表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
38/118

38・フェアリーテール・12

小悪魔マユ・38

『フェアリーテール・12』  



――やあ、ここにいたのか!?


 振り向くと、かえでの葉っぱが一枚宙に浮いていた。


「そんなに気を遣わなくてもいいのよ、裸だと風邪をひくわよ」


 赤ずきんが、葉っぱの方を見ないようにして言った。

――でも、姿を現したら、キミが辛いだろうと……。

「もう、気持ちの整理はついたから。それに透明になって身を隠すんだったら、その楓の葉っぱはよしたほうがいいわよ」

――透明でも……ここだけは、きまりが悪くって……。

「その楓の葉っぱがユラユラしてるの、かえっていやらしいわよ」

――そ、そっかなあ……。

「エヘン……あのう、わたしにはちゃんと姿見えてるんだけど」

 マユが、楓の1メートルほど上のところを見ながら言った。楓がびっくりしたように落ちてしまい、マユの顔が真っ赤になった。

――ほ、ほんと!?

「ほんと」

 楓は大あわてで、元の位置にもどると、道の向こうの薮の中に隠れてしまった。

「ごめんね、情けないとこ見せちゃって」

「あれが、赤ずきんちゃんのタソガレの原因なんだね」

「うん……あいつが戻ったら、説明するわね」


 二三分すると、気配が服を着て現れた。むろん姿を現して……。

 マユは、自分たちの斜め向かいに、別のベンチを出してやった。


「ひょっとして、キミがウワサの魔法使い……おっと、危ない。このベンチ、崖のすぐ間際だよ!」

「そう、事と次第によっては、ベンチごと崖下におっことしてあげるわ」

 マユが、ふーっと息を吹きかけると、ベンチが後ろに傾いた。

「ワ、アワワワ……」

 ジャニーズ系のイケメンが吉本のお笑いさんのように、慌てた。


「……と言うわけ」

「……なんだよ」

「エ――!!」


 二人から説明をうけたマユは、レミから話をされたときのように驚き、慌てて口を押さえたが、漏れた鼻息で、イケメンを崖に落としてしまった。

「ごめん!」

 そう叫ぶと、マユはラプンツェルのように髪を伸ばしてイケメンを助けた。

 髪を伝って上がってきたイケメンは、バラエティーで罰ゲームをうけたお笑いさんのようになっていた。


「じゃ、なに、赤ずきんちゃんは、この狼男。それをそうだとは知らずに好きになっちゃった。で、この狼男は、狼になったときに、知らずにお婆ちゃんと赤ずきんちゃんを食べちゃったってわけ!?」

「うん……」

 二人がそろってうなづいた。

「で、でもさ……どうして、そのことが分かったのよさ!?」

「……それは……ね……この人の裸を見たら、お腹に大きな傷があって」

「ボクは、腎臓結石をとったときの傷だと思っていたんだ。だってお母さんがそう言ってたから」

「わたしも、それで納得したんだけどね。デートが終わって、名残惜しいものだから、ずっと彼が帰っていく姿を見ていたの。そうしたら峠を越えた向こうで狼の遠吠えがして……てっきり彼が狼に襲われたと思って、怖さも忘れて駆けつけたの……」

「そうなんだ、赤ずきんちゃんは、自分も裸だったのにもかかわらず、ボクのことを心配して見に来てくれたんだ」

「すると、そのとき、雲がお月さまにかかって……この人が、ちょうど人間にもどりかけているところを見てしまって、思わず叫び声をあげてしまったの。マユちゃんほどじゃないけど、わたしの叫び声もすごくて、あのとき、わたしを助けてくれた猟師さんが駆けつけて……そいつは、こないだお婆ちゃんと赤ずきんちゃんを食べた狼だ。その傷はわたしが縫ったんだからなって」

「ボクは、なにも知らなかったんだ。そのとき、初めて自分が狼男だったってことが分かったんだ……」

 マユは眉をつり上げて聞いた。

「でもさ、そうだったとしてもさ、自分のお腹にいきなり大きな傷ができて、なんとも思わなかったの?」

「ボクは、子どものころから記憶がまだらなんだ。血だらけで帰ったり、服がボロボロになっていたり……そのつど、お母さんが説明してくれて……」

「で……一つ聞きたいんだけども、そんな夕暮れ前に、なんで二人裸でいたのよさ……?」

「それは……」

「ねえ……」


 見交わす二人の目から、☆が出て、ぶつかって、大きなハートマークになっていった……!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ