Selfish
今日も遮光カーテンでさえ、光をあふれさせている時間になってしまった。
いい加減このおかしな生活リズムを正したいと思うので、頑張って夜まで起きていようと考えながら洗面所に向かう。
いつも通り鏡の中には目の下に黒い絵の具をびっしり塗ったような男がこっちを見ていて、思わず
「お前は誰なんだい?」
と現実から遠ざかりたくなってくる。
今までは誰かに敷かれたレールの上を…というありきたりな生活だった。
過保護な親や家族に守られて、進学校から大学に入ったわけだが、どうも間違いだった。
いまさら入学しといてなんだが、大学なんて入りたくないって言うのが本音でそれ以外の何物でもないと高校の時から思っていた。
何かあるごとに両親に説得され嫌々ながらも従ってきた。
その父親も最近急死して、はっきり言うと大学なんてものはちゃんちゃらおかしい過去の産物みたいなものになってしまった。
世の中には大学に嫌々行って勉強するよりも、もっともっと大事なものがたくさんあるんだ…と思いたいし、そうであって欲しいとベッドの中で考えるのだが、テレビのニュースや家族、親戚、就職した友人の話を聞いているとそんな薄っぺらい理想も道端の石みたいにどこか遠くへ蹴っ飛ばされてしまう。
そんなちっぽけな男だが数年前までは遊びや、女の人もそれなりに経験していたが今は見る影も無く…昼や夕方に目覚めて日が昇ってから床につく生活をおくっている。
大学にもいかず、日々をただ浪費して将来をつぶしている。
二十歳を迎えるにあたってこの頃思うのは、普通ってすごいんだなってこと…
普通に通学して、普通に卒業して、普通に就職して…
考えてみると、普通って言葉を今までは馬鹿にしてた自分が本当に愚かだったと反省する。
世の中には自分と同じ境遇で同じ考えの人間がたくさんいて、傷を舐め合い分かち合えると思っていたが、お生憎様…そんな人は少なくとも私の周りにはおらず、またどこか遠くに蹴り飛ばされた思いがしてくる。
まぁよくもこんな考えで生きていけるなと自分でも思ったことがあるし、何で自分は生きているんだろうと思ったこともある…多分後の問いは誰にもあるものだと思いたい。
が…化学や物理を専攻したものとしては、そんなもの考えても答えなんかでないし無駄だと思う。
「タイムマシンがあればなぁ、やり直せるのに。」
とか言うのも無駄。
人は100%死ぬので、まぁ死ぬために生まれるんじゃないの?ってことしか思い浮かびはしないし、その人が思ったことが正解なんだと思う。
しかしながら、10代の私にとって「父親の急死」というのはちょっとした短い人生の中で衝撃だった。
まさか、前日電話で話して元気だった人が翌日にはただの肉の塊になっているとは、なんとも言えない気持ちになるし、悔やまれる。
ギャンブルで借金をすることもなく、暴力をふるうこともなく悪いことはしていないのに死んでしまうなんて神も仏もないなって言うのが正直な感想で、ああしてやれば、こうしてやればとかいうタラレバも今となっては、ただただ悲しいだけだ。
友人たちは気をつかっていつも通りに接してくれたり、遊びに連れ出してくれたが…強がりではなく実際そこまで落ち込んではいなかった。
逆に父親が死んだという人生の転機を迎えたのに、物事に真剣になれずにいる自分に衝撃をうけた。
よく考えてみると、自分はやばい人間なんじゃないか、なんで真剣になれないんだ…という思いがふつふつとわいてきて、やりきれない気持ちになる。
ほかの人はどうなんだろうと思うが、そんなこと聞くのは無粋きわまりないことでためらわれる。
続く・・・
つまらないものを読んで頂いてありがとうございます。笑