4. ナンバーワンとオンリーワン
高級SMクラブ 『辛子浣腸』 の休憩室。
向かいにちょこん、と座った店長は、礼儀正しくミネラルウォーターを私の前に置いた。
「シズナ様、最近何かありましたか? ……どうも身が入ってない、とお客様からクレームがあって」
「あら……どこの思い上がったク○豚ですかしらね……」
「まぁ、不調の時もありますから…… しかし僕は、シズナ様を信じています!」
生粋のM男である店長は、こんな時に 『がんばれ』 だの 『しっかりしろ』 だのと言わないのだ。
ちらりと、申し訳ない、という気がしないでもないけれど。
「だったら私が燃えられるような、良い豚を用意してくださいな」
「はい……かしこまりました。そろそろ、お時間ですよ」
店長に促されて、調教室でスタンバイする。
シャンデリアの明かりの中に黒々と沈む拷問具……
少し前まで、お客様が来るのを待つこの時間が楽しかった。
けれども今は、正直な話、イマイチ気が乗らない。
昭野さんを調教して以来、ほかのどの客を躾けても、なんだか虚しさを感じてしまうのだ。
そんなことでは、ナンバーワンの地位は守りきれないとは、わかっているのだけれど。
(昭野さん…… 許せないわ! 私をこんなにしておいて、あれから1回も来店しないなんて!)
イライラして思わず、ひとりごちる。
「次に来た時には立てなくなるほど調教してあげるから、覚悟おし……!」
と、 「はい!」 と返事があった。
「ありがたき幸せです……!」
言いながら入ってきたのは。
(昭野さん……!)
驚きで、心臓が止まりそうになった。
「あら、どなただったかしら? この汚豚は?」
「なかなか伺えず、申し訳ありません! お詫びのしるし、に、これを……!」
平伏しつつ昭野さんが差し出してきたのは…… 首 輪 。
不覚にも、どきん、と心臓が高鳴る。
「こんなモノで足りるとお思い!?」
「いえ…… もし、よろしければ、この豚めも……」
這いつくばって床に額をすりつける、昭野さん。
ああ……もう…… 卑屈すぎて、可哀想すぎて…… キュンキュンきちゃう……っ!!
「この豚めに首輪をつけて、一生、飼い殺してくださいませんでしょうか……?」
なんて完璧な奴隷台詞……!
こんなの、返事は1つしか、ない。
「ふっ……よろしい」
首輪はどうやら特注品らしい。裏に、こう刻んであるのが読めた。
≡≡≡≡≡
SHIZUNA
masahiko
≡≡≡≡≡
……なかなか良く、わかっている。
私は愛を込めて、ばしっ、とそれを床に叩きつけ、ヒールで念入りに踏みつけ、蹴飛ばした。
「拾いなさい……!」
「は、はぃ……」
這いつくばった彼が、首輪ににじりよった。
首輪を掴もうと伸ばされた手に、赤いヒールの足を重ね、そのまま体重を載せて、ぐっと踏みつける。
「うぅっ……」
「かわいいワンちゃん? 『とってこい』 で使うのは?」
「ぅぅ……」
彼の口に咥えられ、差し出された首輪を手に取り、私は、にぃっ、と、心の底からの笑みを浮かべた。
「満点よ」
少々キツめのその首輪を、彼にカッチリとはめて、鞭で優しくその背を撫で、囁く。
「まずは所有の証を刻んであげなきゃね……?」
「ぜひ……お願いします……女神様……!」
お願い、がチラッと気にくわない私だったが、まぁいいか、と思い直して、彼の背に鞭をふるう。
何度も、何度も……
――― そう。
貴方の気に入らない点については。
一生かけて、調教して、ア・ゲ・ル♡ ―――
「ぁ、ぁ、あ" ひ いぃぃぃぃ……っ!」
~ the one of many happy ends ~
※第4話プロポーズのシーンは一部、砂臥 環さまよりアイデアをいただいております。
砂臥 環さま、ありがとうございます!
※※※※※
読んでくださり、ありがとうございます!
この度のコラボ。実は……
第2話の挿し絵から始まりました。
これ、もともとは、秋の桜子さまから間咲正樹さまへ送られたFAでしたのです。
で、それを拝見した砂礫が、間咲さまに 『このお方で何か書きたいー!何にも話は浮かばないから、コラボしてください♡』 と無理やりなお願いをいたしまして。
数時間後には、間咲さまから、エクフラにゃっぽりーとな原案が送られてきたのです……!
すばらしい!
おかげさまで楽しませていただきましたー!
間咲さま、桜子さま、どうもありがとうございます!m(_ _)m
※続編 『緊縛の輪舞曲 きんばくのロンド ~続・静かなる女王~』 upしております!こちらも宜しくお願いしますー!
『緊縛の輪舞曲 きんばくのロンド ~続・静かなる女王~』
https://ncode.syosetu.com/n1736gg/