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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
27/118

27・フェアリーテール・1

小悪魔マユ・27

『フェアリーテール・1』



「よく食べるわね……」


 里衣紗の声が降ってきた。


 マユが目を上げると、里衣紗と沙耶が並んで立っている。

「あんたたちだって」

 里衣紗と沙耶は、食堂特製のフライドポテトを持って、ホチクリ食べていた。

「あたしたち、Bランチと、これだけだよ」

 沙耶に言われて、マユは自分のテーブルに目を落とした。


 A定食(B定食に、ぶっといトンカツが付いている)に、かき揚げ丼、きつねそば、脇には、沙耶たちより一回り大きなフライドポテトが、ドデンと置かれていた……たしかに多い。

「あ、昨日AKRのレッスンとかあったし……」

「でも、知井子は、あれだよ……」

 里衣紗の目線の先には、テーブル二つ分向こうに知井子が、玉丼の空になったのを置いて、アイスを舐めながら、練習曲のスコアを見て、テーブルの下、足だけでステップの練習をしていた。

「同じAKRなんだよね……」

「あ……わたしの体って、燃費悪いのよね。アハ、アハハハ」

 と、その場はごまかした。


 マユの体は、二人が同居していた。マユと、幽霊の浅野拓美……。


 マユは小悪魔ではあるが、体は、まったくの人間である。使っただけのエネルギーは補給しなければならない。それも、今は二人分。当然、食事もするしトイレにも行く。


 で、今、マユは女子トイレの個室の中にいる。と言って、用を足しているわけではない。いくらラノベとはいえ、トイレの個室の状況を描写することまではしない。

 しかし、トイレ本来の使い方をしていなければ別である。


――ねえ、拓美。わたしの体に同居してるのは……まあ、同意する。暫定的にだけど。

――ごめんね、レッスンで体力使うもんだから……わたしって、サブリーダーでもあるわけでしょ。スタジオには一番に入って、最後に出るの。

――リーダーの大石さんもいるでしょう。

――クララはクララよ。トップとサブは自転車の前と後ろ。どっちが力を抜いても自転車は進まないわ。

――でも、拓美って幽霊じゃん。空気も吸わないのに、食事はするわけ?

――マユの体に入っているから、お腹が空くの!

――拓美って、生きてたころ、かなりの大メシ食いだったんじゃないの?

――そういうマユの体こそ、燃費悪いんじゃないの。自分でも言ってたじゃないの。

――あの状況じゃ、ああでも言わなきゃ、ごまかせないじゃん!


 そのとき、個室がノックされた。


「あ、ごめんなさい、今空けるから……」


 マユは、急いで水を流し、個室を出た。

 目の前に、知井子ぐらいの背丈のカワイイ子が立っていた。


 手を洗いながら、鏡越しに他の個室が全て空いていることに気づいた。

 そして、今の子が、個室に入らず、じっとマユを見ている。

 鏡の中で、視線が合った。マユは、少しドキリとした。


「あなた、小悪魔のマユさんね」


 その子は、ニコリともせずに言った。

 マユは、大いにドキリとした……。



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