24・AKR47・1
小悪魔マユ・24
『AKR47・1』
「それでは、これからの企画と予定を発表します」
シアターに集められた受験者に、黒羽ディレクターが向き合った。
「このユニットの名前は『AKR47』とします。意味はHIKARIプロの明るい未来の希望の『AKARUI』からとりました」
マユの消去魔法が効いて、48が47に変わっている。もうみんなの頭から拓美という女の子の記憶は、ほぼ完全に……消えていた。
「このユニットのキャッチコピーは『週末アイドル』。ここにいる大半の人は中高生です。高校を卒業するまでは、学校との両立をはかってもらいます。別の言い方をすれば、その両立の条件の中で、本当に生き残り、力をつけたメンバーでより進化したユニットに成長させる。いわば『成長するユニット』が、第二のキャッチコピーです」
47人の顔が引き締まった。
その後、当面のレッスンや、マスコミへの発表などについて説明があり、正式にHIKARIプロとの契約の書類が配られた。
マユは、ちょっと困った。
「早まったかなあ……」
選考会場からの帰り道、知井子のお父さんとお母さんが車で迎えにきていた。すっかり明るく自信を取り戻した知井子に、お父さんも、お母さんも大満足。ユニットの選抜メンバーに選ばれたことよりも、娘が明るく前向きになったことを喜んでいる。知井子の問題は一段落した。そう思って、食事を勧められたが、マユは丁重に断った。
「ねえ、マユさん……」
大石クララに呼び止められた。
二人は、公園のベンチに並んで腰をかけた。
「わたし、何かしっくりこないのよね」
揃えた足の先を見るようにしてクララが言った。
「何が、しっくりこないの?」
「バカなこと言うみたいだけど、わたし、もう一人いたような気がするの」
「もう一人って……」
「だれだか、分からないけど、わたしより輝いていた子が……」
「錯覚よ。あれだけがんばったオーディションが終わって、ホッとしてさ。がんばっていた自分が別人みたく思えて、そう感じるのよ。そう、わたしたちがんばったんだから!」
足許にたむろしていた、鳩たちが、何かに驚いたように飛び去った。
「……その目、その目よ」
「え、わたしの目が……どうかした?」
「その目は、マユさんの……いえ、んなわけないわよね。でも……マユさんの目って、力は感じたけど、もっと……今のマユさんの目、虹がかかったみたい……ああ、なんだろ。ここまで出かけてるんだけど。もどかしい」
マユの目はウロタエながらも輝きを増してきた。
そして、もう一人のマユは、自分の魔力の至らなさを感じていた……。




