らびぅこーる
僕なんていう人間ははっきり言って、落ちて落ちて落ちてしまった落ちこぼれくらいが丁度いい。
当時通っていた、偏差値普通の高校などとっくの昔に馬鹿校となり、少々寂しいビールなしの生活ライフを送ってるというわけで。おまけについ最近、リストラなんてくらっちゃって、収入源がパチンコのみという悲劇。でもパチンコをしている間は二番目に幸せなんだ。だってそんなことさえ忘れちゃうから。
でも落ちて落ちて落ちてしまった落ちこぼれの中でも唯一、僕には希望の光があるんだ。それは二年前に出会ったヒズミちゃん! 彼女だけが僕の女神様なの。ううん、彼女だけでいいや。そう、ヒズミちゃんだけが、僕を癒してくれる素敵な神様。
そんな彼女に僕は、いつでも祈りを捧げてるんだ。例えば気を紛らわせる散歩途中、ヒズミちゃんと永遠に呟いたり、ヒズミちゃんを撮った写真を見ながらデレデレしたり、彼女と僕の電話が動きだすように願ってみたり……。日によって捧げる祈りは様々だ。
そこで。今日もお祈りをしようと思う。最近、電話をしていないから、昼食でも抜いて長電話をしよう。
愛しいヒズミちゃんへの電話、電話。いけない、顔がニヤついてそうだ。いけない、ヒズミちゃんに嫌われちゃう。
8、0、3、8、Z、Z、3、8、Z、Z、3、ヒズミちゃんとつながるための、素敵な番号だ。ベルに感謝感謝。
「ああ、ヒズミちゃん? 愛してるよ、僕が一番に考えるのはヒズミちゃんだから! あ、誰だかわかる? 僕だよ僕、ネバオ!
ちょっとさぁー、ひっさしぶっり〜に、ヒズミちゃんのきゃわいい声が聞きたくなっちゃって!
それで、今日はね。何で電話したかって言うとね。いつものようにお祈りじゃあないんだなぁこれが。デートのお誘いだよ! 愛されてるね、ヒズミちゃん! ふふ、ハトだらけの公園に僕がごしょうたーい! ……ごめんね、本当は僕だってヒズミちゃんに高級フレンチでも食べさせてあげたいけど、そんなことしたら僕の死は確定しちゃうからできないや。そんなことになったらさ、ヒズミちゃんと会えなくなっちゃうから……」
『あきらめ悪いなセクハラ教師。俺がお前をもっと不幸にしてやるから覚えてろ』
毎度のように、受話器の向こう側からは、低い男の声が聞こえ、ヒズミちゃんの声は聞こえなかった。それは聞き覚えのある男子生徒の声でした。