もしも女子高生が異世界のコンビニをマネジメントしたら
ここはとある、剣と魔法とインターネットが発達した世界のコンビニエンスストア。ある程度なんでも欲しいものが揃う夢のようなお店である。剣も薬草もUSBメモリーも一通り手に入る。そのお手軽さとは裏腹に、経営者は熟考に熟考を重ね、店の立地からサービスや内装までも拘らなければ、コンビニの隣にコンビニとまで言われる今の世の中生き残っていけない。どうしてここまでコンビニは密集するのか。インターネットで検索したらナッシュ均衡とかいう難しい言葉が出てきたので宮野は考えるのをやめた。
「今週も売り上げ落ちちゃったなぁ……」
PCの画面を見ながら宮野はため息をつく。データとは残酷なものだ。正確に、無慈悲にダメ出しをされている気分になる。
『店長、おはようございます』
スタッフルームの扉が開き、アルバイトの女子高生ミカちゃんが入ってきた。
『あれぇ、店長元気ないですねぇ』
女子高生に気付かれるほど意気消沈していたのか。ますますへこんでしまう。そこでふと、宮野にある考えが浮かんだ。若い柔軟な意見を取り入れることが出来れば、このコンビニも立て直せるのではないだろうか。
「ミカちゃん、すこし相談があるんだけど」
『クビとか言うのやめてくださいよ! もしクビになったら、私ここで舌を噛み切って死んでやる!』
鬼の形相で叫ぶミカ。
「怖いし、そうじゃないよ……。近頃このコンビニの経営状況が良くないからなにかアイデアが欲しくて」
『あっこのコンビニ潰れるんですか。お疲れ様でしたー』
ニッコリあっけらかんとしながらお辞儀をするミカ。
「君はクビは嫌でも潰れるのは構わないんだね」
『プライドの問題です』
コンビニのバイト程度に命を懸けるプライドがある人を初めて見た。
「実は、思い切ってこの店の内装を変えようと思っているんだ」
そう、心機一転するために、思い切ってすべてを変えてしまおうというわけだ。
『……おもしろそうですね』
幸いにしてミカも乗り気のようだ。
「それじゃあ、これを見てくれるかい?」
宮野はパサリとこの店の見取り図を広げた
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダルト誌]
[肉まん]
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『成る程平凡ですね』
「平凡だからこそ平均的な売り上げが見込めると思ったんだけど残念ながら売り上げは落ちる一方で……」
『ねぇ店長、この店は男女どっちが来店率高いんですか?』
「うーん、どちらかと言えば男だね」
『じゃあこういうのはどうですか?』
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[アダルト誌] [アダルト誌]
[肉まん]
レ [アダルト誌] [アダルト誌]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [アダルト誌] [アダルト誌]
レ [アダルト誌] [アダルト誌]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [アダルト誌] [アダルト誌]
[アダルト誌] [アダルト誌] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「男の色欲しか感じないよ……」
『いつでもアダルト誌が買える便利な店です』
「これコンビニかなぁ……」
『一応肉まんとおかず類は残しましたよ?』
「違う意味にしか見えないよ……」
『でもこれで、世界一アダルトなコンビニとして有名になるかも』
「不名誉だよ?」
『うーん、折角ですし、ここまで変えるならいっそもっと振り切れましょう』
ーー[アダルト誌]ーーーーーーーーーーーー
[アダルト誌] [アダルト誌]
[肉欲]
レ [アダルト誌] [アダルト誌]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [アダルト誌] [アダルト誌]
レ [アダルト誌] [アダルト誌]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [アダルト誌] [アダルト誌]
[アダルト誌] [アダルト誌] [アダルト類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「入り口無くなったよ?」
『あふれる性欲が止まりませんね』
「あとケースに入った肉欲ってのはなに?」
『肉まんを食べたい欲です』
「言い方言い方」
『うーん、……でもまだ足りないなぁ』
「ねぇ、もうやり直さない?」
『私のプライドが許しません』
「なんのプライドなのよ……」
『そうだ! これを忘れてた!』
ーー[アダルト誌]ーーーーーーーーーーーー
[アダルト誌] [アダルト誌]
[肉欲]
ト [アダルト誌] [アダルト誌]
イ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
レ [アダルト誌] [アダルト誌]
ト [アダルト誌] [アダルト誌]
イ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
レ [アダルト誌] [アダルト誌]
[アダルト誌] [アダルト誌] [アダルト類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『トイレです!』
「そろそろやめにしないこの話? なんか僕、アダルトがゲシュタルト崩壊してきたよ」
『……ですね。トイレだけに水に流しましょう』
「うまくないよ?」
見取り図を直す宮野。
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダルト誌]
[肉まん]
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『相変わらず平凡ですね』
「アダルト誌しかない店よりはマシだよ」
『ここでお客さん登場』
●←アダルト氏
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダルト誌]
[肉まん]
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「だれ?」
『アダルト誌大好きアダルト氏です』
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダルト誌]
[肉まん] ●
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「アダルトさん入店したね」
『ですね』
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダルト誌]
[肉まん] ●
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『まっすぐアダルト雑誌へと向かいましたね』
「うん、まあ君が動かしてるんだけどね?」
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダ●ルト誌]
[肉まん]
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アダルト誌に飛び込みましたよ!』
「こんな人が本当にいたら警察呼ぶよ?」
「アダルト誌のハーレムだぁ!」
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダ●ルト誌]
[肉まん]
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『アダルト氏大喜びです』
「てか君は恥ずかしくないの? ねえ?」
●
ーー[出入口]ーーーーーーーーーーーーーー
[雑誌類] [アダルト誌]
[肉まん]
レ [ガム] [ネット用品]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 [洗剤] [回復薬]
レ [武器] [缶詰]
ジ ーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 [お菓子類] [酒類]
[おにぎり] [弁当] [おかず類]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『すぐに帰って行きましたとさ……』
「せめてなにか買っていって欲しかったね」
『やっぱトイレがないのはマズくないですか?』
「いまのでトイレをつけたくなくなったよ?」
『うーん……あれ? てかもう私のシフトの時間じゃないですか』
気づくと時計は午後5時を指していた。もう交代の時間だ。
『じゃ、行ってきまーす』
明るい調子でスタッフルームから出て行くミカ。
「…………」
ただただ、不毛な時間だった。