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小悪魔マユ  作者: 大橋むつお
21/118

21・知井子の悩み・11

小悪魔マユ・21

『知井子の悩み・11』



「浅野さんと桜井(知井子)さんには驚きました! いいものを見せていただきました、ありがとう!」


 大石クララの賛辞は本物だった。その証拠にマユへの誉め言葉は、一つも無かった。


「ありがとう……」


 拓美の返事が完全に言い終える前に、クララは続けた。

「浅野さんのパフォーマンスは特にすごかったわ。全身全霊で唄って踊って……なんだか、もし世の中に天使がいるんだとしたら、こんな風なんだろうなあって、思ったわ!」

 ――天使って、そんなにいいもんじゃないのよ(おちこぼれ天使の雅部利恵のドヤ顔が浮かんだ)と、思いつつ、マユはクララの素直な感動はよく分かった。

「う~ん……天使じゃ言い足りないわね」

 ――いい感想(雅部利恵のドヤ顔がズッコケた)


「天使みたいという点じゃ、桜井さんも同じ。浅野さんのは……なんてのかな。命賭けてますってのか、ここまでできたら死んでもいいや! そんなスゴミ感じちゃった」


 ――鋭いわね、本人も、そう思ってやったんだから。

 拓美は、ひどく嬉しかった。この世から消える直前、それも数時間後には誰の記憶にも残らない自分のパフォーマンスを、心から感動してくれる大石クララが、いま出会ったばかりなのに、何年も付き合った心の友のように思え、メアドの交換までやってしまった。

 ――やれやれ、これで消去しなければならないものが一つ増えた。


 長引いた審査も、昼食後三十分ほどして、ようやく終わった。


 マユは、審査員の心を読まないように苦労した。読まないようにしていても、審査員の興奮はダイレクトにマユの心に伝わってくるのだ。新聞の号外を目の前に広げられて、見出しを読まないぐらいの苦労がいった。


「マユ、なにブツブツ言ってのよ」


 知井子が、面白そうに聞いてきた。マユは無意識のうちにダンテの「神曲」を暗誦していた。ダンテの「神曲」は、小悪魔学校二年の必修で、暗記しなければならないが、マユは、この暗記が大嫌いで、自分から進んで暗誦したことなどなかった。それを無意識に唱えるのだから、マユの緊張もかなりのものである。


 で、マユは感じた。審査員長の心に迷いがあることを……。


「では、審査結果を発表します。長橋さん、よろしく」

 名目上の審査委員長が、先輩アイドルユニットのリーダーを促した。

「はい、では、発表いたします。HIKARIプロ新ユニット合格者十六名の方々の受験番号とお名前を……」

 

 長橋みなみが全十六名の名前を読み上げると、感激と落胆のオーラが等量に感じられた。それは非常に強いもので、マユは頭が痛くなり、思わずしゃがみこんでしまった。

「マユ、しっかりしてよ。マユも、わたしも、拓美ちゃんも、さっきのクララちゃんも合格だわよさ」

「え……わたしまで」

 視線を感じた、その視線にはメッセージが籠められていた。


――いま、いまよ、この幸せの絶頂でわたしを送って!


 向けた視線の方角に、拓美の泣き笑いの顔があった。マユは想いは残ったが、これを外してはきっかけを失うと感じ、ここにいる全員の記憶を消去するために、両手を後ろに回し、悪魔クロスを作り、密かに呪文を唱えた始めた……。



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