52・フェアリーテール・26
小悪魔マユ・52
『フェアリーテール・26』
マユは、三人が目覚めるのを一人で待つことにした。
ま、そのうちかかしもブリキマンも戻ってくるだろう……。
最初にもどってきたのは、かかしだった。
「やあ、ドロシー、やっと眠れたんだ。トトやライオンさんまで……ところでキミは?」
ドロシーは、かいつまんで説明した。
「そうだったのかい……小悪魔ちゃんに助けてもらうのは久しぶりだね」
この一言にマユは驚いた。こんな目に遭う小悪魔は自分だけだと思っていたのだ。
「わたしだけじゃないの?」
「ああ、久しぶりだけど、初めてじゃない……」
かかしが、大事な話をしそうになったところで、ブリキマンが帰ってきた。
ブリキマンも、最初は驚いたけれど、ドロシーとかかしが説明すると、同じように懐かしがった。
「ところで、二人は、ドロシーを眠らせるものを見つけられたの?」
「アリスの眠りネズミを眠らせるジャムをもらってきたんだけど、人間に効くかどうかはね……」
「ボクは、ゲンコツ山のタヌキさんから、おっぱいをもらってきた。ただ、寝たあとは、ダッコしてオンブしてまた明日になるから、その先の保障は無いって言われたけど……」
二人とも、自分の成果に自信はなさそうだったけど、すでにドロシーが眠ってしまったので安心したようだった。
「さっき、わたしのこと初めてじゃないって言ってたけど……どういうこと?」
「あ……覚えていたんだね。心ないことを言ってしまった」
ブリキマンは、ボコボコと心の入っていない胸をたたいた。
「ボクは、脳みそがないから、考えも無しに余計なことを言ってしまった」
かかしは、そう言って首を振った。その勢いで、頭のワラが少し飛び散った。
「心も考えも無しに言ってしまったことだけど、ここまで言ったんだ、マユには話を聞いてもらったほうがいいかもしれないなあ……」
ワラをかき集めながら、かかしが言う。
「そうだな……今度のドロシーは少し変わっているからなあ……」
かかしの頭にワラを詰めるのを手伝いながらブリキマンが、ため息混じりに言う。
「今度のドロシーって……どういう意味?」
「ここに来る子は、みんなドロシーなんだ」
「そう、ある日竜巻に飛ばされて家ごと降ってきては、東の魔女を死なせて、オズのところへ行っては、西の魔女のホウキを取ってこいと言われ……」
「いったんは魔女に捕まって、ボクたちが助けて、最後はドロシーが魔女に水をかけてやっつける……」
「で、オズの魔法使いから、ご褒美をもらって……」
「ドロシーはオズの気球に乗り損ねるのよね」
「そう、北の魔女のブリンダが、こう言うんだ」
「靴のかかとを三回鳴らして、『お家が一番いい』って、願う」
この台詞は、三人揃ってしまい、三人は笑ってしまった。
「そういうドロシーが何人もいるわけ?」
「ああ、このドロシーで2012人目」
「ボクは、1953人目」
「……なんで、ブリキマンさんの方が少ないの?」
「そりゃあ、ボクのほうが先輩だからさ」
かかしが自嘲的に言った。
「ボクたちは、時期が来ると交代するんだ。ここで眠ってるライオンさんは、今回が初めてだから、そのへんの事情はよく分からないけどね」
「え……意味分からない」
「ここはね、世界中の女の子……って、みんながみんな、そういうわけじゃないけどね」
「せっぱつまった女の子が、自分探しにやってくるところなんだよ」
「で、ボクたち三人は、その手助けをするために、交代でここに飛ばされてくるんだ」
「ボクはブリキマン。彼はかかし。この寝てるのがライオンとしてね……」
「じゃ、あなたたち、元々は……?」
「「「それは……ナイショ」」」
二人が声をそろえて言った。
「じゃ、トトは?」
「トトは、ただの犬さ」
「ただの犬?」
「ああ、ただの犬」
「……でも、さっき喋ったわよ」
「トトが喋った!?」
ブリキマンとかかしは驚いて顔を見交わし、そして眠っているトトに目を落とした……。




