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亡国の姫生活  作者: Yukie
第二章 囚われの姫と未知なる敵編
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皇帝とご対面 前編

今月、卒業課題の締切があるのでしばらく不定期になります。

新章突入です。

お気に入り登録100件ありがとうございます。

今回すこし短めです。


 外から見ればただの高級な馬車にしか見えないが、中は鉄の檻で囲まれている。

 そんな中での生活も一週間が経った。

 檻の中には私と妹のクラリス、そして二人分の毛布のみ。

 食事は一日三食で一応窓もあり外の景色を見ることもできる。


 馬車の外から聞こえた会話によると、既に国境を超え、グルリア帝国領に入っているそうだ。


 あの後、私が目が覚めたときにクラリスから何度も泣きながら謝られたのだが、クラリスは何も悪くない。

 クラリスはメイドのルゥさんとちゃんと避難していてくれていた。

 悪いのは避難している方にも帝国軍が向かう可能性に気がつかなかった私のせいだ。

 資源が豊富な国だったために、狙いがそれだと勝手に決め付けてしまった。


 私はクラリスに謝り、クラリスは私に謝る。

 そんなこと状態が続き、私たちはお互いを許した。

 これはただ、お互いが許して欲しかったんだと思う。そして、お互いとても不安で仕様がなかった。

 起きているときは常に体のどこかが触れ合い、寝ているときは抱き合って寝ている。


 この後、私たちがどうなるのか詳しくはわからない。

 けれど、大体は予想がつく。

 人質にされたり、操り人形にされたり、誰かと無理やり婚姻させられたり。


 人質はすでに意味をなさないから除外するとして、残るは操り人形か、嫁か。

 あるいは両方かもしれない。


 妹のクラリスは他国にも回復魔法の天才という話が広まっている。

 私は未知なる武器刀と氷の魔法の事が広まっているそうだ。

 なので、妹はグルリア帝国で回復魔法要員として操り人形にされたり。私はこの魔法を封じる腕輪があるのでよくわからないが、戦争に投入されたり。

 ありえない話ではない。どちらかというと、ありえる方が確率が高い。


 クラリスは回復魔法の事は広まっているのだが、攻撃系の魔法については全く広まっていないらしい。

 それも、普通は一つの部分だけでもこの歳で上級以上というのはとても珍しい所為であり、クラリスは攻撃魔法が使えないと判断されているのか、私と違い魔法が使えなくなるこの手錠はつけられていない。


 こんな檻の中でできることはほとんどない。

 クラリスと会話するか、外を眺めるか、何もしないか。そのくらいだ。


 私の膝を枕にして眠っているクラリスを空いている方の手で優しく頭を撫でる。

 撫でていない方の手は、クラリスと手を繋いでいる。


 寝ているクラリスを撫でていると、馬車が歩みを止めた。

 それと同時に馬車おりの外から話し声が聞こえる。


「グレイシス・アーハイスだ」

「―――――っ! 商人とかは後回しだ! 急いで道を開けろ! グレイシス将軍が帰還なされた!!」

「「はっ!!」」



 そんな会話が外から聞こえた後、すぐに馬車は再び動き始めた。


「……ん、お姉さま?」


 先の会話と馬車の動き出した時の振動で目が覚めたようだ。

「ついたみたいだね、グルリア帝国の首都に」


 クラリスを不安にさせないよう、今までと同じように明るい口調で話しかける。


 クラリスは体を起こし、私と一緒に立ち上がり、窓から外の景色を見る。


 ある人は、客であろう青年にリンゴを持って話しかけていたり、ある人は、男女で並んであるきながら会話をして、ある人は、通りの隅で日が沈む前から連れと一緒に酒を飲んでいる。

 その多くの人が生き生きとして幸せそうな様子だった。

 

 ミステアの人々が必死に避難しているときも、私たちが死ぬ気で戦っていた時も目の前の人達は笑っていたのだろう、と考えてしまった。


グルリア帝国民は何もしておらず、悪くはないと分かってはいても、負の感情が湧いてくる。


「……お姉さま」

 

 横からギュッと抱きしめられ、クラリスの方へ顔を向けると、不安そうな表情でこっちを見つめていた。

 私の雰囲気を感じ取ったのだろう。


 気を落ち着かせ、クラリスに礼を言う。

「ありがと」


 こういう状況だとふとした事で悪い方へ流れてしまう。

 今みたいにクラリスを不安にさせないように気をつけなければ。


 

 それからしばらく経った頃、再び馬車が止まった。

「これを付けろ」


 馬車のドアが開けられ、二つの手錠を渡される。

 渡された手錠は今私が付けているものと違い、鎖がついていた。


 私とクラリスが手錠を付け終えたのを見たそいつは、懐から鍵を取り出し、檻の鍵を開ける。

「さっさと降りてきりきり歩け」


 返事はせず無言のまま、馬車から降り、目に入ってきた景色は大きな城。

 

「これからお前たちを陛下に献上する」


 どうやらこれから向かうところにはグルリア帝国の皇帝がいるそうだ。


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