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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
24/118

24・AKR47・1

小悪魔マユ・24

『AKR47・1』



「それでは、これからの企画と予定を発表します」


 シアターに集められた受験者に、黒羽ディレクターが向き合った。

「このユニットの名前は『AKR47』とします。意味はHIKARIプロの明るい未来の希望の『AKARUI』からとりました」

 マユの消去魔法が効いて、48が47に変わっている。もうみんなの頭から拓美という女の子の記憶は、ほぼ完全に……消えていた。

「このユニットのキャッチコピーは『週末アイドル』。ここにいる大半の人は中高生です。高校を卒業するまでは、学校との両立をはかってもらいます。別の言い方をすれば、その両立の条件の中で、本当に生き残り、力をつけたメンバーでより進化したユニットに成長させる。いわば『成長するユニット』が、第二のキャッチコピーです」



 47人の顔が引き締まった。


 その後、当面のレッスンや、マスコミへの発表などについて説明があり、正式にHIKARIプロとの契約の書類が配られた。


 マユは、ちょっと困った。


「早まったかなあ……」


 選考会場からの帰り道、知井子のお父さんとお母さんが車で迎えにきていた。すっかり明るく自信を取り戻した知井子に、お父さんも、お母さんも大満足。ユニットの選抜メンバーに選ばれたことよりも、娘が明るく前向きになったことを喜んでいる。知井子の問題は一段落した。そう思って、食事を勧められたが、マユは丁重に断った。


「ねえ、マユさん……」


 大石クララに呼び止められた。

 二人は、公園のベンチに並んで腰をかけた。

「わたし、何かしっくりこないのよね」

 揃えた足の先を見るようにしてクララが言った。

「何が、しっくりこないの?」

「バカなこと言うみたいだけど、わたし、もう一人いたような気がするの」

「もう一人って……」

「だれだか、分からないけど、わたしより輝いていた子が……」

「錯覚よ。あれだけがんばったオーディションが終わって、ホッとしてさ。がんばっていた自分が別人みたく思えて、そう感じるのよ。そう、わたしたちがんばったんだから!」

 足許にたむろしていた、鳩たちが、何かに驚いたように飛び去った。

「……その目、その目よ」

「え、わたしの目が……どうかした?」

「その目は、マユさんの……いえ、んなわけないわよね。でも……マユさんの目って、力は感じたけど、もっと……今のマユさんの目、虹がかかったみたい……ああ、なんだろ。ここまで出かけてるんだけど。もどかしい」



 マユの目はウロタエながらも輝きを増してきた。


 そして、もう一人のマユは、自分の魔力の至らなさを感じていた……。



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