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第二皇女カミラ

 

 数年前から、皇宮には夜に不審な人物が目撃されるようになった。

 大きな黒いイヌを連れた銀髪の女らしいが、近くで見た者は誰もいない。

 時には皇帝の寝所近くに現れることもあったから、近衛隊や警備隊は警備を強化し、過敏なほどに警戒した。しかし、誰も不審な女を捕まえることはできなかった。

 そんな時、第二皇女カミラもこの女を目撃し、ある証言をしたことが事態を動かすことになる。

 彼女は噂の銀髪の女性を自らの妹だと証言し、「本当は足に不自由を抱えていないのではないか」と主張した。


 これをきっかけに、第三皇女リュドミラは人々に疑いの目を向けられる。皇女とはいえ、皇宮を自由に歩けるわけではなく、また皇帝への嘘は罪に問われてもおかしくない。


 しまいには、皇宮にいる人々の意見におされ、リュドミラ皇女の審議が開かれた。あくまで非公式的なものであるが、皇室や貴族の主だった者が集まり、その中央に皇女が引き出された見せしめのような場であった。

 皇女はまるで罪人のように人々の中心に立たされた。皇帝の命で皇女の持つ杖が取り上げられた。

 小さな躰がすぐさまぐらつき、転んだ。うつ伏せになった少女は顔を上げ、ずるずると這った。口の利けない彼女は顔を上げる。琥珀色の目で抗議を訴えた。

 周囲の大人たちはほとんどが皇女の惨めな姿にくすくすと笑う。


「あーあ、みじめね。ほんとうにかわいそうな子だわ。誰も味方がいないんですもの」


 ひときわ大きな笑い声を上げるのは、異母姉のカミラ皇女である。彼女が半分血の繋がった妹を見下し、何かにつけていじめていることは誰もが知っていることだった。






 カミラは爪の色が気に入らなかった。侍女に赤いマニキュアを塗らせてみたものの、その赤みが彼女の気分にしっくり合わない。ピンクに近い赤色ではなく、もっとビビットな赤色に染めてしまいたい。

 指輪も気に入らなかった。婚約者から贈られたものを身に着けろと言われたが、意匠が彼女好みでなかった。

 もっとルビーの宝石を大きく、派手にした方がいい。自分の美貌が引き立つから。

 彼女は宝石箱から出した別の指輪を嵌めた。一夜過ごしただけの愛人がご機嫌取りに贈ってきたものだが、大きなダイヤモンドがついていることだけは気に入っている。

 今度は靴の色が気になった。ソースのシミに染まったような薄いブラウン。用意した侍女は無能だ。早く侍女を首にしなければ。

 ソファーから投げ出した足を蹴り上げて、靴を飛ばす。一人の侍女の頭に当たったのが面白かった。

 いつものように三時間かけて身支度を行っていたカミラの元に、ある侍女が死んだ知らせが入った。


「ふうん。あの侍女死んだのね。頭が悪そうで、いかにも不幸な顔をしていたわね。どうでもいいけれど。……あら、そうなると、あの子は一人きりになるということ? かわいそうだわ、心配ね」


 ふふっ、と口元を扇で隠して笑う。

 そうして裸足の爪にペディキュアを塗らせた。隣で物欲しそうな顔をしている可愛い愛人に。

 身支度はさらに二時間かかった。

 第二皇女の足は東の塔に向かった。


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