これも全部モテるためなんデスケド。
タイムリミットは一年。ヒロインが現れるまでに結果を出さなくてはならない。ルキナは、ベルコルとチカの二人に近づくための二つの作戦を考えた。一つ目は、面白れぇ女作戦。少女漫画で鉄板のセリフともいえる「面白れぇ女」を参考にした作戦だ。少女漫画に登場する男の子は、ヒロインの他の女の子とは違う部分に興味を示す。そうして段々ヒロインに惹かれていくのだ。ならば、「面白れぇ女」と言わせられれば、きっと好きになってもらえる。
(公式設定があればこんな苦労はしなくて良いのに)
ルキナは、作戦を決行する広場に向かって歩きながら、ここにはいない乙女ゲームの公式に文句を言う。恋愛経験が少ないルキナがモテようなどというのは無謀なことだ。自分でもそれなりに自覚している。しかし、それも公式がちゃんとルキナがいかにして逆ハーレム状態に至ったのかという設定を作り、公開していれば、悩むこともなかった。公式の用意したシナリオ通りに動けば良いのだから、モテスキルなど必要ない。でも、悪役令嬢視点のストーリーなど一つもなく、参考にできる情報は何もない。こうなったら自力で考えて動く他ない。幸い、それぞれのキャラの性格は熟知している。各キャラの気を惹ける行動をすれば良い。
一級生の授業日一日目だ。一級生の動きにはぎこちなさがあるので、ここでの生活に慣れていなさそうな生徒は一級生だろう。しかし、ルキナは違う。ルキナはゲームで見たことのある景色で、ある意味慣れている。堂々とした態度で廊下を歩く。今は昼休みなので、皆、講義室を出て、外に向かっている。ルキナはその流れに沿って外に出て、噴水のある広場を目指す。
空は快晴。春の陽気で、なかなか暖かい。作戦を決行するには絶好の日だ。
天気が良いからか、広場には意外とたくさんの人がいる。ルキナはこの人たちが作戦の邪魔をしてこないか少し心配に思うが、とりあえず決行することにする。
噴水に近づき、靴を脱ぐ。素足になった状態で、噴水の中に入る。冷たい水にふくらはぎの半分くらいまで浸かる。制服が水で濡れてしまわないように、スカートを手で軽く摘み上げる。ルキナは、足を水に入れたまま、噴水の縁に腰かける。これで準備万端だ。あとは、ターゲットを待つだけ。
今日のターゲットはベルコルとチカだ。二人とは未だ知り合ってもないうえに、よりによって他人にあまり興味を示さないタイプだ。特にチカは難関だ。チカこそ心を開くのに時間がかかるだろう。
ルキナが『りゃくえん』の攻略対象の情報をまとめながら待っていると、チカが現れた。周りにいた女の子たちがカッコイイ人がいると騒ぎ始める。
(そういえば、チカは男をも虜にする美貌の持ち主って肩書があったわね)
ルキナは立ち上がって、水の中で跳ねたり、水を蹴ったりする。できるだけ楽しそうにはしゃいで見せる。その傍ら、ターゲットである茶髪の少年を探す。がっつり見て目が合ってしまわないように、あくまでさりげなく。
(見つけた)
ルキナは無事にチカを見つけることができた。噴水の陰からチカをチラリと見る。
「は?」
ルキナは思わず声を出してしまった。すぐにはっとして口を閉じた。そこまで大きな声ではなかったので、周りの人には聞こえてはいないだろう。
ルキナは急いでチカの方から顔をそらし、横目でもう一度確認する。チカはたしかにそこにいるが、その隣になぜかシアンがいる。今朝、シアンに作戦の話をした時は、まだ彼もチカと知り合っていなかったはずだ。まさかこの午前中に出会っているとは思わなかった。しかも、一緒に行動するなんて、どんなに仲良くなったのだろう。チカは他人に興味を示さない。そんな彼をシアンはいったいどうやってこの短時間で手懐けたのだろうか。
ルキナは予想外の展開に驚きつつも、作戦を続行する。シアンが近くにいるならば、なんとか協力してくれるかもしれない。ばしゃばしゃと水浴びを続ける。
そこへ、もう一人のターゲットであるベルコルが現れた。これはチャンスだ。二人同時にルキナという存在を認知させることができるかもしれないのだから。
ルキナは気合を入れて、より目立つように水しぶきをあげる。ただ、制服は濡れないようにしないと、着替えに行かなければならなくなってしまう。それはさすがに面倒くさい。ルキナはやりすぎない程度に水の中を動き続ける。
ベルコルが噴水に近づいてきた。チカの方をチラリと確認するが、彼の方は動いていない。
(釣れたのはベルコルだけか)
ルキナは少し残念に思いながらも、最後まで気を抜かないようにする。大事なのは、向こうから話しかけてくるのを待つこと。こちらから話しかけたら、さすがに変な人だ。
(何してるんだって聞かれたら、暖かいのでここで涼をとっていましたのって答えるのが良いかしら。それとも、気持ちよさそうで、とか?いっそ、あなたも一緒にどうですか?もありかしら)
ルキナはベルコルとの初会話を心待ちにしてウキウキする。もう間もなく始まる出会いイベントに期待を膨らませながら考え事をしていると、ベルコルはルキナには目もくれず、通り過ぎていってしまった。
(わかってましたとも。一目惚れなんて都市伝説よ)
ルキナはショックを受けながらも、最初からわかっていたと自分に言い聞かせる。入学式でベルコルがルキナを見ていたのも、一目惚れしたからだなんてことはあり得ない。ただの妄想にすぎない。妄想でも、その場のテンションで思わずドキドキしてしまったが、現実は理想とは程遠い。
ルキナは少し落胆しながら、はしゃぐのはやめた。これ以上やっても仕方がない。ルキナは縁に座って、ベルコルの背中を目で追う。すると、ベルコルはシアンとチカに話しかけた。
(は?またシアン?)
ルキナの作戦は、シアンに邪魔をされたような形で終わってしまった。随分と話し込んでいるが、こちらには話声は聞こえない。
ルキナは諦めて噴水から出ることにする。そうして立ち上がろうとした時、教師が声をかけてきた。
「そこの君」
ルキナは最悪と心の中で呟く。作戦が失敗した上に、先生に怒られるのだ。せめて作戦がうまくいっていれば、誰に怒られようと文句はなかったのに。
「そこから出なさい」
ルキナは、教師に言われるままに噴水から出た。ルキナも自分から出ようと思っていたのだから、あと少しこの人が遅く来てくれれば怒られずにすんだかもしれない。ルキナは、物凄くイライラしながらも、それを表に出さないようにする。ここで反抗的な態度を見せたら、余計に怒られる時間が長引いてしまう。少しでも穏便にすませられるように、いかにも反省しているかのような表情を作る。
「そんなとこで何をやっていたんだ?」
教師がルキナに強く問いかける。ルキナは何か拾い物をするために噴水に入ったと言い訳しようかと思ったが、この教師がどこから見ていたかわからない。下手な言い訳はよした方が良いだろう。ルキナは、気持ちよさそうだったから入ったと答える。
「もう子供じゃないんだし、わかるだろう。こういうところで遊んではいけないって。上級学生になっても、こんなんじゃ、この先やってけないよ。普通は、こんなふうに叱られるこもないんだから。ちゃんと自分で考えなさい」
教師は強めの語気で叱る。ルキナは肩を落として顔を俯かせる。小さな声で何度か謝り、反省しているとわかるような演出をする。教師は、ルキナの態度を見て、もう良いと判断したのか、去って行った。ルキナは教師を見送り、靴を履く。そして、シアンの方に走っていく。チカはもう行ってしまって、シアンのそばにはいない。
「シアン!」
イライラをぶつけるように大きな声を出す。シアンがルキナの方を見る。
「なんで助けてくれなかったの!?先生に怒られちゃったじゃない。先生が来たよ、とか教えてくれれば良かったのに」
ルキナは、作戦のことを伝えた時、シアンもここに来るように言ってあった。ちゃんとした目的を考えていたわけではなかったが、シアンを呼んだのは大人に叱られるというピンチを回避するためでもあった。ルキナがシアンに理不尽な文句を言うと、シアンが申し訳なさそうに、それができなかった事情を話し始める。
「バリファ様に話しかけられたんですよ。その間、お嬢様の方は見てなくて」
ルキナもそんなことは知っている。だが、怒り始めてしまった以上、もう後にはひけない。シアンには少し悪い気はしたが、ここは知らなかったふりをする。
「ガーン」
ルキナは漫画みたいなショックを受ける声を出す。自分で口にして言うのは変な気はするが、これでシアンはルキナがショックを受けているということはわかるはずだ。すると、シアンが追い打ちをかけるように、チカとも話したとも言い始める。
「ガビーン」
ルキナは自分でも笑い出しそうになるのをこらえながら、さっきのようにショックを受けたふりをする。まあ、実際、ショックは受けている。
今までの経験から、シアンがいると、皆シアンにばかり好意をよせてしまう。だから、ルキナは今回、シアンの協力を最初から求めはしなかった。
昔のルキナなら、シアンと攻略対象を先に仲良くならせて、シアンに仲介人として紹介してもらうという手順をとっていた。しかし、シアンが先に攻略対象と仲良くなると、そこにルキナが入る隙間がないくらい、彼らがシアンのことを好きになってしまっていた。今回はそれを避けようと思った。なのに、シアンはなぜか既にベルコルやチカと話をする仲になっている。
「それで、どうなんですか?面白れぇ女作戦は成功しましたか?」
シアンは意地悪だ。ルキナの様子を見れば、結果など一目瞭然だろうに、わざわざ尋ねてくるのだから。
「もういい。次の作戦に移る」
ルキナは怒り口調で言い、ふいっと顔をそらす。
(いいもん。まだもう一個、作戦はあるもの)
ルキナはもう一度同じ作戦を試すことはしないで、さっさと次の作戦を実行することにする。ただ、二つ目の作戦は今すぐに始められるものでもない。決行日を翌日にする。
翌朝、シアンはルキナの変貌ぶりにかなり驚いた。制服のスカートは規定ではくるぶしの上くらいの丈なのだが、それを短くし、膝の上あたりまで脚が見える状態にしている。腰にチェーンをつけチャラそうな演出をし、手首にシュシュをつけてオシャレ好きな演出をする。髪をいつもよりきつめに巻いて、化粧もいつもより派手にした。
「ギャル爆誕」
ルキナはイェーイとポーズを決める。
「これがイメチェン作戦ですか?」
シアンが若干引いている。だが、このくらいやらないとイメチェンにはならない。そうこれはイメチェンで気を惹く作戦だ。いかに容姿を変えるかがカギになってくる。
「イメチェンって、一度ちゃんと知り合ってからの方が効果あるんじゃないですか?」
この作戦のターゲットはベルコルとチカだ。シアンが危惧しているのは、ルキナが二人とイメチェンで興味をひけるほどの関係になっていないこと。よく知りもしない人がイメチェンしようがどうでも良いし、気づかない可能性だってある。シアンはルキナの作戦が明らかに失敗しそうなので心配している。
「別に~、早い方が良くな~い?」
ルキナはシアンの言葉を真剣に聞かない。髪をいじりながら言う。これがルキナのギャルのイメージだ。
ルキナはシアンの反対をおしきって、この姿で過ごそうとする。ルキナは己のことに気づいていない。ルキナは自分で思う以上に焦っていて、やけくそになっている。
「シアンの手は借りないから」
そう言って、ルキナはシアンと別れた。朝食を食べ、ルキナは講義を受けに行く。
「ルキナ様、授業を受けに行くところですか?」
移動中、シェリカが声をかけてきた。
「そうだけど」
「私も一緒に行きます。ティナ・エリ、また後でね」
シェリカは、魔術研究科のティナをおいて、ルキナの横について歩く。ルキナはイメチェンに対するシェリカのリアクションがあまりに薄いので、逆に不安になる。
「何も言わないのね」
ルキナが言うと、シェリカが何のことかと首を傾げる。
「何って、この恰好よ」
「あー、気づきませんでした。リップの色、変えました?」
シェリカが唇の色しか指摘しないので、ルキナは眉をひそめる。
「他にもいろいろ変わってるでしょ」
ルキナが言っても、シェリカは何のことかわかっていない。
「気づかないってことがあるかい!どんだけ私に興味がないのよ!」
「ええ!?なんでそんなに怒るんですか」
ルキナが大きな声を出すと、シェリカがびっくりした。ルキナのギャル風の恰好は、すれ違う人たちが二度見するほど派手だ。毎日のように会っていたシェリカが違いに気づかないはずがない。それなのに、やっぱりシェリカは何もわかっていない。
「もういいわ。なんだか彼氏に変化に気づいてもらえなくてイラ立ってる彼女みたいな気分だから」
「彼氏?ノアルド様がどうかしたんですか?」
シェリカが、ルキナは自分の婚約者の話をしていると勘違いする。
「これは例え話。ノアルド様は関係ないって」
「私がどうかしましたか?」
ノアルドの名前が出たところで、ノアルド本人が現れた。ノアルドはルキナの婚約者で、このウィンリア王国の第二王子である。そして、『りゃくえん』の攻略対象でもある。
「ルキナ、今日は雰囲気がいつも違いますね。何かあったんですか?」
ノアルドがにっこり笑う。しかし、ルキナは緊張して声が出ない。前世において、ノアルドはルキナの推しだった。そんな相手が目の前にいるのだから緊張するに決まっている。ルキナがノアルドと話をしようとしないのはいつものことで、ノアルドは少し寂しそうにため息をついた。
ノアルドは『りゃくえん』のキャラで一番攻略難易度が高い。婚約者であるルキナを溺愛しているため、他の女性にそう簡単になびかないという設定がある。この現実世界にいるノアルドも、ルキナのことをそれなりに思ってくれている。恋愛感情があるのかどうかは疑わしいが、ルキナにとって、他の攻略対象に比べたら圧倒的に攻略しやすい状態にある。ただ一つ問題がある。ルキナがノアルドを前にすると、固まって動けなくなってしまうのだ。過去にノアルドとデートをしたことがあるが、その時は緊張のあまりどうでもいいこともペラペラと話しすぎてしまった。それからは、ノアルドと二人きりになったときはあまり口を開かないようにした。そのせいで、今は、ノアルドと一対一で会話するのがほぼ不可能になってしまった。攻略が簡単そうなノアルドにもこんな状態だから、シアンがルキナにモテスキルを身に着けろと口うるさく言うのだ。
「また気が向いたら教えてください」
ノアルドはルキナの返事を待つのは諦めて、自分の授業を受けに移動を始めた。
「せっかく同じ学校になったのに…。」
ルキナがため息をつく。シェリカが「婚約者がいるのも大変なんですね」と慰めるように言う。
「でも、最近は王子様たちの人気が上がってますから、奪われないように気をつけないとですね。いろいろな人が王子様をカッコイイと言ってるのを聞きますよ」
シェリカがルキナを鼓舞する。
「それは困ったわね」
ルキナはシェリカにつられて笑う。ルキナだって頑張らなければならないと思っている。
いくつか授業を受け、昼休みになった。今日はちゃんとシアンと会う約束をしている。待ち合わせ場所に行き、シアンと合流する。
「お嬢様、まだその恰好だったんですね」
「どういう意味?」
「いえ、誰かが注意するかと思ったので」
ルキナはなるほどと思った。たしかに教師が何も言ってこなかったのはおかしな話だ。
「んー、でも、一応、校則でこういうことしたら駄目って書いてないし、大丈夫なんじゃない?」
ルキナは、制服を改造する前に、校則を確認した。教師が注意をしてこなかったのは校則を破ってはいないからかもしれない。
ルキナはシアンを連れて、昨日と同じ広場に向かう。
「なんで、今日もここなんですか?」
当然、シアンは疑問に思う。
「ここはヒロインとベルコルが最初に会うところでね。その後も度々ここで会ってるし、とにかくここがエンカウント率高めなの」
ルキナは行動範囲が絞りやすいベルコルに狙いを定めている。チカは行動が読めないので、途中で会えることを祈るのみだ。
「あ、ライトストーン君」
シアンがチカを見つけた。
「え?どこ!?」
ルキナがあからさまに喜びの声を出すと、シアンが遠くを指さした。シアンの指さす方向にチカらしき人影が見える。
「ラッキー」
言うが早いや、ルキナが走り始める。シアンはその場で立ち止まったままだ。ルキナは一人でチカのところに行くことになる。だが、別にそれで問題はない。シアンの協力を仰ぐつもりはもとからなかったのだから。
ルキナはチカに近づき名前を呼ぶ。まだ仲良くなっていないので、苗字で。
「…。」
チカはルキナの方を見て立ち止まる。何も言わないが、ルキナの話を聞いてくれるようだ。ルキナはチカが行ってしまう前に話さなければいけないと思い、慌てて言葉を繋ぐ。
「入学式で代表として話をしていた人ですよね?この学校、頭良いのに、その中で首席なんて本当にすごいですね」
ルキナはチカからの第一印象が良くなるようにと、相手を褒めることに集中する。褒められて嬉しくない人はいない。ルキナが一生懸命話していると、チカが口を開いた。ルキナは何を言ってくれるのだろうと期待してチカの言葉を待つ。
「用は何ですか?」
チカは合理主義者だ。意味もない会話を好まない。ルキナがひたすらチカをほめまくったが、それもチカ相手には意味をなさなかったようだ。
「…ごめんなさい」
ルキナはチカとただ話をしたかっただけで、用があったわけではない。チカが嫌がっているのにこれ以上続ける意味はない。謝るしかない。チカは、ルキナには用がなかったのだとわかると、黙って去って行った。
「はぁ…。」
ルキナは大きくため息をついた。もっとちゃんとチカの人となりを研究しておくべきだった。チカは他人に興味はないが、きっと自分自身にも興味がない。ほめられてもそんなに嬉しくないのかもしれない。もしくは、頭の良さについて褒めるのが良くなかったのかもしれない。
ルキナが頭の中で反省会をしていると、男子生徒が声をかけてきた。ルキナが声の主を確認する。
(ベルコルだ!)
ルキナはベルコルが話しかけてきたので嬉しくなる。しかし、すぐに喜ぶべきではないと気づいた。ベルコルの顔は怒っているように見えたからだ。
「その恰好は校則違反です」
案の定、ベルコルはルキナのギャル風の恰好を注意した。
「そんなに脚を見せる恰好をしていては、軽い人間だと誤解されますよ。そのチェーンも、どんな意味があるのかわかりませんが、外した方が良いと思います。見た目で判断されたくなければ、すぐにクリオア学院生らしい恰好にしてください」
ベルコルはそれだけ言って去って行った。
「だめかー」
ベルコルの言っていることはもっともだったが、ルキナは全否定されたかのような気持ちになる。別にベルコルが悪いわけではないけれど、泣きそうな気分だ。
(私、一人じゃ、何もできない)
ルキナは、シアンに助けてもらうしかない状況に陥ったのを残念に思う。自分はもっとできる人間だと思っていた。