは、一部の記憶をなくしてしまい、その分残された記憶を大切にしようと思うようになった。後ろばかり見ているわけにはいかないが、こうして過去を振り返ることで、原点回帰をする時間も必要なはずだ。

 ルキナは目を開け、またぼんやりとドアを見る。その時、無意識に右耳のイヤリングを触っていた。戴冠式の日、シアンとお守りの話をしたことを思い出す。そして、その「お守り」という言葉に何か引っかかるものを感じる。

(何だっけ……お守り…シアンのお守り…)

 ルキナは頭に力を入れるようにして、シアンとの会話をできるだけ多く、具体的に思い出す。

「あ」

 ルキナは思わず声を出していた。バタバタと廊下を走り、自分の部屋に向かう。

(シアンのお守り!チグサのナゾナゾ!)

 ルキナは、頭で考えていることが無意識のうちに声にならないように気をつけながら、でも、思い出したことを忘れないように頭の中で繰り返しながら廊下を走る。そうして部屋に到着すると、勢いよくドアを開けた。よく見慣れた部屋の中をずんずん進み、勉強や小説の執筆を行う机に近づいた。

「すぅ…はぁー…。」

 ルキナは気持ちを落ち着けるように深呼吸をし、一番上の引出しの鍵を開けた。引き出しの取っ手に手をかけ、ゆっくり腕を引いた。引出しを開けると、その中に小説の原稿とその他大切な小物が入っていることを確認する。

 ルキナは、引出しの中に手を入れ、原稿用紙をペラペラと一枚ずつめくっていく。その途中、サイズの違う紙が現れる。原稿用紙の四分の一ほどの大きさのカードだ。ルキナはそのカードを手に取り、ひっくり返した。『すべてが明かされる約束の夜に備えよ 扉は竜の口 鍵は竜の血 宝は竜の涙』と書かれている。

 このメッセージカードはシアンのお守りの一つで、戴冠式の日、ルキナがシアンから見せてもらった後、返すのを忘れていたものだ。すぐに返せるだろうと思っていたのでその場で返さなかったが、今はこのカード一つ返す機会がない。でも、ルキナがしたいのはそのことを悲しむことじゃない。

(これがチグサの言っていた謎?)

 ルキナは、このカードをシアンが受け取った時のことを思い返す。このカードは、中等学校卒業の年、リュツカ家の屋敷に届いた荷物の中に入っていた。送り主不明のこのカードはもしかしたらチグサが送ってくれたのかもしれない。このような事態になることを予想して。そう考えればつじつまが合う。チグサが事前に用意していたカードは、チグサが何らかの理由で語ることができなくなった時のためのもので、チグサは、自分の口で語れない代わりに、このカードの謎を解けと言っている。つまり、この謎を解くことが今ルキナがすべきことだ。

(約束の夜…これは『いつ』でしょ。扉は場所だとして、竜の口って何…?)

 ルキナは「うーん」と悩み始める。一人では謎を解ける気がしない。こうして悩んで謎が解けるくらいなら、このカードを受け取った時点でシアンが謎を解いているはずだ。

 ルキナがカードを手に頭を悩ませていると、コンコンとドアがノックされた。ルキナは我に返り、カードを引出しの中に戻した。鍵をかけ、部屋を出る。

「ルキナ、行くよ」

 ルキナの部屋の前では、正装をしたハリスが待ち構えていた。出発の時間になったため、馬車に乗るように言う。ルキナはハリスと一緒に外に出て、門の前で止まっていた馬車に乗り込んだ。メアリは先に乗っていて、ルキナに「時間には常に意識を向けなさい」と言った。ルキナが約束の時間に馬車に乗りに来なかったことを叱る。

 予定の時間よりほんの少し遅く出発した馬車は、真っすぐ王都へ向かった。

「お父様、来年、四頭会議を見に行きたい」

 ルキナは馬車に揺られながら言った。ハリスは驚いた顔で「どうしてまた急に?」とルキナに尋ねた。

「タシファレドがそういうの始めたみたいだから」

「ルキナも次期当主としての自覚が芽生えたのね」

 ルキナが理由を言うと、メアリが嬉しそうに頷いた。さっきまでルキナを叱っていたのに、メアリは随分と機嫌が良さそうだ。ルキナが将来を見据えたことを言ったからではなく、おそらく冬だから。冬のメアリは根本的に機嫌が良い。夏とは違い、ハリスはいつも家にいる。メアリはそれが嬉しいようで、夏より冬の方が機嫌が良い。好きな季節を聞いたら冬と答えそうだ。でも、娘の前で夫にデレるようなことはしない。メアリは人前で恥をさらすことを嫌っているし、そういうところは家族であってもハリス以外には見せようとしない。ルキナとしても、両親がイチャイチャしているところを見てしまったらいたたまれなくなるだろうから、そういうところを見せないなら見せないで構わない。

(そういえば、お母様の方の親戚に会ったことないな)

 ルキナは、意外と自分が母親のことを知らないのだということに気づいた。父方の、ミューヘーン家の親戚が多いので、母親の血縁者に会ったことがないことに全く気付かなかった。メアリはミューヘーン家の一族ともあまり良好な関係ではなさそうなので、もしかしたら、メアリは家を勘当されたのかもしれない。

「ルキナが四頭会議の勉強なんて、ほんと大きくなったな」

「まだまだ手のかかる子ですけどね」

「私、もう一人で最低限生きていけるくらいの収入はあるよ」

「まだまだよ。あなた一人で生きていきたいなら、もっと勉学に励みなさい」

「親離れより、メアリの子離れの方が心配だな」

 ルキナは、馬車の中で両親とたくさん話をした。毎日顔を合わせていた頃とは違い、話していないことがたくさんあるので話題に尽きない。そうして、あっという間に城に到着した。

「友達のとこ行ってくる」

 ルキナは、パーティ会場につくなり両親のもとを離れ、友人たちのところへ向かった。その途中、ルキナを知る貴族たちから挨拶を受けたが、興味もなかったので、すぐに顔と名前を忘れてしまう。

「ルキナ、調子どう?」

 マクシスが最初にルキナに声をかけてきた。マクシスはチグサの横にぴったりくっついて、離れまいとしている。かつらと眼帯を外したチグサは貴族の男性たちの中で話題になっており、その美しさは噂になっている。チグサが好奇の目にさらされているので、マクシスは気が気ではないだろう。

「まあまあよ」

 ルキナは、マクシスがチグサを見る全ての男性たちをライバル視しているのを見て呆れつつ、マクシスの問いに答えた。この意味もなさそうなやりとりはちゃんと目的がある。これは互いに決めた暗号のようなもので、マクシスの質問は「何か収穫はあった?話したいことはある?」という意味で、ルキナの返答は「ある」という意味になる。これを聞いていたチグサがルキナをチラッと見た。チグサは、どこかのタイミングで人に聞かれないようにして話をしなくてはならないことを理解したようだ。

「せんせーい!ご機嫌麗しゅうございますかー?」

 ハイテンションのユーミリアがルキナに抱きついた。ユーミリアについてイリヤノイドも姿を見せる。

「姉さん、少し落ち着いてください」

 イリヤノイドは、はしゃいでいるユーミリアが周囲から視線を集めていることに気づき、ユーミリアをたしなめる。しかし、ユーミリアはイリヤノイドの声など聞こえていないという素振りで、ルキナに抱きつき続ける。

「皆さん、お揃いで」

 続いて、シェリカが現れると、丁寧にお辞儀をした。

「シェリカ、今日は迷わなかった?」

「そう何度も何度も迷いませんっ」

 ルキナがニヤニヤしながらからかうと、シェリカがぷいっと顔をそらした。

 シェリカが来た後は、ノアルド、ミッシェル、ベルコル、そして、タシファレドたちが合流し、パーティが始まる頃にはいつものメンバーが揃った。

「タシファレド、来てる?」

 パーティが始まってすぐ、ルキナはタシファレドに耳打ちをした。タシファレドは小さく頷き、肯定した。ルキナがずっと話したいと思っていたカンベルがここに来ている。これはチャンスだ。逃げられる前に話しかけにいかなくては。

「ルキナ嬢、さっそく行きますか?」

 タシファレドがルキナの手を取って言った。ルキナは「行く」と答えたが、ユーミリアがタシファレドを冷たい目で見たので、タシファレドが怯える。タシファレドがルキナの手に触れたのが許せないようだ。

「ユーミリア、人を睨むのは良くないわ」

「はい、先生」

 ルキナが注意すると、ユーミリアがルキナから離れて真っすぐ立ち、敬礼をした。

「あと、タシファレド。私は一応婚約者がいるし、いくらタシファレドが女たらしの噂が広まっているって言っても、印象を悪くするのは良くないと思うわよ」

 ルキナはため息混じりにタシファレドに言う。タシファレドに女の子扱いされるのは嫌いではないが、これを容認すると、後々面倒なことになりそうだ。タシファレドの印象が悪くなる分には何とも思わないが、ルキナまで変に思われるのはいい迷惑だ。

「そういうことするなら、アリシアちゃんにしなさい」

 ルキナは、タシファレドの手から手を引っこ抜き、その手をタシファレドの胸に運ぶ。人差し指をタシファレドの胸に押し当て、「なくしてから後悔しても知らないわよ」と付け加える。タシファレドは、「肝に銘じておきますよ、ルキナ嬢」と、ふざけたように言ってへらへらしている。そんなタシファレドの態度が気に入らなくて、ルキナはムスッとする。

「この私があんたの恋を応援なんて天地がひっくり返るようなことなんだからね。無下にしたら許さないからね」

 ルキナが怒っていると、アリシアが駆け寄ってきた。アリシアは、タシファレドを睨みつけて、右手を握りしめて胸の高さで構えた。

「たっちゃん、ルキナ様をいじめたりしてないよね?」

「してねぇって。だから、その手は下ろせ」

 タシファレドはアリシアの前ではたじたじだ。耳を赤くして、アリシアに腹を立てたフリで照れ隠しをする。女たらしスキルをこういう時こそ使うべきだろうに。ルキナは呆れた。

(誰が見たって両想いなのに)

 ルキナは、逆ハーレムのためにタシファレドにもルキナのことを好きになってもらおうと思っていが、アリシアのことを思えば、そんなことはできない。どうせ自分のことを好きになってもらえないのなら、二人で幸せになってほしいと思う。

 ルキナは、夫婦喧嘩をしている二人のことを、ハイルックが温かい目で見守ってることに気づいた。ハイルックもルキナと同じ気持ちなのかもしれない。自分勝手な気持ちを押し付けて、想い合っている二人の邪魔などできない。

 ルキナは、仲良しの赤髪カップルを見て和んでいたが、何気なく視線を向けた先にシアンを見つけてしまい、息がつまった。シアンはルイスの傍に立ち、笑顔をふりまいている。ルキナは、あれが営業スマイルであることにすぐに気づいた。

(あ、やばっ)

 ルキナはシアンに見惚れそうになったが、意識的に視線を外した。ルキナを見はっている者に、記憶のことがバレかねない。シアンのことは知らない人という体で動かなければならない。

「ルキナ嬢、行きます?」

 ルキナが足元を見て険しい顔をしていたので、タシファレドが声をかけた。ルキナはタシファレドの顔を見て神妙に頷いた。いつまでも脳内天国ではいられない。今自分がすべきことをこなさくては未来はない。

 タシファレドが先導して歩き始める。ルキナは当然のようにタシファレドについて行ったのだが、他の者たちも後ろについてきていた。ぞろぞろと団体で動くものだから、周りの大人たちが何事かと注目している。そうして、カンベルのもとに到着すると、カンベルはタシファレドとその他大勢を見て、一緒に話していた人たちに「すまない」と告げて、逃げた。

「あ…。」

 カンベルが移動してしまったので、慌ててルキナは追いかける。皆もルキナについてくる。

「ちょっと待って」

 ルキナは不意に立ち止まり、後ろを振り返った。皆、ルキナが何を言おうとしているのか全く予想もついていないようで、不思議そうに無垢な瞳をルキナに向けた。ルキナは、ため息をつき、「これだけ大勢でおしかけたら誰だって逃げるわよ」と言った。

「タシファレド、チグサ、行きましょ」

 ルキナは、タシファレドとチグサだけを連れてカンベルを追う。名前を呼ばれなかった者たちはとぼとぼともといた場所に戻って行った。これで人数を絞ることはできた。

 しかし、そうこうしているうちにカンベルを見失ってしまった。ルキナが焦っていると、チグサが「控室の方かも」と言った。三人は早足で、ロット家が使うことを許されている控室に向かった。

 控室の扉を少し開け、タシファレドが最初に中を確認した。タシファレドは扉を一度閉めると、「チグサ嬢、ご名答」と言った。この控室にカンベルはいるようだ。

 ルキナたちは顔を見合わせて全員で頷きあうと、扉を開けた。三人が控室に入ると、カンベルはだるそうにソファに腰かけ、水を飲んでいた。

「面倒ごとには巻き込むな」

 カンベルがルキナ達の方は見ずに言った。カンベルがどこまでこちらの事情を知っているのかはわからない。でも、少なくともルキナたちがカンベルに頼み事があるということには察しがついたようだ。

「タシファレド、どこまで話したの?」

 ルキナは、カンベルが何を知っているのか状況を知りたくて、タシファレドに尋ねた。タシファレドは首を振った。いつも面倒くさそうにタシファレドの質問に答えるだけで、タシファレドには何か聞いてくるわけではないそうだ。面倒くさがりなくせに、息子の質問には大人しく答えるらしい。

(この人も自分の子供が可愛くてしかたないのね)

 ルキナは、カンベルのイメージが変わるような気がした。だが、カンベルがシアンに対して紛い物と言ったことは忘れていない。そう簡単に心を許したりはしない。

「あの…」

「どうせあの紛い物関係だろ」

 ルキナがお願いごとを言おうとした瞬間、カンベルが先に口を開いた。ルキナは驚いた。ドキッとした。ルキナは焦りつつチグサの方を見た。チグサが落ち着いた様子で頷いた。チグサは先に魔法を使って音を外に漏らさないでくれていたようだ。ルキナはほっとする。ルキナはシアンのことを覚えていないふりをしているのに、ここで全てがパアになってしまうところだった。

「あの、カンベルさん。私たちは、この国の裏で陰謀を企てている組織を調査しています。その過程で、ルイス様の騎士団の内部にもその組織が関わってる者がいるのではないかという考えに至りました。そこで、騎士団員と繋がりの強いあなたの力を借りたいと思いました」

 ルキナは胸の鼓動を落ち着けながら話をした。カンベルが真面目に聞いてくれているのか不明だが、とにかく話をしなければならない。ルキナは己の使命を全うしようという意識を強くもって、根気よく話を続ける。すると、唐突に、カンベルが言い放った。

「今はもう繋がりはない」

 ルキナは頭が真っ白になった。そんなはずはない。ルキナは、カンベルはルイスの騎士団に所属する人物と友好的な関係にあると聞いていた。カンベルが全ての騎士団の統括に近いことも任せているとも聞いていた。まさか根本を否定する言葉が返ってくると思わなかった。

「団員の入れ替えがあったのを知っているだろ」

 ルキナが絶句していると、カンベルが言った。カンベルは、心底面倒くさそうにする。今のカンベルには、騎士団に友人がいるわけでもなく、騎士団をまとめる役割も与えられていない。だから、期待をしても、カンベルがルキナたちに欲しい情報をもたらすことはできない。

 ルキナは謝罪をしようと思った。よく調べもせず、カンベルを頼ってしまった。結果、本当にただの迷惑をかけただけになってしまった。隣にいるタシファレドを見て驚いているので、この展開はタシファレドも予想していなかったようだ。それもそのはず。タシファレドは、騎士団についてもカンベルに質問していた。でも、答えが返ってこなかった。何も教えてもらえなかった。だから、こうしてルキナも交えて情報をもらいにくることになったのだ。タシファレドがカンベルにこのようなことを言われると思っていなくて当然なのだ。

「この男にあたれ」

 ルキナが頭を下げようとした時、カンベルがぶっきらぼうに言った。顔をこちらに向けることはなく、ただ何かをメモした小さな紙を手に持っている。ルキナはその紙を受け取った。そこには人の名前が書いてあった。きっとこの人物なら騎士団のことを教えてくれるのだろう。カンベルはなんだかんだ協力してくれたのだ。

(素直に最初から言ってくれればもっと早くすんだのに)

 ルキナはカンベルからもらったメモを握りしめて思った。こんなふうに話を引きのばしたりするから、面倒な話になるのだ。

「もうこれ以上協力しないからな」

 カンベルはふんっと鼻から勢いよく息を吐くと、手をシッシッと払った。ルキナたちを控室から追い出した。ルキナたちは、小さくガッツポーズをして廊下で目標を達成できたことを控えめに喜び合う。そんなルキナたちの前を城の従者二人が話しながら通り過ぎて行った。

「ルーエン様が…?」

 従者の一人が誰かの名前を口にした。話の内容は全く聞き取れなかったが、「ルーエン」という名がやけに耳に残った。

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