表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/67

スリングショット

「手に右利き左利きがあるように目にも右利き左利きがあるんでやす。……そうでやすね、とりあえず親指と人差し指でわっかを作ってその中にレーンの向こうの砂山が見えるようにしてもらえますかい?」

 

美鈴は指でOKサインを作って、その輪を通してレーンの向こうの砂山を覗いた。


「これでいいんです?」


「じゃあ、そのまんま右目と左目を交互につぶってみて下せぇ。両目で見てるのと同じように見えるのが利き目なんでやすよ」

 

言われるままにまず右目だけで見る。指のわっかの中には砂山が納まっている。今度は左目だけで見る。と、砂山はわっかの外に出てしまっていた。


「……ミネコは右目が利き目みたい」


「うちも」


「照準をつける時、利き目で狙えば正確な狙いがつけられるんでやすが、そうじゃない方の目で狙うとぜんぜん違う方に飛んで行っちまうんでやすよ。よし、それじゃそろそろ兄ぃさんたちも準備が出来たみたいでやすんで実際に撃ってみることにしやしょう」

 

気付かなかったが、ジンバの説明を聞いている間に、大介と一成は的の設置を終えていた。


射撃位置から5㍍ほどの距離にターゲットマークの描かれた段ボール箱が置かれ、その後ろには流れ弾を回収するための布製のスクリーンが張られている。


「スリングショットの弾は200㍍以上飛びやすが、獲物を殺傷するのに十分な威力があるのはせいぜい15㍍ぐらいでやす。ただ、まずは狙ったところに当てれるようにならねえと意味がねえでやすから、とりあえず、最初の目標はそこのダンボール箱に弾を命中させることから始めやしょう」

 

そう言いながらジンバが9.5㍉スチール弾の入った容器から弾を一粒取り出してそれを自分のスリングショットにセットし、スリングショットを持った左手を的に向けてまっすぐに伸ばし、ゴムをぐいっと大きく引き絞った状態で静止する。


「スリングショットにゃあ照準器がねえんで、慣れねえと狙ったところに飛びやせん。で、狙い方のコツでやすが、あっしが今してるようにスリングショットを的に向けてまっすぐに構えて、ゴムを引っ張ってる右手を自分のあごか頬にくっつけやす。こうすれば狙いが安定するんでやすよ。……じゃあ、見ててくだせえ」

 

美鈴と結花が見守る中、ジンバのスリングショットがスチール弾を撃ち出し、5㍍先に設置されているダンボールに描かれたターゲットマークのど真ん中にビシッと小気味良い音と共に弾痕を穿った。


「すごい! ど真ん中です!」


「さすがじゃんね!」


「あの通り、ダンボールぐらい軽く貫通するんで、どこに当たったか分かりやすいでやしょう? あの的のターゲットマークは真ん中の円から5㌢、10㌢、15㌢、20㌢になってやす。5㍍の距離から5㌢以内に当てれるようになったら鶏を仕留めるのも出来るはずでやすよ。さあ、習うより慣れでやす。どんどん撃ってくだせえ」


「よーし!」

 

妙に気合の入った結花が早速スリングショットにスチール弾をセットして的に向けて構え、ゴムを引き絞る。


「うっ、思ってたよりゴムが強い……」


顔をしかめながらも何とか自分のあごまで引き絞ったゴムを離す。


――ばふっ

 

弾はダンボールの的にはかすりもせず、その後ろのスクリーンに止められて地面に転がる。


「……てへ。なんか思ってたより難しいかも」


「よし、じゃあミネコも」

 

丁寧に狙いを定めてゴムを放す。


――ぺこっ

 

弾をなんとかダンボールには命中させたものの、ゴムを引く力が弱すぎてダンボールの表面を凹ませただけだった。


「……えーと、ちょっと弱いです?」


「……まあ、最初はこんなもんでやすよ。やってるうちに狙いも集まってきやすし、自然に必要な筋肉もついてきて威力も上がりやすからね。とりあえずここにある弾は全部撃ち切っていいでやすから」


「よーし、頑張ろ! 賞金のために」


「ミネコも頑張ります! 肉のために」

 

不純な動機を前面に押し出してスリングショットの練習を始める美鈴たちに、ジンバがにこにこ笑いながらうなずく。


「いいでやすよ。目標があった方が上達も早いでやすから。どうぞ精進しておくんなせえ」






次は夕方6時

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ