18.職場が戦場になったんやが……
――ピピピピッピピピピッ♪
「……はいはい……止めるで……」
ワイは手探りでスマホを掴んで、アラームを止めた。
時刻は朝の六時。七月十日……月曜日。
天井を見上げたまま、ぼんやり考える。
「おはよーございまッス……」
横を見ると、カコがいつも通り布団でだらけとる。
……手にはポテチ。
「それ、完全に朝飯やろ」
「楽なんスよ〜」
「人としてどうなんやそれ……」
「人じゃないッスから」
はいはい、と流す。
このやり取り、もはや安心材料やな。
いつも通り、ニュースをつける。
『――各地で発生している小規模な設備障害についてのニュースです』
「……ん?」
『原因は不明ですが、金属の性質が変化しており――』
ワイは眉をひそめる。
「……なんか増えとらんか? こういうの」
「そうッスか?」
「いや、気のせいかもしれんけどな……」
でも、なんとなく嫌な感じがする。
理屈やない、“勘”や。
そういえば、ふと、疑問が浮かんだ。
「……なんでワイ、こんな律儀にニュース見るようになったんやっけ……」
誰かに、毎日見るように言われて……。
「……誰やったっけな……」
思い出そうとした瞬間、妙に引っかかる。
顔も名前も出てこない。
「……まぁええか」
深く考えるのをやめた。
「……行くか」
◇
会社に着くと、空気が妙に張り詰めとった。
「……なんやこれ」
その時――
ガシャンッ!!
奥の調理室の方から、明らかにおかしい音が響いた。
「……っ!」
ちょうど事務所に入ってきたミクちゃんと目が合う。
「行きましょう」
「ああ」
二人は走る。
そして、ドアを開けた瞬間――
「……は?」
そこにおったのは、宇宙人やった。
前に見た時と同じく、全身が鈍い光を放つ“金属”の皮膚で覆われとる。
その異様さは、立ってるだけで圧を感じる。
「……なんや、こいつ……」
「“ナニカ”の差し金でしょうか……」
ミクちゃんの声が鋭くなる。
「でも、“ナニカ”そのものではありません……!
関連はあるはずですが……」
その宇宙人が、ゆっくりこっちを向く。
目にあたる部分が、赤く光った。
「課長、手を握ってください。
翻訳します」
ワイはミクちゃんの手を取る。
そして、奴が言葉を発する。
「対象ヲ特定」
低く、機械みたいな声。
「非合理因子……排除」
「……ワイのことか」
乾いた笑いが出る。
「課長、下がってください!」
「いや……!」
もう距離がない。
こうなったら、やるしかない。
「ミクちゃん! 刀に変身や!」
「……やるんですね。了解です!」
瞬間、ミクちゃんの身体が光に包まれる。
――その場に、スーツや下着が落ちる。
次の瞬間、ワイの手には刀があった。
「相変わらず慣れへんな、これ」
『文句言ってる場合じゃないです!』
刀からミクちゃんの声が伝わる。
その瞬間、奴がなぐりかかってくる。
「……っ! 速いで、コイツ!」
奴の拳を、反射的に刀で受ける。
ギィンッ!!
「……硬っ!!」
衝撃で腕が痺れる。
拳と刀で衝突しとるのに、斬れへん。
表面に傷一つついてへん。
『課長。残念ですが、私と課長の仲でも斬れないみたいですね……』
「前の宇宙人より、硬いってことか……」
『それか、私と課長の仲が悪くなったか、ですね』
「こんな時に、ブラックジョークやめや」
そうこうする間に、次の一撃が来る。
ワイは紙一重で避けたが、その床は凹んどる。
「アホか! 威力おかしいやろ!!」
その時、調理室の扉が、ガチャっと開いた。
「おじさん!」
二度寝して遅れてきたカコの声や。
「状況はよく分かんないッスけど、ウチに任せるッス!」
その瞬間、カコの身体が赤黒い粒子に溶ける。
「うおっ!?」
そして、口の中に流れ込んできた。
「毎回これ慣れへんって!」
次の瞬間、身体の奥から何かが溢れる。
この熱さ。間違いない。
力が、異常に膨れ上がる。
「……スーパー地球人や」
拳を握る。
空気が震える。
『おじさん! ぶっ放すッスよ!』
身体の中から、ミクの声が響く。
「かめ……はめ――」
『それ以上は、怒られるッス』
『課長。テンションが上がったからって、言っていい事と悪い事があります……』
「う、うるさいな……」
奴が再び突っ込んでくる。
「上等や……!」
ワイは踏み込んだ。
正面から、刀を振り抜く。
「うおらぁ!!」
ガキィィン!
やはり、かち合う。
しかし、今度はカコも一緒や。
ワイは刀から片手を離し、奴の身体に掌を向けた。
「喰らえっ! 悪魔の力や!」
シュゴォォ!!
ワイの掌から放たれた魔気が、奴の身体を包み込む。
そして、その赤黒い粒子が爆ぜた瞬間――
ジュウゥゥ……ッ!!
「……ナ、ナニヲスルッ!?」
奴の身体が、“溶けた”。
その金属の皮膚は、ただれたように軟化した。
『今です課長! もう一度振り抜いてくださいっ!』
「任せろやで!」
ミクちゃんの声と同時に、刀を振る。
ブシュ!
さっきとは違い、手応えがある。
「ぬおらぁっ!!」
腕が、斬れた。
「……いけるやんけ!!」
奴が後退する。
初めて、“警戒”した動きや。
「危険度、再評価」
「今さら遅いわ!
ワイらに手ぇ出した事、後悔させたるで!」
再び突っ込む。
そして、魔気で腐食させ、斬る。
この流れや。
「いくで! カコ! ミクちゃん!」
『はい!』 『了解ッス!』
踏み込み、打ち込む。
奴も応戦する。
ぶつかる衝撃で、床が割れる。
「こいつで――」
魔気を叩き込む。
装甲が崩れる。
「終わりや!!」
全力で振り抜く。
ズバァッ!!
胴体が、真っ二つに裂けた。
奴は、そのまま崩れ落ちる。
ドッシャァァン!
重たい金属音を立てて、奴の身体は崩壊した。
辺りには白い体液が散らばっている。
「はぁ……はぁ……」
息を吐く。
「……終わったんか?」
その時――
ピリッ。
頭の奥に、昨日と同じノイズが響く。
いや、今日はハッキリとした“意味”が伝わる。
『錆田斬鉄、地球の天使、及び、悪魔。
お前たちの排除優先度は、もはや最高レベルだ。
我から逃げられると思うなよ……』
「……っ!」
思わず顔をしかめる。
『課長……また、“ナニカ”です……』
「ああ……今回はワイも聞こえたで……」
『もしかして、今私と繋がっているから……』
「そうみたいやな……」
“ナニカ”は確実に、こっちを見とる。
次は、容赦なく来るみたいや。
『……じゃあ、そろそろ人の姿に戻りますね』
光と共にミクちゃんが人の姿に戻る。
いつも通り、一糸纏わぬ姿で。
「ちょっ!? 課長見ないでください!!」
「見てへん見てへん!!」
即座に後ろ向く。
「早よ着ぃや! ……うっ……」
そして、吐き気を催した。
『ウチも戻るッスよー』
体内からカコの声。
「うっぷ……」
数秒後。
「……戻ったッス」
「カコを吐く時が、一番しんどいで……」
「ちょっと! 吐くとか言わないでッス!
あと、こっち見ないでッスよ……?」
「姪の裸なんか見るかアホ!」
背後で、二人はスーツに着替えているようだった。
しばらくの静寂。
「もういいッスよ〜」
そして、振り返る。
二人とも、何事もなかった顔しとる。
「……慣れって怖いな」
ぽつりと呟く。
そして、床に転がる“残骸”を見る。
「……これが、“ナニカ”の差し金なのか……」
「証拠はありませんが、おそらく……」
ミクちゃんは静かに言う。
「でも、“非合理に触れた存在”を、排除しに来たのは、間違いありません」
「……つまり」
ワイは頭をかく。
「ワイら、完全に敵認定されたってことやな」
「はい」
即答やった。
それから、ワイは笑う。
「……おもろなってきたやんけ」
「おじさん、おかしくなったッスか……?」
「ワイは元からおかしいで?
でも、どうせ逃げられへんのなら――」
肩を回して、ニヤッと笑う。
「ほな、やること一つや。
ワイらのデザートにケチつけるやつは、ぶっ壊したるわ!」
その言葉を、“ナニカ”は確かに観測していた。
今度は、“排除対象”として。
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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!




