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結局バレたんデスケド。

 互いの秘密を暴露し合い、それなりに親密になったルキナたちは、ラウンジからオシャレなカフェテリアに移動した。ラウンジは仕事人たちが打ち合わせをしたり、事務作業をしたりしているので、そこに居座るのは邪魔になるだろう思ったのだ。

「先生はチョコレートケーキがお好きなんですか?」

 ユーミリアがルキナのトレイを覗き込んで言った。ルキナのトレイには、三切れのチョコレートケーキと可愛らしい見た目のドリンクが載っている。ユーミリアにも、すぐにルキナの好物がわかった。

「さっきも言ったけど、先生って呼ぶのは駄目だから」

 ルキナは、ミユキ・ヘンミルに繋がるものは自分の周りから全て排除したいと思っている。ユーミリアに先生と呼ばれるくらいではバレないかもしれないが、勘の良い人が何かに気づくかもしれない。ルキナは、既に何度も注意している。

「はぁーい」

 ユーミリアは素直に返事をする。が、さっき注意した時もこのような返事をしていた。

(この子、絶対わかってない)

 ユーミリアは、こりずにまた先生と呼んでくるだろう。

「そういえば、あの人はどこに行ったんですか?」

 ユーミリアがきょろきょろとあたりを見まわす。あの人というのはシアンのことだろう。

「シアンは知らない人に呼ばれて行っちゃったから。どこにいるかは知らないわよ」

 シアンは、ルキナが自分の収録に向かっている間に、ユーミリアに強制連行される形で映鏡に出演したらしい。さっき、局員がシアンを呼びに来たのだが、おそらくそのことに関して話があったのだろう。

「ユーミリアは、シアンのこと前から知ってたの?」

 ルキナは、ずっと気になっていたことを尋ねてみる。すると、ユーミリアがあからさまに困り始めた。

「知り合いってほどではないと言いますか」

 ユーミリアが歯切れの悪いことを言う。

「昔、小さい頃に会ったことがあるはずなんですけど…。」

「シアンはなんか覚えてなさそうよね」

 ユーミリアが困っているのは、互いに知り合いのはずなのに、シアンはそのことを覚えておらず、一方的に覚えているだけだかららしい。

(記憶力は良いくせに大事なことは覚えてないんだから)

 ルキナは肩をすくめる。ユーミリアとシアンがどのように出会ったのかはわからないが、これではユーミリアがかわいそうだ。

(可能性があるとすれば、私と会う前かしら)

 シアンがミューヘーン家にやってきたのは、シアンが四歳の時。それ以前に会っていたとすると、三歳かそこらだろう。その年齢だと、たしかに記憶はあやふやでもおかしくない。しかも、ちらっと聞いた話だと、シアンは、ミューヘーン家に来る以前のことを何も覚えていなかった。覚えていたのは自分の名前だけで、シアンの両親が行方不明になったリュツカ家の火事のことすらも、ほとんど覚えていなかったようだ。ショックで記憶がなくなっただけだろうという話だったが、そういうこともあって、シアンが幼い頃のことを覚えていると期待するのは難しい。

(ユーミリアはかわいそうだけど、仕方ないのよね)

 ルキナたちは、おやつと飲み物を持って席についた。ルキナは、シアンがいないのをいいことに、好きなだけケーキを食べるつもりだ。

「このジュース可愛いですよね。ここでしか飲めないのがもったいないです」

 ルキナのピンク色のジュースを見て、ユーミリアが言う。

「やっぱりこれが有名なやつなのね」

 ルキナは、ジュースのてっぺんに載っているクリームを容赦なくかき混ぜながら呟く。アリシアがカフェテリアがどうとか言っていた。これが例のオシャレなドリンクということになるだろう。

「ご存知でしたか?」

 ユーミリアは、オレンジ色のジュースで、ルキナとは違い、クリームを混ぜる前に一口飲んだ。ユーミリアは何度もこのドリンクを飲んでいるようで、独自の飲み方のルールが確立されている。

「うん。まあ、友達が」

 ルキナはちゅっとストローでジュースを吸う。甘い香りが口いっぱいに広がる。

「先生にはお友達がいらっしゃるんですか!?」

 ユーミリアが驚きの声を上げる。ルキナは、人付き合いが得意というほどではないが、そのような発言は心外だ。ルキナはじとっとユーミリアを見る。

「ちょっと、失礼じゃない?」

「あ、すみません。そういうつもりはなくて。先生にはたくさんのご友人がいらっしゃるのだろうとは思っていたのですが、改めてそういう話を聞くとショックでして」

「なんであんたがショックを受けるのよ。そんなに私にぼっちでいてほしいの?」

「だって、私が先生の唯一の友達になれれば、先生はずっと私とだけいてくださるでしょう?」

「…。」

 ルキナは知らなかった。乙女ゲームのヒロインがこんなにも面倒くさいやつだったなんて。

(半分とはいえ、やっぱり血を分けた姉弟なのよね)

 ルキナはイリヤノイドの顔を思い浮かべた。ゲームをプレイしていた時は、ユーミリアの視点なので、ユーミリアの性格など考えたことがなかった。心優しい、根っからのヒロインタイプだとしか認識していなかった。まさかこんなに独占欲の塊のような発言をする人物だとは思わなかった。二次元がリアルに具現化する恐ろしさを目の当たりにした気分だ。

「さっさと編入手続きをすませて先生と一緒に学校に行きたいです。あ、授業を決める時は、私に教えてくださいね。全部同じにしますので!」

 ユーミリアがばっちこーんとウインクをする。ルキナは無反応で聞き流そうとする。

「ちょっと待って」

 ルキナは額に手を当ててため息を吐いた。先ほど、ユーミリアはルキナと全て同じ授業にすると言っていた。それはつまり、ルキナと同じ学科に編入するということだ。ゲームの設定では、ユーミリアが魔法科で、ルキナは普通科だ。『りゃくえん』の攻略対象たちは、魔法科がほとんどだ。ユーミリアにとって、科の違うルキナが邪魔をしてこない授業の前後が、攻略対象と接点を作るチャンスなのだ。ユーミリアは、そんな設定を変えようとしている。

「魔法科になさいよ」

 ルキナは慌てて考え直すように言う。これ以上ゲームのシナリオが変わるのを阻止しなければ、逆ハーレムへの道がどんどん遠ざかってしまう。それに、こんなに面倒くさいヒロインなら、長時間一緒にいなければならない状況は避けたい。

「私、知ってるわよ。魔法の才能があるって。ていうか、自分でも知ってるでしょ?」

 ルキナは、必死にユーミリアを自分から遠ざけようとする。しかし、ユーミリアも簡単にはひかない。

「でも、もう九回も同じ授業を受けてるんですよ?魔法科に行っても、もう新しく学べることもありませんって」

 たしかにユーミリアの言う通りだ。今までユーミリアは何度も、クリオア学院の魔法科に編入し、同じ授業を散々受けている。他の学科に通って違う勉強をしたいと考えるのは当然だ。だから、ユーミリアは、そもそももうクリオア学院に入るつもりはなかったのだと言ったのだ。

「つまらない授業を受けて、どうでもいい人と話すより、先生と一緒に授業を受けて、先生と話す方が良いですもん」

 ユーミリアはルキナへの愛を語る。

(あ、でも、そうか。ユーミリアが普通科に行くってことは、私の知らないうちに男キャラと仲良くなることもない…!)

 ルキナの顔がぱあっと喜びに溢れる。これはむしろ、ユーミリアの行動を把握するためにも、自分の傍においておくのが得策かもしれない。

「でも、待って。私、ルキナ・ミューヘーンよ。ゲームの設定通りなら、私はあなたに意地悪をする役回りなんだけど」

 ユーミリアが何のためらいもなくルキナに懐くものだから、不思議に思った。いじめをされた人間は、いじめを行った人間を忘れず、許すことはない。ルキナが直接的にユーミリアに意地悪をすることはなかったとはいえ、黒幕がルキナであることはわかっていた。普通に考えて、自分をいじめてきた悪役令嬢にこんなに心を開くのはおかしい。

 そんなルキナの疑問に対して、ユーミリアはきょとんとした。彼女にはルキナが何に驚いているのかわかっていない。

「だって、今までのミューヘーン様とは全然違いますし。先生みたいに前世の記憶があるミューヘーン様には会ったことがありませんよ」

 ユーミリア曰く、今のルキナは、過去に出会ったルキナ・ミューヘーンとは別人なのだそうだ。これほど別人とわりきれるのは見事なものだ。どうやらユーミリアの頭はそうとう柔らかいらしい。

「やっぱり、そういう役回り?とかあるんですね」

 ユーミリアは、この世界が乙女ゲームなのだというルキナの話を信じてくれている。ルキナのゲームが前提の発言も、ユーミリアは簡単に受け入れてくれる。ユーミリアをこんなにも寛容にしたのは、これまで九回も繰り返したという人生があったからだろうか。

「今まで誰と結婚したか聞いても良い?」

 ルキナはためらいがちに尋ねてみた。ユーミリアが過去の人生のことを話しながらないかもしれないという可能性も考えると、デリケートな質問かもしれないと思った。

「最初は、ノアルド様です」

 ユーミリアは何でもないように答えた。ルキナの心配は杞憂だったようだ。ルキナはほっと安堵しつつも驚いた。

(初っ端に最難関!?)

 ヒロインの天性のモテスキルは侮れない。ノアルドは『りゃくえん』内で最高攻略難易度のキャラクターだ。そんなノアルドのエンドを真っ先に迎えるなんて、ルキナの想像を超える能力だ。

 ルキナが驚いているのをよそに、ユーミリアは、

「その後がマクシス・アーウェン様で、タシファレド・ロット様、チカ・ライトストーン君、ベルコル・バリファ先輩、ルイス様、七回目は結婚しなくて、ミッシェル・タンクーガ様の順です」

と、今までの結婚相手を教えてくれる。

「一応、全キャラのエンドを攻略してるわけね」

 ルキナは独り言を呟く。七回目の結婚をしなかった時というのは、きっとイリヤノイドとのエンドだ。

(シークレットキャラは逆ハーエンドにたどりついたら登場するって聞いてたけど、回数的にも、まだシークレットキャラは登場しないってことなのかしら)

 ルキナが黙って考え事をしていると、ユーミリアが首を傾げた。

「どうしてこのようなことを?」

「乙女ゲームっていうのは、分岐点での選択次第でその先のエンドが変わるものが多いのよ。だから、どうなのかなって思って」

 ルキナは考え事をしていたので、たいして何も考えずに答えた。すると、ユーミリアはその少ない情報から、ある一つの結論を導き出した。

「…もしかして、私がその乙女ゲームの主人公だったりしますか?」

 ユーミリアはためらうように問いかけてきたが、その声はある程度自分の考えに自信をもっているようだった。

「え、あっ、いや…んー、その、そんな感じといえばそう、みたいな?」

 ルキナは嘘つくという手段を忘れ、結局、肯定してしまっている。ルキナは誤魔化したつもりのようだが、全く誤魔化せていない。ユーミリアは「なるほどです」と呟いてる。彼女は、自分が『りゃくえん』のヒロインであることを確信してしまっている。

「…そうよ。あなたがヒロインよ。私はその邪魔をするライバル。あなたが結婚した人たちはみんな攻略対象。イリヤも含めてね。ほら、あの人たち、みんな最初はルキナ・ミューヘーンにくっついてたでしょ」

 ルキナはがっくりと肩を落としながら言う。

「先生は、その逆ハーレムを目指しているということですね!」

「そうなんだけど。あなたに言われると、自分が情けなくなってくるわ」

「つまり、まだ逆ハーレムにはいたってないと。やっぱり今までと全然違うんですね。先生はできるだけ運命を変えないようにって頑張ってきたのに」

 ルキナは顔を両手で覆ってぶんぶんと頭を縦に振る。自分が情けなさ過ぎて、ユーミリアに顔を見せるのが恥ずかしいのだ。

「わかりました。私、先生のお手伝いします」

「え?」

「先生の夢は私の夢です。一緒に叶えましょう!」

 ユーミリアがルキナの手をがしっと掴む。ルキナは、あっけにとられながら頷いた。恋愛女王のヒロインが手助けてしてくれると言うのなら、それはたしかに心強い。だが、ルキナはライバル意識のようなものを抱いていたので、複雑な気持ちだ。

(まあ、味方は多い方が良いわよね)

 ルキナは得られる協力はありがたく受け取ることにする。

「ついでに聞きたいんだけど、生まれ変わる度に毎回会う人っている?結婚した人以外で。特に学校での話なんだけど」

 ルキナの質問に、ユーミリアが「どうしたんですか?」と質問で返した。

「実はね、『りゃくえん』にはシークレットキャラがいるんだけど、私、それが誰なのかわからないの。ユーミリアなら何かわかるかなって」

「シークレットキャラですか?」

「うん、そう。一瞬、シアンかなって思った時期もあるんだけど。あ、シークレットキャラもヒロインが攻略するキャラなの。でも、シアンって考えるのは安直かなって」

「私、彼に会ったのは今回が初めてですよ」

「あ、そうなの?」

「それに、同じようなことの繰り返しで、学校で会う人は毎回変化ありませんでした」

「そっか。そうよね。ごめんね。変なこと聞いて」

 ルキナは、いよいよシークレットキャラが誰なのかわからなくて困惑してしまう。

(誰よ。シークレットキャラが誰か確かめずに死んだ奴は)

 『りゃくえん』に異様にはまっていたルキナは、全キャラ攻略を目指した。最終的に、残りシークレットキャラのみになったのだが、シークレットキャラの解放には、逆ハーレムエンドを迎えなくてはならない。だが、ルキナはそこまで至らなかった。

「お嬢様、クマティエさんが呼んでますよ」

 シアンがやって来て、ルキナにカテルのところへ行こうと言う。ルキナは、残っていたケーキを口に含み、ジュースも飲み切った。

「私たち、そろそろ行くわ」

 ルキナは、帰り支度をする。

「そうですか」

 ユーミリアが寂しそうにする。クリオア学院への編入の準備は進めるが、今すぐにというわけにはいかない。しばらくユーミリアはルキナに会えない。

「そうだ、サインもらっても良い?」

 ルキナは、ふとマクシスのことを思い出した。ミユキ・ヘンミルにサインをもらってこいと言っていたが、やはり無理だ。ルキナがサインをもらって帰れば、ミユキ・ヘンミルの正体について問い詰められる。ここは、ユリア・ローズのサインをもらっておくのが得策だろう。

「先生が私のサインを!?」

「あ、友達がね。ユリア・ローズのことを好き?っぽいから」

 ルキナはカバンから色紙を取り出す。なんだかんだ色紙を持って来ていたのだ。ユーミリアは嫌な顔一つせず、ルキナの渡した色紙にサインを描いてくれる。ユーミリアによると、ルキナの役に立てることが何より嬉しいらしい。

「ありがと。それじゃあ、行くわね」

 ルキナはサインが描かれた色紙を受け取ってユーミリアに別れを告げた。


 翌日、ルキナは色紙をマクシスに渡した。

「ミユキ・ヘンミル先生には会えなかったから、代わりに、ユリア・ローズのサインをもらってきたわ」

 そう言ってサインを見せると、マクシスは「おー!」と目を輝かせた。マクシスの望んだものは手に入らなかったが、喜んでもらえたようだ。

「喜んでもらえたのなら良かったわ」

「そういえば、ユリア・ローズも出てたね。昨日の映鏡」

 マクシスが色紙を大事にそうに抱える。

「あ、ねえ、マクシス。シアンは?」

 ルキナはきょろきょろとあたりを見渡す。今朝からシアンの姿が見当たらない。

「知らない?朝からいろんな人に追いかけられてたよ」

「シアン、何やらかしたのよ」

「たぶん昨日のあれのせいだよ」

「あれ?」

「ルキナも一緒にいたんじゃないの?シアン、映鏡に出てたじゃん。ユリア・ローズと一緒に」

「あー…。」

 ルキナは、シアンがユーミリアに引っ張られて映鏡に出演させらていたことを思い出した。どうやら、その影響で、シアンは時の人となったらしい。もともと有名ではあったが、まだシアンに会ったことのない学院の生徒がシアンを追いかけまわしているらしい。

「知ってる?記者が来てんだって!」

「芸能事務所の人もたくさん来てるって」

「正門やばいらしいよ!」

 ルキナたちの前を何やら騒ぎながら生徒たちが通り過ぎて行った。

「あれも?」

 ルキナは、はしゃいでいる彼らを指さしながら、「あれも昨日の映鏡のせい?」と尋ねる。すると、マクシスがこくんと頷いた。

(あの子、なんて置き土産してってくれたのよ)

 ユーミリアのせいで騒ぎになっているのに、ユーミリアはここにはいない。ルキナは、そのことを少し疎ましく思う。

 ルキナとマクシスが話していると、顔の位置でかばんを抱えていた生徒がマクシスにどんっとぶつかった。

「シアン?」

 マクシスがぶつかってきたのがシアンだと確認する。いろいろな人に追いかけられるものだから、顔を隠してここまで来たらしい。

「それ、逆に目立つわよ」

 ルキナは呆れ声で言う。シアンはカバンを下ろして、「そうですか」としょんぼりする。

「堂々としてたほうが良いかもよ。あとは、話しかけにくそうな人と一緒にいるとか」

「そんな人います?」

「さあ」

 ルキナはシアンに適当に考えた解決策を話す。シアンは、ルキナの言う解決策があまり現実的ではないので、実行するのは難しいと言う。

「じゃあ、女装する?」

「それだけは嫌です」

 ルキナの提案をシアンが食い気味に断った。

「まあ、しばらくは我慢するしかないわね」

 ルキナはそう言って歩き始めた。シアンがどこに行くのか尋ねる。

「食堂、行くんでしょ?」

 そろそろ昼食を食べる時間だ。ルキナは当然のようにシアンと一緒に行こうとする。だが、シアンはルキナに迷惑をかけると思っているのか、動こうとしない。

「どうせマクシスはチグサのところに行くだろうし、何も知らない友達より、私みたいに事情を知っている人が一緒の方が良いでしょ?」

 ルキナが腕を組んでマクシスの方を見ると、マクシスはチグサのところに行きたそうにそわそわしていた。ルキナが色紙を渡すためにマクシスを呼び出したのだが、自分がサインをお願いした手前、マクシスは勝手に行ってしまっても良いのか判断しかねているようだ。ルキナは、「さっさと行きなさい」と言うように、手をひらひらさせた。途端に、マクシスが走り出した。

「ねえさまああああ!」

 マクシスはあっという間に姿を消した。ルキナが「ね」とシアンに視線を送ると、シアンは「たしかに」と頷いた。

「感謝しなさい、シアン。私が一緒にいてあげるわ」

 ルキナは、後ろの髪をふぁさっとかき上げた。かっこよく決めたい時は、このポーズで決まりだ。ルキナがキメ顔でシアンを見ると、シアンは「ありがとうございます」と言った。シアンは心から感謝していたが、ルキナがあまりにも上から目線な発言をしたので、呆れたような声になってしまった。

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