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静かなる女王  作者: 間咲 零
2/5

2. 素敵なニセモノと困ったホンモノ

 ゴシック風のシャンデリアが複雑な陰影を作り、棚に並んだ拷問具(おもちゃ)を黒々と浮かび上がらせる。


 私は、豪奢なベッドの上に腰をおろし、品良く脚を組んでいた。

 足先を彩るのは、真っ赤なエナメルのヒール。その前にひざまずいているのは、かわいい私の昭野2号(おきゃくさま)



「靴をお舐め!」


「はい、女王様……」


 足元で動く頭。靴の上から伝わるかすかな舌の感触が、ゾクゾクと背筋に響く…… たまらない。


「そう、上手ね、ブタちゃん…… 御褒美は、いかが?」


「ありがとうございますぅぅっ!」


「良いお返事ね。そんなお返事だと、あなたみたいな駄犬でも、少しは、かわいいわ…… それとも、喜ばれるだなんて……私の躾が悪いからかしら? なら、今度は、そのふにゃふにゃの○○○が立たなくなるほどに痛め付けてあげないとね……?」


 優しく囁きながら、鞭をふるう。


 ぴしっ、ぴしっ……


 鞭が昭野2号(おきゃくさま)の背中に当たる度、増えていく赤い蚯蚓脹(みみずば)れ。


「あ……ひぃっ……もっと……!」


 あら、今のは減点。きちんと調教しなおしてあげなければ。


「今、なんとおっしゃいまして?」


 ぐい、と心を込めて、ヒールで顔を踏みつける。


「あなたの主人は誰なのか、言ってごらんなさい!」


 爪先をぐりぐりと頬にのめり込ませると、「ううううっ…… ぁんっ……」 と昭野2号(おきゃくさま)が呻いた。


「シズナ様です……」


「よろしい」


 鞭を、さっきよりも少しだけ力を込めて昭野2号(おきゃくさま)の背に食い込ませてあげる。


「あ……ひぃぃっ……」


 苦悶と悦楽に歪んだ顔が、なかなか素敵ね。


「さ、最高です! 女王様!」


「ふっ、まだよ! その腐れ○○○で存分に○○○といいわ!」


「ぁ……ああッ……うううううっ……!」


 ひとしきり鞭打った後は、その背に優しく軟膏を塗りこむ。

 無数に走る赤い筋を、一本一本爪でなぞりながら、聞いてあげるのだ。


「さぁ、次は……何をして差し上げましょうか?」


「何でも…… ぁんっ…… 女王様の御心のままに……」


「満点」


 にいっ。唇が妖艶な笑みを形作っているのが、自分でもわかる。


 素直な豚ちゃんは、本当に可愛いわ!


 私は気分良く、滅多にしないサービス…… すなわち、昭野2号(おきゃくさま)の顔の上に、お尻を優雅に載せたのだった。



 ★★★



「ふぅ……」

 休憩室でミネラルウォーターを飲み、軽く目を閉じる。


 お客さまには1人1人、心を込めて接客するのが私のモットーだ。

 楽しいけれども、体力がいる仕事でもある。

 それに、メンタルも重要だ。


 こっちが心の底から感じていれば、お客様の性癖も解放される、という…… そこで私は、どんなお客様でも 『昭野さん』 だと思うことにしているのだ。


(うふふふ……すごく喜んで、苦しそうにしてくれたわ……)


 ひと仕事終わった後も、良かった反応を 『昭野さん』 でリプレイすれば疲れが吹き飛ぶというもの。


「シズナ様」

 スタッフが顔を覗かせた。


「お客様、こられました。スタンバイお願いします」


「わかったわ」


 私は立ち上がり、調教室へ向かう。


 ……さぁ、次はどんな昭野2号(おきゃくさま)なのかしら。





(……って、本 物 ぉっ!?)


 部屋に入ってきた彼に、私の心臓が大きく跳ね上がった。


 そう、次のお客は……まさかの。 『昭野さん』 ご本人だったのだ……!


(ええええっ! 既に覚醒(めざ)めていたの? 昭野さんっっ)


 世の中で自身の性癖を自覚してる人って、割かし少ないんじゃないかと思う。昭野さんだって、確かにM気質っぽかったけど……


(顔が良すぎるから絶対に自覚してないパターンだと思ったのに!)


 ……そして、いつかは私の手で覚醒(めざ)めさせてあげようと妄想するのが、楽しかったのに……


(いえ、これはチャンスよ!)


 私は自分に言い聞かせた。

 もし私だとバレずに満足させることができれば、次回以降は昭野さん(ほんもの)からの指名が増える可能性大!


 けれど、もしバレれば…… いくらM属性でも、部下にたびたび性癖を晒すのは気が引けるだろう。


 ……ということは、絶対にバレるのは、ダメ。


(大丈夫よ! 会社とは全然雰囲気が違うもの!)


 身バレが怖いなど、プロとして失格だ。

 ここで絶対に引くものか……! 私はナンバーワン女王様なのだから。


「いらっしゃい! 罵ってあげるわ!」


 私は鞭を手に、昭野さんに艶然と笑いかけたのだった。



挿絵(By みてみん)

 制作:秋の桜子さま


(Picrewの「ぼくの女王様」でつくったよ! https://picrew.me/share?cd=KXkjeiOcoO #Picrew #ぼくの女王様)

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[一言] >「そう、上手ね、ブタちゃん…… 御褒美は、いかが?」 Σ( ̄□ ̄|||) そ……そういうことだったかwww >ふにゃふにゃの○○○ 拙者も実はよく似たネタで闇夜で書いているでござる …
[良い点] フェイスシッティング! なろうでコレをやった作品を私は知らないw しかし、ドMとは業が深いものですね。 残念ながら共感はできませんが…… 余談ですが、この状況でセクキャバに行って大炎上…
[良い点] いやーいいですね! これは楽しいです! まさかの本人ご来店! どうなるどうなる!?
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