9. 面と向かって言うべきデスケド。
「とりあえず、手紙で僕の方から会おうって書くよ」
マクシスはキエラに正体を明かす覚悟を決めた。その第一歩として、手紙で会う約束をする。マクシスは当然のようにキエラにアポイントをとってから会うつもりで考えていた。でも、ルキナはその必要はないと思った。
「そんな手間しなくても、自分から会いに行ったら?手紙持って行って、実は僕ですって言ったら嫌でも信じるでしょ?」
本当はマクシスがしようとしているように、手紙で話を通しておくのが手順として正しいだろう。だが、新しく手紙を出すという行為を踏む度に、一方的に正体を知っていることを隠す時間が長くなり、キエラに対してアンフェアな関係を続けることになる。手紙で正体を明かすという手段もないわけではないが、これほど重要で信じがたい真実を伝えるのに、直接話さないというのはあまりに不誠実だ。
「心の準備とかいるんじゃない?」
マクシスは、さすがにいきなり会いに行ってはキエラの方も困るんじゃないかと渋る。ルキナは「そうだけど」と、マクシスの言うことは認めつつ、自分の主張を続ける。
「向こうから会いたいって言われたことはあるんでしょ?だったら大丈夫よ。というか、もし断られたらどうするの?全てなかったことにしてさよなら?」
マクシスは既に覚悟を決めている。ここにきてさすがに逃げたりしないだろうとルキナは思ったが、マクシスはそれならその方が良いと言いたげな顔をする。
「自然消滅も本来なら悪い手じゃないわよ。でも…」
誠実さは少々薄れるが、キエラの気持ちを守ることを優先するならば、何も知らせないで手紙のやりとりを終わらせるのも悪くない方法だ。キエラに必要以上のショックを与えなくてすむ。マクシスが手を引き、何もかも手紙のことはなかったことにしてしまえるのなら、それも良いだろう。だが、ルキナはそうすべきじゃないと考える。特にキエラに対しては。ルキナにはそう考える理由がある。
「マクシスも薄々気づいてるでしょ?」
ルキナは複雑な表情でマクシスに尋ねた。すると、マクシスは突然へらっと笑顔になって首を傾げた。
「何を?」
マクシスがとぼける。ルキナは、わかってるくせにと思う。
なぜマクシスは笑ったのか。決して楽しい話じゃない。ルキナの表情を見ればそのことは最低でもわかるはずだ。でも、マクシスはそれすらも気づいていないふりをした。それほどマクシスは気づきたくないと思っている。自分で言葉にするのを嫌がっている。
マクシスはここでも受け身であろうとする。自ら決断するのを恐れている。ルキナはあまりに弱気なマクシスに呆れたが、今ここでその根性を叩き直してやろうとはしない。
ルキナは、マクシスが望むように教えてあげる役割を果たしてあげることにする。代わりに、わざと大きなため息をついた。「感謝しなさいよ」と言うように。
「この子はたぶん、マクシス…手紙の相手のことが好き」
ルキナはユーミリアが手に持っている手紙をチラッと見て言った。そこでだいたいの人は目の前にいる人の視線の動きにつられて手紙を見るのだが、マクシスは一切手紙の方を見なかった。マクシスは意識的に手紙を見ないようにしている。これは、本当はマクシスがルキナの言っていることを話に聞くまでもなく知っていて、それを隠そうとしている表れだ。ルキナが手紙の差出人の話を知っているから手紙を見なくても話を理解できるし、手紙の方を見たら最初からわかっていたことがバレてしまうと思っているから手紙から視線をそらそうとする。
ルキナは最初に結論を言うと、その後に具体的にそう思った根拠を話し始めた。マクシスはそれを初めて知ったと言うように「へー」とか「ほー」と関心があるのかないのか判別の付きにくい相槌だけをうった。
「マクシスがそのことに気づかないわけないなんだけどね」
ルキナはマクシスのわざとらしい反応に嫌味を言った。
ルキナが読んだキエラからの手紙は、今ユーミリアが持っている一通だけだ。だが、それだけでもわかるほど、彼女の手紙にはマクシスに対する好きという気持ちがあふれていた。彼女はマクシスに対して強い信頼感を抱いており、同時に強い親しみを感じている。それが言葉の端々に表れていた。
特に今回では手紙の最後には「もし、あなたも今の制度に不満があるなら、一緒に話をしに行ってくれませんか?」と書かれていた。キエラはシェリカに四頭会議反対の運動に参加しに行く節を伝えにいくべきか迷っていると書いていたが、ほとんど気持ちは決まっていた。でも、一人で行けるほどの勇気はないから、マクシスに一緒に行ってほしいと言う。相談というより勧誘だったわけだが、さりげなくマクシスに会いたいということをほのめかしていた。こういう勇気が出ない場面で頼ってきているところを見ても、マクシスのことを相当頼りにしているということが明らかだ。
ここまでキエラの気持ちが明確なのに、マクシスが気づかないとは思えない。マクシスなら、手紙に書かれている貴族界の状況を読み解こうとして手紙を熟読するはずだ。そもそも実際に会って話がしたいという時点である程度悟るものだ。
「なんでそんなこと言い切れるの?ほら、シアンとか全然気づかないじゃない」
マクシスが鈍感代表のシアンの名前を出してきた。そうしてシアンを引き合いに出してきている時点で、マクシスがシアンほど鈍感ではないという証拠だ。シアンが鈍感であることに気づくには、己は周りの人物の気持ちに気づいていなければならない。マクシスはシアンのような人もいるのだから決めつけは良くないと言いたかったのだろうが、逆効果だ。
「マクシスはそういうの得意でしょ」
ルキナはそこまで必死に気づいていなかったふりをしなくてもいいのにと思った。ルキナにいくらそのような主張をしたところで、自己満足にしかならない。マクシスにもプライドがあるのだろうが、ルキナにとってみればそんなのどうでもいい。むしろ、さっさと諦めてほしいくらいだ。マクシスがいちいち突っかかってくるから、いつまでも話が終わらない。
「こういう指摘をされたくないんだったら、シアンに相談に乗ってもらえば良かったじゃない。私と違って鈍いし、なんなら…」
───文通を続けることを許したかもしれない。
ルキナは怒りながらマクシスに文句を言ったが、最後まで言うのはやめた。シアンは優しいから、倫理よりマクシスの幸せをとる可能性が高い。だから、マクシスが自分の利益を優先したいのなら、相談する相手はルキナではなくシアンにすべきだった。とはいえ、マクシスの相談相手の選択ミスがあったとしても、既に結論を出した話だ。ここでその話を持ち出すのは違う。
ルキナがきゅっと口を結んで黙っていると、マクシスが「ごめん」と謝った。
「わかっててルキナに話したから」
ルキナを相談相手に選ぶことで何が起こるか予想がついていた。その上で、マクシスは選択した。散々ルキナを振り回すようなことを言ったが、ルキナにしんどい役目を押し付けている分、ルキナを悲しませるのは彼の本意ではない。
「それならいいわ」
ルキナは、マクシスが全ての責任をルキナに押し付けようとしているわけではないのだとわかると、あっけらかんとした。心の中では少しほっとしつつも、顔にはそのことは出さなかった。自分は傷ついても痛くも痒くもないというかのように。ルキナもまた、マクシスのために責任を負うことを選択したのだ。いつまでもしつこく被害者ぶるのはおかしい。
ルキナとマクシスが一瞬険悪なムードになったのを察して、別の話をしていたシェリカとシュンエルが一時的に話をやめた。でも、すぐに会話を再開した。
「ともかく、女の子の好意を粗末にするのは許さないからね。私は」
ルキナは最後にもう一度マクシスに覚悟を決めるように言った。
キエラは、マクシスが作り出した架空の人物に恋をしている。顔も知らない相手に恋をする。それ自体は決して悪いことではない。ただ問題は、多くの場合、会ったことがないがゆえに自分の理想を勝手に相手に当てはめてしまうということにある。しかも、無意識で、だ。そもそも手紙に書かれた相手の情報すら正しいかどうかも知らないというのに。
そんな彼女のために、マクシスがすべきこと。それは誠意をもって洗いざらい説明すること。マクシスが秘密を明かさずに逃げ、キエラに存在しない人物に対する恋を諦めさせる機会を作らないのは正しくないやり方だ。秘密の暴露がキエラを悲しませることに繋がるのだとしても、彼女の大切な時間を奪うことだけは避けなければならない。ここにおいて、叶わない恋は早々に断ち切ってしまうのがベストだ。
覚悟を決めたマクシスに、ルキナは早めの行動を促した。先延ばしにすれば、きっとまたその覚悟が揺らいでしまう。焦って決めたことは後で後悔するかもしれないが、今回の場合は後悔するくらいがちょうどいい。
マクシスはルキナに言われた通りに、すぐに動くことを決めた。だが、一人では無理だと言う。ルキナに付き添ってほしいと言うのだ。ルキナはなんとなくマクシスならそういうことを言いそうだと思っていた。だから、そこまで驚かなかったし、今さらそれ以上呆れることもない。ここまで来たら最後まで面倒を見てやろうと思い、彼の言葉に従った。
ルキナとマクシスは二人でキエラを探しに行った。キエラは新入生の中で目立つ人だったので、キエラを探し出すのにそう時間はかからなかった。
学生食堂で、キエラは少し早めの夕食をとっていた。彼女はいつも学食が混む前に食事をとりにくるらしい。時間を確認すれば、まだ皆が部活をやっているような時間だった。
ルキナたちも本来の活動日ではないが、女子部で集まって調理室にたむろしていた。本当はもう少し部活の時間が終わるまで、あそこで時間をつぶす予定だった。そういう時間にあえて夕食を食べにくる生徒は少数派だが、全くいないわけではない。ピークの時に食事をとろうと思ったら、席の確保がなかなか大変だ。このくらいの時間の方がゆっくり楽しめることだろう。
キエラを見つけた二人は、キエラの元に近づいた。キエラは一人だった。いつも取り巻きが二人いたはずだが、彼女たちはルキナに目をつけられるのを恐れ、キエラのもとを離れたらしい。取り巻きなんてそんなものだ。自分たちにとって都合が悪くなれば簡単に離れて行く。
「アルーチェさん」
マクシスがキエラを呼んだ。キエラは不意に近づいた二つの影に驚き、顔を上げた。そして、二人の顔を見ると、目を見開いた。
「アーウェン様と…ミューヘーン様…。」
さすがはキエラだ。マクシスの顔と名前もちゃんと覚えている。以前の彼女なら、マクシスに話しかけられたらチャンスとばかりに飛びついていただろう。
だが、キエラはルキナに何か言われるのだと思ったのか、下唇を噛みしめて顔をそっとそらした。キエラは自分がルキナに嫌われていると自覚していて、気まずそうにする。ルキナはそこまでキエラのことを嫌いだと思ったことはないが、これほど怯えられるといじめているような気分になって、ルキナの方もつらくなってくる。
「ごめん。今日話があるのはマクシスの方だから。私は付き添い。気にしないで」
ルキナはこちらを見ようとしないキエラに声をかけた。正直、気にするなと言われても気になるだろう。
(これじゃあ、付き添いじゃなくて、ただの邪魔者じゃない)
ルキナがいるせいでキエラが委縮してしまっている。まともにマクシスと話もできないのではないだろうか。
ルキナが少し席を外すと言おうとすると、マクシスは行かないでと目で訴えて来た。このままではマクシスも話がしづらいだろうに、それでもルキナにいてほしいと言う。
ルキナはやれやれと思いながら、キエラにもう一度声をかけた。シェリカの話を今する気はないとはっきり言い、マクシスの話を聞いてほしいとお願いする。キエラはゆっくりルキナの方に顏を向けた。ルキナが微笑むと、キエラは「わかりました」と絞り出したように言った。ひとまずマクシスの話を聞く姿勢は作ってくれるようだ。無論、身分を重要視する彼女には拒否権が存在しないわけなのだが。
「えっと…隣いいかな?」
マクシスはそう尋ね、キエラからの返答を待たずに彼女の隣に座った。ルキナはマクシスから一席空けて座った。少し距離をとっておかないと、またキエラが怯えてしまう。
(あの子ならすまし顔で話してくれると思ったのにな)
ルキナはキエラの反応が予想と違ったので驚いていた。彼女はあの時ルキナに物怖じしなかった。シェリカの味方ばかりするのはなぜかと文句を言っていたくらいだ。今日もまたキエラは何事もなかったかのようにルキナと話をしようとすると思っていた。
(お父さんたちのせいかしらね)
キエラは父親たちにひどく責められたようだった。ルキナのことも何か言っていたのかもしれない。キエラが変わってしまったのは、どう考えても彼らのせいだ。
(反省してくれるのはいいけど、これはあんまり良くない変化よね)
キエラは今回のことで親子関係に亀裂が生じたのかもしれない。ルキナはキエラの自業自得だとも思えたが、同情を禁じえなかった。
「それで、話なんだけど」
マクシスが話を切り出すと、キエラは「はい」と相槌を打った。ルキナはその様子を見て、教師と生徒の面談みたいだと思った。
「この手紙、アルーチェさんが書いたものだよね?」
マクシスは持って来ていた手紙をキエラの目の前に出した。キエラは何の手紙が出てきたのか見当もつかず、しばらく固まっていた。その後、「え?」と口を開けたまま、マクシスと手紙を交互に見た。彼女はなぜマクシスが文通相手に送った手紙を持っているのだろうと不思議に思っていることだろう。
しばらく絶句していたが、ようやく冷静さを取り戻したキエラはマクシスの出方を伺う。マクシスがどのような経緯で手紙を手に入れ、その手紙を書いた主がキエラだと気づいたのか知る必要がある。キエラはそれを知らずに下手な発言はできない。
「ごめん、急に。本当は手紙でちゃんと話してから会いに来るべきだったんだけど…」
マクシスがそう言うと、キエラはぱちくりとまばたきをした。キエラの文通相手がマクシスだとわかるような発言だった。キエラもその考えには至ったが、まさかと思って信じられなさそうだ。
「僕は君と手紙のやりとりをしてたんだ。偽名を使って。いや、偽名使うのは普通か。でも、名前以外も僕のことは嘘ばっかりで。それで、実は君のことも知ってたんだ。気づいたのはたまたまだけど、気づいたことを言わなかった。ごめんなさい」
マクシスはキエラに伝えなくてはならないことを一通り言葉にし、最後に頭を下げた。キエラは何も言えない様子で、マクシスのことをじっと見つめていた。
「…。」
マクシスはいつ頭を上げるべきか悩んだ。キエラが何か言ってくれないと、動くに動けない。
「…なぜ今会いに来たのですか?何も言わずに返事を送って来なければいいじゃないですか」
キエラが冷ややかに言った。怒っているのだろうか。彼女の立場なら怒ってもおかしくはないのだが、彼女の性格上、怒る時は静かに怒ると言うより発狂するように怒りそうだ。だから、怒っているのではなく、ただショックを受けているだけなのかもしれない。衝撃的な展開で、怒ることができるほど状況を理解できていないのかもしれない。
「ごめん」
マクシスはもう一度謝罪をした。「ルキナに言われたから」とは言わなかった。ルキナを守るためではなく、マクシスが受けるべき責めの言葉だと思ったからだ。キエラを前にして、また人に責任を押し付けようとは考えなかった。
キエラはマクシスが問いかけた理由を答えず、ただ謝ったので、次に何を言えば良いのか迷ったように口を噤んでしまった。
「…手紙に君が大変な目に遭っていて、僕らの活動に参加するか迷っているって書いてあったから。これから知り合うかもしれないのに、何も言わないでおくのはフェアじゃないと思ったんだ」
マクシスはキエラがちゃんとした返事を求めていることに気づき、頭を上げて改めて返答をした。マクシスは自分なりに考えた答えを述べた。それを聞き、キエラは「情報は筒抜けですもんね」と悲観したように言った。本人には特に意図のある発言ではなかったが、マクシスはそれを聞いて罪悪感を抱いたようで、気まずそうに視線を落とした。
ルキナは少し離れた場所で見ていて、マクシスが反省している様子なのを見られて安心した。また、キエラもマクシスの話をちゃんと聞いているのを見て、マクシスに暴露するように言ったのは間違いじゃなかったと思った。ルキナはほっと安堵の息を吐いた。
「でも、アーウェン様で良かったです」
キエラはマクシスの話を聞き終えると、マクシスが文通相手で良かったと言った。文通をしていれば、相手が素性を隠していることなど当たり前のことだとわかっている。キエラはマクシスが手紙で嘘の情報を使っていたことは怒るつもりはない。それでも、相手が誰なのかは不安だ。相手がマクシスだと知って、キエラは安心をしている。
ルキナはキエラは何が良かったのだろうと思った。かつてのキエラなら、マクシスに接近するチャンスを得たと喜んだかもしれないが、第一貴族の人間と親しくなるように言いつけていた親からは見放された状態だ。そこで、親を見返すため、マクシスと仲良くなる機会を得られたことを喜ぶかと言ったら、そうではないだろう。マクシスはルキナと親しい。ルキナからキエラの評判を聞いていないわけがない。キエラはマクシスと親しい関係になることも難しいと考えているはずだ。キエラにとって手紙の真の相手がマクシスだったことで良いことなど何一つないはずだ。
マクシスもルキナ同様、キエラが何に対して「良かった」と言っているのか理解できないようで、困惑している。マクシスが助けを求めるようにルキナの方を見た。ルキナはマクシスに自分もわかっていないのだと言うように首を横に振った。
二人が顔を見合わせていると、キエラが静かな声で言った。
「手紙の相手がアーウェン様とわかったおかげで決意できました」
キエラは真実を知ったことで、ある決意ができた。マクシスはキエラの方を見て、何の決意かと問うた。
「私も、身分制度はなくすべきだと思います」
キエラはルキナたちの運動に参加する決意をした。それを聞いて、マクシスはパッと笑顔になった。そして、キエラにありがとうと言った。
「じゃあ、早速だけど…」
「そのお話はまたの機会にお願いしてもよろしいですか?」
マクシスが自分たちの活動について具体的に説明しようとしたところで、それをキエラが止めた。キエラは謝りながら、今はやめてほしいと言った。マクシスはキエラが食事中だったことを思い出し、すぐに引き下がった。
「また今度ゆっくり話そうね」
マクシスはそう言って席を立った。ルキナもマクシスに続いて席を立ち、キエラの元を離れた。
「あの子、心広くて良かったよ」
キエラから少し離れると、マクシスがルキナに耳打ちした。マクシスはキエラが嘘をついていたことを許してくれたとほっとしている。ルキナは「そうね」と相槌を打つ。
マクシスはすっかり機嫌がよくなっている様子で、ニコニコと笑顔で歩いて行く。ルキナはその後ろに続いていたが、途中で足を止めた。マクシスに気づかれないようにチラッと後ろを振り返り、キエラを見た。
キエラは酷く沈んだ顔でため息をついていた。ルキナたちが去ったことで、本音が顔に出ているようだ。
(キエラの決意って…)
ルキナはキエラの暗い顔を見て、もしかして…と考える。
キエラは真実を知ってとある決意をした。彼女はその決意は四頭会議廃止運動に参加することだと言ったが、彼女は今更宣言をする必要もなかったはずだ。手紙に時点でほぼ自分がどうするか決めていた。つまり、彼女の本当の決意はそれではない。
ルキナはキエラの悲しそうな顔をこっそり見るのは申し訳なくなってきて、そっと顔をそらした。前を向き、マクシスの背中を追いかけた。
(失恋って誰でも辛いものだものね)
キエラは身分違いの恋は叶わないと思い、手紙の相手に抱いていた恋心を捨てることを決めた。キエラは恋を諦める決意をしたのだ。
更新遅くてごめんなさい。6月には毎日更新に戻る予定ですので…。




