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亡国の姫生活  作者: Yukie
第一章 ミステア王国の滅亡編
2/7

武術と魔法

 すべてを思い出した翌日。

 目を擦りながら体を起こし、自分の部屋を見渡す。

 天蓋付きのベッド、高そうな調度品、床は全面紅をベースにし、模様が入った絨毯。天井にはよくわかんないけど絵も描かれている。

 窓は安全のためか、開かないけれど、これも絨毯みたいに模様が入ってる。

 ベッドから降りて、窓のそばに行く。

 この城は王都で一番高いところに建っており、窓からは王都が一望できる。

 

 その景色を見ながら今後について考える。

 私は、シンを探そうと思っている。

 あの時シンも一緒に光に包まれていたし、この指輪があるということは、対となる指輪も存在していると思う。

 そう考えると、シンも白結晶の指輪を持ってこの世界にいるだろう。

 元の世界にもどるならば、この指輪は必要になってくるだろう。

 私はこの世界で生きていこうと思っているけれど、シンは違うかもしれない。

 そうなったら元の世界に戻るために協力もしてあげたい。


 探すといっても私はまだ子供、その上一応王女だ、外に出ることは中々難しいだろう。

 少しならば可能だろうけれど、世界中から一人を探すには圧倒的に時間が足りない。

 自分で外に出て探すのは難しい。

 逆に私がなにか目立つことでもしてシンに見つけてもらうほうがいいかもしれない。


 うーん、まぁどっちにしろしばらくは無理だね。


 ドアをノックする音が聞こえると同時に私の名前が呼ばれる。

 私が入っていいよー、と言うとネコミミのメイドが入ってきた。


「テル様、おはようございます」





 ネコミミメイドに服を着替えさせてもらってから、みんながいる所へ案内してもらう。

 いくつも角を曲がり、歩いていると扉の前でメイドが立ち止まる。

 そして、メイドが扉を開き、部屋の中へ向かって一度頭を下げたあと、私に向かって頭を下げてきた。

 なんというか、ちゃんと精錬されてるなぁと思いながら、中に入る。


 既に椅子に座って待っている父と母、妹の姿を見つけ、挨拶をし私も自分の席へ付く。


 私が椅子に座ると同時に、父がその隣に立っている執事へ声をかける。

 すると、執事がどこから取り出したかわからないけれど、ベルを一回鳴らした。

 綺麗な音が鳴ると同時にメイドの人が料理を持ってきて、各々の前に置く。


 父が一口食べてから私達は食べ始める。

 この世界には「いただきます」や「ごちそうさま」などを言う習慣はない。


 食べ始めてから少し経ったとき、父が口を開いた。

「テル、今日からテルに二人の講師がつく」

「講師……ですか?」

 

 王族で講師と言うと、礼法とかそんな感じのかな……?

 うーん、面倒な感じがするねー。


「俺たちミステアの血を引き継ぐ者は武術か魔法かをある程度扱えないといけない。最初の一年は両方学び、翌年に自分がやりたい方を選ぶんだ」


 予想とは違うもので、少し安心した。それだけでなく、戦う手段を学べると知って少し高揚してしまう。

 TWOで何度も戦ったりしていたけれど、あれは現実じゃなくて仮想だった。

 けれど、現実で剣や魔法を扱えると知って気分が高ぶるのは仕方がないと思う。


 TWOでは刀、つまり武術の方が得意だったけれど、決して魔法が嫌いというわけじゃない。

 ふふっ、楽しみだね。





 朝食を食べ終えたあと運動ができる格好に着替え、城の中庭に来ている。

 兵士の人が訓練する訓練場もあるのだけれど、それはお城の外にあってほんの少し距離もある。

 そのため、ここなら周りが城に囲まれていることや、緊急時にはすぐに兵士が駆けつけれるここで私は訓練することになった。

 もう少し大きくなるまで私を外の人に見せたくないみたいというのもあるらしいけどね。


「まずは、自己紹介から入るか。俺はアーサー、一応Sランク冒険者だ」


 目の前にいる黒っぽい青色の髪の人が私の講師である。

 顔にはいくつも傷跡が見え、体格は細マッチョっていうんだったかな、そんな感じ。

 私じゃなかったら、この年の女の子がアーサーの顔を見たら泣き出しそうだ。

 手に木剣二つ持ってるし、余計にね。


「テル・ミステアです。今日からよろしくお願いします」


「まずは、ほれ、これを持ってみな」


 そう言われ、木剣を差し出されたので、アーサーさんから木剣を受け取る。

「剣の持ち方は、剣の種類以上に方法がある。いずれ自分が使いやすいように変えていくものなんだが、最初は一般的な持ち方から入るんだ。まず、右手を―――――」



 午前の武術の練習は剣の持ち方と構え方、剣を持った時の体勢を教えてもらい、終わる前に少しだけ素振りもした。


 剣の持ち方、構え方はTWOで経験していたからすぐに及第点がもらえたけれど、剣を持った時の体勢は少し時間がかかってしまった。

 TWOじゃ、まだ対人戦は実装されてなかったから、AIの敵と戦う時には特に気をつけようとは思わなかったからね。

 今世では人と戦うこともあるかも知れないし、今学べてよかったと思ってる。



 お昼を食べて中庭に行くと、アーサーさんとは違う人が待っていた。

 待っていた人は肩あたりで切りそろえている水色の髪のお姉さん。

 

「テル様の魔法の講師をさせていただく、シリスです。本日からよろしくお願いします」

「テルです。こちらこそよろしくお願いします」

「今日はテル様がどの属性が得意かを調べていきましょう。その前にテル様は魔法というのがどんなものかご存知ですか?」


 魔法がどんなものか、TWOでの魔法の設定ならある程度知っているんだけど、この世界でも同じとは限らないし……。

 この5年間の記憶の中で直接魔法を見たことは一度もない。

 けれど、魔法がかけられた道具なら部屋にある。


 一度も見たことない、本で見たこともないのに知っているというのはおかしいだろう。


「夜、暗くなった部屋を明るくしてくれる便利なものです」


 頑張って子供っぽさを出しながら、不自然じゃないように答える。


「それは魔法が掛けられた魔装具ですね。ほかに知っていることはありませんか?」


「ないです……」

「落ち込まなくても大丈夫ですよ。皆教えてもらわなければ知らないことですから」

 

 シリスさんは私が落ち込んでいると思ったのか慰めてくれた後、魔法について話し始めた。

 落ち込んでいたわけじゃないけれど、そういう気遣いできる人っていいよね。


 魔法というのは自分の持つ魔力を使用して起こすもので、精霊とかはいないみたいだ。

 魔法には火、水、土、風、光、闇の6属性が基本属性であり、派生系として雷や氷、炎があるとのこと。

 一般的に人族は一属性、エルフが二から三属性の適正がある。しかし、中には人族で三属性、エルフで六属性使えた人も存在するとか。

 例外として、無属性魔法というのもあって、これには生活魔法や補助魔法等いろんなものがあり、一番魔法の種類が多い属性とのこと。

 魔法は五つの階級に分けれるそうで、下級魔法、中級魔法、上級魔法、最上級魔法、禁忌級魔法とあるけれど、禁忌級を使える人は過去に一人いただけであり、今は誰も使えないそうだ。最上級魔法は少なけれども一応使える人は存在しているとのこと。

 一般的に中級が使えたら一人前、上級が使えたら熟練者という大まかな基準も存在している。

 

 魔力量は個人差ありで、生まれた時に魔力が少ない人でも、大人になったら多くなってたりすることもあるから、もし魔力量が少なくても気にしないでください、と言われた。


「では、大体一通り説明し終えたのでテル様の適正を調べていきたいと思います。調べる方法はこの属性石と呼ばれる石に魔力を込め、色が変われば適正ありとなります」


 そう言いながら、六個のビー玉程度の大きさの白い石を私に見せてくる。

 

「まずは、火属性から調べていきましょう。この石を持って魔力を込めてください」


 私はシリスさんから一つ白い石を受け取る。

 うーん、石一つ一つに調べれる属性が決まってるのかな? 

 

「あの、魔力ってどうやって込めるのですか?」


 シリスさんは意外とドジっ子なのかな?


「あ、すみません。説明するの忘れていました。魔力の込め方ですが、まず魔力を感じることはできますか?」

「いえ、できないです」

「では、一度私がテル様に魔力を流してみるので、感じ取ってください」


 シリスさんに手を握られた瞬間、暖かいものが流れ込んでくるのを感じた。


「暖かいものが流れてきました」

「それが魔力です。今度はそれを自分の体の中から探してみてください」


 これが……、魔力。

 すぐに自分の体の中から感じ取ったものと同じものを探し始める。


「ありました」


 胸の辺りから温かいものが全身へ渡っていっているのを見つけた。

 恐らくこれが魔力なんだと思う。


「では、その魔力を属性石へ込めるように念じてみてください」


 胸の辺りから出ている魔力を属性石を持つ手へ移動させ、属性石へ。


 今ので多分出来たと思うけれど……。

 握りこんだ手を開き、確認する。


「赤くなってますね。火属性の適正あり、です。一応他の属性も試してみましょう」

 

 シリスさんに赤く染まった属性石を返し、代わりに新しい属性石を受け取る。


 受け取った属性石にさっきと同じ要領で魔力を込める。

 込め終わったら手を開き、確認。

 うん、青く染まってるね。

 思ったよりも魔力を込めるって簡単だね。


「水にも適正あり、と。すごいですね。二属性持ちは珍しいんです」


 その後、土、風、光、闇も試してみたんだけれど……。


「……そ、そんな、ろ、六属性持ちなんて。私は伝説の始まりの瞬間に立ち会っているのかもしれません……」


 全属性に適正があったみたい。


 TWOでは刀で物理系だったけれど、今世では刀と魔法両立してもいいよね?







 私に講師がついて一ヶ月経った。

 武術の方は既にアーサーとの打ち合いを主に行い、悪いところなどがあればその都度注意を受けるといった感じである。

 魔法の方は水の派生系とされている氷属性を主に練習している。


 風や火は使うと危険という理由で禁止されている。

 一度風の下級魔法でお城に傷つけちゃった所為である。あの時は全く制御の仕方がわからず取り敢えず全力全開でやっていたからね。


 光と闇は使える人自体珍しく、私は教えれない。とシリスさんから言われた。


 そして、残った属性から私は氷を選んだ。

 TWOでシンが使っていた氷魔法がとても綺麗だったしね。


 氷属性などの派生系属性も珍しいものではあるのだが、光と闇属性に比べたら比較的人数が多いそうで、ある程度資料なども存在するため、教えてもらうことができた。


「今日から、氷の中級魔法に入ります。制御の方は既にテル様なら上級魔法もいける程ですので、大丈夫です。魔法名は『氷の剣アイスソード』、詠唱は氷よ我が手に形を成し、触れしものを凍てつくせ。です」


 そうそう、この世界の魔法の詠唱というのはイメージするために必要なものであり、一般的な詠唱よりもイメージしやすいものがあればアレンジしてもいいみたい。

 イメージするために必要ということは、詠唱無しでイメージできれば、詠唱はいらないということなんだよね。

 一度試してみたら無詠唱で簡単にできたから、ほかの魔法も試してみたら過給魔法は一応習ったもの全て無詠唱で使えるみたい。


 よし、中級魔法いってみよー。


「氷よ我が手に形を成し、触れしものを凍てつくせ『氷の剣アイスソード』」

 

 右手には氷でできた刀が収まっていた。

 うん? 剣じゃなくて刀だね。

 確かにイメージの時思わず刀の方イメージしちゃったけれど、ここまでイメージ通りになるんだ。

 ということは魔法作り放題かな?


「さすがです。形が初めて見るものですが、ちゃんと武器のようですし合格です」

 

この世界には刀は無いそうで、仕方がなく剣を習っていたんだけれど、ある程度うまく扱えるんだけれど、どこか違和感があって完璧には扱えなかった。


「しかし、中級も一発成功ですか……。おめでとうございます。今日から貴女は一人前の魔導師です」

「ありがとうございます」


 まぁ細かいことはいいや。これで刀を使ってアーサーと戦える。

 でもこれさえあれば、剣を使わなくても済みそう。


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