誕生
転生者に選ばれて運命を決めるガチャを引きました。
目が覚めたら見知らぬ天井を眺めていた……。
結構使われてきた表現の様な気がするのだが、実際にそうだから仕方ない。
「あっ、ああぁっ。 ……むー?」
ここはどこなのだろうか、そう言おうと思ったのだが、うまく声が出ないことに気が付く。
そして、なぜか視界がすごくぼやけているという事に気が付いた。
鼻で呼吸をしようとするもとてつもなく息苦しい。
何回か鼻呼吸にトライするが、どうにもできない、おそらくだがすさまじく鼻がつまってしまっているみたいだ。
仕方なく口で息をすることにする。
「……ああっ」
口呼吸をするのは少し面倒だなとため息をついたと思ったら、結構高い声がものすごく近くで聞こえた。
どこから聞こえたのだろうか?そう思い辺りを見渡そうとするが、首が思ったように動かないことに気が付いた。
訂正しよう、動くには動くのだが、力が入らない、まるで自分の荷重に筋肉が耐えられないようだ。
少しずつだが、動くことはわかる。
えっちらおっちら何とか首を右のほうに向けると視界に知らない天井以外の何かが見えた。
「おおぉう、おう」
いったい何なのだろうかと手を伸ばしたが、えらく緩慢にしか動かない。
少しその速度に苛立ったが、首の時もそんな感じ立ったとあきらめて右手を上に伸ばす。
「あ、あぁう!?」
目に映った自分の手であるものを見てえらく驚いた。
なぜなら自分の記憶にある手とはかけ離れていてとても小さかったからである。
どう見ても赤ん坊の手であった。
「あら、起きたのね」
現状の確認をしたいという意思とは関係なく目の前の天井以外の何かからそんな声が聞こえてきていた。
何かと思っていたのは人だったらしくどうやら、その人に抱えられている模様だ。
その人は、こちらの意識があることを確認すると微笑んでいた。
「あなた、起きましたよ。 ほらほら、かわいいおめめを大きく開いていますよ」
「おぉ、そうかそうか」
先ほどとは違う人が、こちらをのぞき込んできたのが分かった。
「ああぅ、あうぁうああーぅ」
のぞき込んできた人に対してあんたひげがすごいなと言いたかったのだが、言葉になることはかなわなかった。
「おおぉかわええのぉ。 さすがお前の子供ってところか。 目とかそっくりだなぁ」
「いえいえ、あなたに似て男前ですよ、この口元とか」
「ああぉうおぅ」
あぁ、なるほどこの人たちは両親なのだなとなんとなく理解した。
――おめでとうございます、■■さん、無事転生成功しました。また会いましょう。しばらくはここでめいっぱい成長しちゃってくださいね。
何か聞き覚えのある自称八百万の神の声が聞こえた。
なるほど、元■■だった自分は、転生して、無事この世界に生まれ落ちたのだな。という事を理解した。
「ああぁぁあう」
理解したとたん緊張が解けた。
証拠に盛大にあくびが漏れ、あらがえないほどの睡魔が襲い掛かってきた。
抗うすべもないし、理由もないため早々に意識を手放すことにした。
面倒なことは明日に回そう、そう決心して。