表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
34/118

34・フェアリーテール・8

小悪魔マユ・34

『フェアリーテール・8』 



「「赤ずきんちゃん……!」」


 レミと白雪姫が、頭のてっぺんから声を出した。


 その二人の声を聞かなければ、赤い服がよく似合う、マユよりちょっと年上の女の子に見えただろう。


「わたし、どうしてここへ?」

「わたしが、魔法で呼び出したの」

「提案したのは、わたし」


 白雪姫が、申し訳なさそうに言った。赤ずきんの顔色が冴えない。でも、目覚めた白雪姫を見て、赤ずきんは素直に喜んだ。


「まあ、白雪さん。生き返ったのね……ということは!?」

「残念だけど、魔法で、わたしが一時的に蘇らせただけ。あと三分ほどで魔法がとけて、また仮死状態にもどっちゃう」

「この人は……?」

「あ、前に話したでしょう……」

 レミが説明しかけると、赤ずきんは分かったようだ。

「あなたが、このファンタジーの世界を救ってくれるのね……で、わたしは何をしたらいいの!?」

 赤ずきんは、とびきりの笑顔になって聞いた。

「実はね……」

 マユが説明すると、三人はエサを撒かれたハトのように顔を寄せ合った。


「「「くちびるの交換!?」」」


 三人の声が、それぞれの頭のてっぺんから出て、三つずつの!と?がみんなの頭の上で、ぶつかりこんがらがってしまった。


「アニマ王子には、明日の朝、会った女性にキスしたくなるように魔法がかけてあるの。だから、明日、この森に来て赤ずきんちゃんにキスをするの。で、その時のくちびるが白雪さんのだったら、それで白雪さんは生き返ることができるのよ!」


「「「なーる……!」」」


 また三人がいっしょに感心した……と!が、また三人分飛び出して、ぶつかって火花を散らした。

「でもさ、お城には若い侍女さんとか、かわいい女の子がいっぱいいるから、その子たちにキスしちゃうかも」

 レミが心配げに言い、白雪姫と赤ずきんがうなずいた。

「大丈夫。効き目が出るのにタイマーをかけておくから。何時頃にアニマ王子は来るの?」

「判を押したように、朝の九時。それから、少なくとも日に三度は来るわ」

「じゃ、九時に……セット」

 マユは、スマホを出して時間をセットした。

「へえ、小悪魔さんでもスマホ使うんだ」

 みんなが感心した。

「スマホ型の携帯魔法端末。人間界にいるもんで、こういう型にしてあるの。じゃ、時間ないからいくわよ」


「「「うん!」」」


 返事が揃って、また三人分の!が飛び出した。

「エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……えい!」

 マユは、スマホ画面の白雪姫と赤ずきんのくちびるを指ですり替えた。

「ああ……」

 白雪姫は、赤ずきんの声を発したかと思うと、クルクルっと二回転して、棺に収まってしまった。

「時間ギリギリだったみたいね」

 マユは、冷や汗をかいた。

「わたし、なんだか歌を唄いたくなってきた……」

 赤ずきんが、白雪姫の声で言った。

「白雪さんて、歌が好きだったから!」

 また!が一つ転がり出てきた。


「いつか王子さまがやってきて~♪」


 赤ずきんは、白雪姫の声で唄いだした。すると、森の向こうからドアーフたちの「ハイホー」の歌声が聞こえてきて、うまい具合にハモった。

「ハイホー」は、いつか、驚きの声に変わり、七人分の歓声になって近づいてきた……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ